第120話 文ちゃんの学校の文化祭の劇を九重さんと見に行ったけど思っていたよりレベルが高かったよ

 さて、来週の日曜日は剛力君と一緒に、広瀬君の誕生日プレゼントを買いに行くことにしたが、そうなると明日は一日空くな。


 文ちゃんの学校の文化祭は明日もやっているし、今日は一年生の体験部門と二年生の食品部門に、一部の部活動しか見てないから、明日は三年生の公演部門、つまり劇を観ておくか。


 と言っても文ちゃんは自分のクラスの企画、つまりカジノの企画提案者であるためか、責任者として大分忙しいみたいだし、かといって劇を一人で見て楽しいか? というのもあるし、誰か誘ってみようか。


 俺の知り合いで劇を見るのが好きそうな人というと……九重ここのえさんかな。


 実際、演劇部所属らしいし、アメリカではスクールミュージカルもやっていたらしいし。


 というわけで、俺は九重ここのえさんを文ちゃんの学校の文化祭に誘ってみることにした。


 まあ、今日の明日で九重ここのえさんのスケジュールが空いてるかどうかなんだけどな。


 俺はさっそくSNSで九重ここのえさんにメッセージを送ることにする。


『こんばんは九重ここのえさん』


『はい、こんばんは』


『ちょっと唐突なんだど、九重ここのえさんが明日暇だったら、俺のお隣さんの文化祭でやってる劇を見に行かない?』


『はい、私の方は明日なら大丈夫ですよ』


『あ、それならよかった。

 まあ、高校の文化祭の劇で30分から45分くらいのものだから、そこまでレベルが高くないかもだけど、進学校の劇って意外とレベルが高い場合もあるし面白いかもしれないんだよね』


『それはとっても楽しみですね』


『うん、じゃあ明日の朝8時半にJR総武各駅停車の東船橋駅南口で待ち合わせで大丈夫かな?』


『はい、大丈夫ですよ』


『じゃあ、明日はよろしくね』


『はい、よろしくですよー』


 というわけで明日は九重ここのえさんと一緒に文ちゃんの学校の文化祭で観劇だ。


 そして翌日、天気はどんより曇っているが大雨というのはまだ幸いだな。


 まあ、夕方には一雨来るかもしれないが。


 俺は駅まで歩くことにして、カバンには念のため折り畳み傘を入れておくことにする。


 東船橋駅南口前に待ち合わせの時間に到着すると、おめかしした九重ここのえさんがすでに待っていた。


 俺は軽く手を挙げて九重ここのえさんへ声をかけた。


「ごめん、待たせたかな?」


 九重ここのえさんはにこりと笑いながら、小さく手を挙げて答えた。


「私もさきほど到着したばかりデスヨ。

 では、案内してくれますカ」


「了解。

 結構おめかししてきてるから少しびっくりしたけどな」


 俺がそういうと九重ここのえさんはうふふと笑っていった。


「せっかくのデートのお誘いですカラネ。

 それに観劇をするとなればそれなりに身なりを整えるのが普通なのデハ?」


「あー、高校の文化祭だから制服とかの方が本当はいいのかもな。

 日本だと学校の制服は礼服扱いなんで」


 俺がそういうと九重ここのえさんは感心したように言った。


「ナルホド。

 だからお休みの日でも制服の姿でいる女の子が多いのデスネ」


 俺は苦笑しつつ答える。


「たぶんそれは違うと思うけどな。

 学校がない日でも、制服でいる理由は、ただ単に私服を選ぶのが面倒だし、下手な私服より制服の方がかわいい場合も多いからだと思う」


「そうなのですか?

 どうもよくわかりマセンネ」


「まあ、俺もよくわからないけどな」


 俺は男子だしな。


 そんな感じで雑談をしながら徒歩で県立船橋高校へ向かい、 校門前の受付にて受付を済ませる。


 俺は昨日もらった、パンフレットと1年・2年・3年と部活動などのその他の出し物のどれが一番良かったかを書き込む人気投票用紙を見せてすでに持ってる旨を伝え、九重ここのえさんはそれらを受け取り、まずは文ちゃんのクラスである1年1組へと向かう。


「まずは俺のお隣さんがやってるカジノに行ってみようぜ。

 それなりに本格的で面白いはずだし」


 俺がそういうと九重ここのえさんは笑顔で言った。


「わお、それは楽しみデスネ」


 1年1組はやはり教室の入り口からカジノらしさを醸し出しているのでわかりやすい。


 どちらかというとほかのクラスは遊園地のアトラクションっぽいからな。


「いらっしゃいませお客様。

 チップを選んでください」


 俺は昨日と同じ。


「んじゃ、ペンシルカルパスで」


 九重ここのえさんはちょっと考えてから……。


「私はこれにシマース」


 とブラックライトニングを10個てにとった。


「では、エスコートお願いしますネー」


 と空いている手を出してくる九重ここのえさん。


「はいはい、お嬢様。

 お手をどうぞ」


 と俺はその手を取って教室の奥に進んだ。


 文ちゃんは今日もルーレットのディーラーをしているようだな。


「あれ、あっちゃん。

 その女の人だれ?」


 と剣呑な目で俺と手をつないでいる九重ここのえさんを見て文ちゃんは言った。


「ん?

 この子は九重ここのえさん。

 5月末くらいにアメリカから転校してきた帰国子女の女の子だよ。

 だから普通の日本の女の子とちょっとアクションが違うみたい」


 九重ここのえさんは文ちゃんに、にこりと笑いかけて言った。


九重ここのえ・アリアンナ・シャーロットデス。

 お見知りおきださいネ」


九重ここのえさんはうちに高校で演劇部に所属してたり、アメリカでもスクールミュージカルをやってたみたいなんで、ここの文化祭の劇を見るのにさそってみたんだ」


 しかし文ちゃんは不機嫌そうだ。


「ふうん、そうなんだ。

 僕はこんなに忙しいのに、あっちゃんは他の女の子とデートで劇を見に来たんだ」


 そして何か小さくつぶやいた。


「その子、僕と違ってすっごくスタイルいいし……」


 そして文ちゃんは九重ここのえさんに向かって言う。


「せっかくだから、ルーレットをやっていきなよ」


 それに対して九重ここのえさんはにこにこして言う。


「はい、そうさせてもらいますネ」


「プレイスユアベット」


 文ちゃんがコールすると、九重ここのえさんはマットのノワールにチップ代わりのブラックライトニングを置いた。


「スピニングアップ、ノーモアベット」


 文ちゃんがボールを投げ入れ、結果が出る。


「残念、ルージュだね」


 文ちゃんがそういうと九重ここのえさんが目を細めて言った。


「アナタ、”見えて”いますネ?

 回転盤ウイールを見ながら投げるのはアメリカのカジノだとやってはいけないことですヨ?」


 九重ここのえさんの言葉に対して文ちゃんも目を細めて言った。


「へぇ、君も見えてるみたいだね。

 了解、今度からは見ないで投げるよ」


 なんか二人の間でバチバチと火花が散ってるような気がするが、結果としては九重ここのえさんが負けた。


「クー、負けましター」


「まあ、基本ギャンブルはディラーが有利にできてるしな。

 それに九重さんちょっと熱くなり過ぎだったんじゃない?」


「そうかもシレマセーン」


「まあ、今日の主目的は劇を見ることだし、そうしょげないで」


「アイ、そうしましょう」


「というわけで、俺たちは三年生の教室で行われる劇を見に行ってくるよ」


 俺がそういうと文ちゃんは溜息をついて言った。


「はいはい、僕も休憩時間になったら連絡するよ」


「了解」


 というわけでちょっとしょげてる九重ここのえさんとともに三年生の教室に向かった。


 教室の外の壁にも演目に合わせた装飾を施されているがかなり凝っている。


 ちょうどこれから劇の定番である”ロミオとジュリエット”が公演されるらしい。


 俺たちは空いているパイプ椅子に腰を下ろした。


「ナイスタイミングだったな」


「ええ、そうですネ」


 そして劇が始まったが……大道具などのセットも凝ってるし、演技もうまいぞ?


「え、かなりうまくない?」


 俺が九重ここのえさんに聞くと彼女はうなずいた。


「はい、かなり稽古を積んでいますネ」


 うーん、学校の文化祭の劇だからと言って馬鹿にはできないもんだな。


 そう言えばここの文化祭は人気投票とかもあるし、内申点とかにもかかわってくるのかもしれないが、そもそも偏差値が高い生徒が集まってるから、素早く真面目に演技を覚えていけるのかもしれない。


 そういえば都立国立高校の進学校も「日本一の文化祭」といわれて三年生の演劇のレベルが高いとかいう話は聞いたことがあるが、記憶力とかだけではなくスケジュール管理とかの能力も問われるのかもな。


 そのほかのクラスは”不思議の国のアリス”や”ピーターパン””美女と野獣”などが公演されているが、やはりレベルは高いように思う。


 九重ここのえさんも瞳を輝かせながら見ているしな。


 いくつかの劇を見ているとやがてお昼になって文ちゃんからメッセージが届いた。


『交代の時間になったし、僕おなかすいちゃったし、何か食べに行こうよ』


『ん、了解』


『今日は何を食べようか?』


『今日は中華の点心で甘いものが食べたい気分だな』


『了解、んじゃ中華の点心のクラス前で待ち合わせでいいかな?』


『うん』


 というわけで俺は九重ここのえさんに声をかけた。


「文ちゃんが休憩がてら、中華点心を食べたいっていうんで、一緒に食おうぜ」


「はい、わかりました」


 俺たちが中華の点心を売っている二年生クラスに移動すると文ちゃんもやってきた。


「ナイスタイミングだな」


「そうだね。

 僕おなかペコペコ」


 俺と文ちゃんのやり取りを見ていた九重ここのえさんが聞いてきた。


「ところで中華点心とはどういうものでしょうカ?」


 それに対して俺は答える。


「点心は大雑把に言えば、一口で食べられる中国の軽食だね。

 点心の専門店とかも最近はあるけど代表的なものはというと……。

 小麦粉を発酵させ蒸した中国風蒸しパンで中に具や餡が入っていない皮だけの饅頭マントウ

 中に具や餡が入った包子パオズ

 秋以降のコンビニで売ってる中華まんはこれだな。

 包子の中に熱いスープが入った、小籠包シャオロンパオ

 小麦粉をこねた平たい皮を様々な調理法で食べるビン

 日本でも普通に食べられてる餃子ジャオズ焼売シウマイなんかが一般的な点心」


 と説明したものの九重ここのえさんには理解は難しそうだ。


「んー、よくわかりまセン」


「まあ、実際に食べてみればわかるよ」


「そうシマース」


 というわけで俺たちは教室に入っていく。


「いらっしゃいませ。

 何名様ですか?」


 案内係らしい女の子にそう聞かれたので俺は答えた。


「あ、三人です」


「三名様ですね。

 ご案内します」


 というわけで俺たちは席に案内された。


 勉強机にマットが敷いてあるだけでやっぱりそれらしくなるから面白いよな。


 メニューを見てみるとなかなか種類は多いし、価格も安めだ。


「んー、俺は油炸鬼ヨウティヤオ叉焼包チャーシューパオかな。

 飲み物はウーロン茶で」


 俺がそういうと九重ここのえさんが聞いてきた。


「それはどのようなものですカ?」


油炸鬼ヨウティヤオは中国式の細長い揚げパン。

 甘くないけどドーナッツに近いかな?

 叉焼包チャーシューパオはその名前の通りチャーシューが中に入ってる中華饅頭だね」


「なるほど、では私もそれにしますネー」


 一方の文ちゃんは甘いものを食べることにしたらしい。


「僕は桃包タオバオに、芝麻球チーマーチュウ、あと凍蛋トンタン、飲み物はプーアル茶で」


 桃包タオバオは桃の形と色をした中華餡饅頭。


 芝麻球チーマーチュウは白玉粉で胡麻餡を包み、まわりに胡麻をまぶして揚げたいわゆる胡麻団子。


 凍蛋トンタンは中華風寒天プリンとでもいうべきものかな?


 オーダーをしてしばらくすると注文したものが皿に乗って運ばれてくる。


「じゃあ、食べようぜ。

 いただきます」


「いただきます」


「はい、イタダキマショウ」


 俺はまず油炸鬼ヨウティヤオを口にする。


「ん、塩っけもちょうどいい感じでうまいな」


 俺に続いて九重ここのえさんも油炸鬼ヨウティヤオを口にする。


「ナルホド、不思議な食感ですが悪くないデスネ」


 文ちゃんは桃包タオバオをほおばってご満悦だ。


「ん、甘くておいしい」


 叉焼包チャーシューパオも柔らかくじっくりと炙った豚肉のテンダーロインが入っていてマジうまい。


 そんな感じで腹を満たした俺たちは一年生のアトラクションのお化け屋敷に飛び込んでみたりしたあと、文ちゃんは自分のクラスに戻っていき 、俺と九重ここのえさんは脱出ゲームに挑戦してみたりして文化祭を楽しんだ。


 今日もなかなかに楽しい一日だったよ


 クリア


 ふみちゃんの学校の文化祭


 予定


 来週日曜日:剛力君と買い物


 6月25日:広瀬君の誕生日


 7月10日:東雲しののめさん誕生日


 7月21日:新發田しばたさんと小規模同人イベントに参加


 7月29日:西梅枝さいかちさんとホタル観賞


 8月1・2・3日:文ちゃんと海


 8月5・6・7・8日:九重ここのえさんと山でキャンプ


 8月10日:文ちゃんの誕生日


 8月のお盆:白檮山かしやまさんとコミケ1日目2日目に参加


 8月20日:中垣内なかがいととプールデート


 8月23日:南木なみきさんと水族館デート


 8月26・27日:弥生ちゃんとTDR


 7月末と8月末:東雲しののめさんと宿題 予定

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