第121話 文ちゃんの機嫌が直ってよかったよ

 さて、文化祭が終わった後、俺と九重ここのえさんは東船橋まで一緒に歩いて帰り、そこで別れてそれぞれ家路についた。


「それじゃ、また月曜に学校で」


 俺がそういうと九重ここのえさんはにこにこしながら言った。


「はい、今日はとても楽しかったデスヨ。

 また誘ってくださいネ」


 昨日一昨日と二日間開催された、文ちゃんの高校の文化祭に俺は二日とも行ってみたが、頭のいい奴が文化祭で本気を出すと、かなりレベルの高い催し物になるんだなというのが俺の正直な感想だった。


 そして二日目は主に劇を見るつもりだったのと、一日目の様子を見る限り、文ちゃんは自分のクラスのカジノの運営でかなり忙しい様子だったので、劇が好きそうな九重ここのえさんと一緒に行った。


 だが、それがあってちょっと文ちゃんを不機嫌にさせちまったな。


 6月も終わりに近づいてきているので、もうそろそろ期末試験のテスト勉強を始めたい。


 前回文ちゃんに勉強を教わったことで、めっちゃいい点が取れたこともあって、今回もそうしたかったんだが、今のままだと難しいかな……。


 勉強を教えてもらうために、文ちゃんには何とか機嫌を直してもらわないとな。


 今日の昼に点心を食べたときは甘いものばかり頼んでたしそういう気分なのかな?


 そうしたら家にあるもので、何か甘くておいしいものを作ってみようか。


 こういう時にお母さんがハンドメイドのパンやケーキやらを作る趣味があると、材料が家にあるんで助かるよな。


 白黒市松模様のアイスボックスクッキーでも作ってみるか。


 材料は無塩バター・グラニュー糖・卵・薄力粉・バニラエッセンスにココアパウダーだ。


 まずボウルに無塩バターとグラニュー糖を入れて、泡立て器で白っぽくなるまでよく混ぜ、さらに溶き卵を入れて、さらによく混ぜ合わせ、半量ずつに分ける。


 半分に分けた生地にバニラエッセンスを入れてよく混ぜ合わせ、薄力粉を入れ、ゴムベラで粉っぽさがなくなるまでさらに混ぜ合わせ、同様に残りの半分に薄力粉とココアパウダーをふるい入れ、ゴムベラで粉っぽさがなくなるまで混ぜ合わせれば生地は完成。


 生地ができたらそれぞれラップに包み、3cm角の棒状に成型し、冷蔵庫で1時間程冷やし固め、固まったらそれぞれの生地を縦に4等分に切り、バニラ生地とココア生地を交互に並べ、棒状に成型し、冷蔵庫でさらに30分休ませる。


 オーブンを170℃に予熱し、8mm幅に切り分け、クッキングシートを敷いた天板に生地を並べま、15分焼き、ほんのり焼き色が付いたら完成。


 一つ食べてみたが、うん、上手においしく焼けてよかった。


 俺はさっそく文ちゃんへメッセージを送ってみる。


『文ちゃん、二日間の文化祭お疲れ様。

 クッキーを焼いてみたんで、うちに来ない?』


 しばらくしてメッセージが返ってきた。


『ん、ありがとね。

 着替えていくからちょっと待ってて』


『了解』


 しばらくして、可愛らしいグレーのひざ下丈ワンピースに着替えてきた文ちゃんがやってきた。


「わざわざクッキーを焼いてくれてありがとうね」


「いやいや、文ちゃんはだいぶ疲れていたみたいだしね。

 まあ、上がってゆっくりしてよ」


「うん、お邪魔します」


 俺はリビングに文ちゃんを案内した。


 そして俺は文ちゃんに聞く。


「飲み物はアイスのミルクココアでいいかな?」


「うん、いいよ。

 クッキーとココアって結構合うよね」


 ココアパウダーに砂糖を加え、冷たいミルクを大さじ1杯加えて練り合わせ、鍋をこげない程度に中火にかけ、牛乳を少しずつ足しながら練ったココアパウダーを伸ばして溶く。


 で、沸騰する直前に火からおろし。氷の入ったグラスに注いで冷やせば美味しいアイスミルクココアが出来上がる。


「はい、どうぞ」


「ん、ありがと」


 そしてココアに口をつけて文ちゃんは言う。


「甘くておいしい。

 それにちゃんとひと手間かけてくれたのが分かるね」


 文ちゃんの言葉のうなずきつつ俺は言う。


「まあ、そのひと手間で結構おいしさが変わったりするからな。

 それにパティスリーのドリンクだったら、おいしいのがあたりまえでないとダメだしね」


 俺がそういうと文ちゃんは表情を曇らせた。


「おいしいのが当たり前……かぁ。

 確かにお金をもらって出す飲み物がおいしいのは当たり前じゃないとダメだよね。

 だとすると僕、文化祭のカジノで失敗しちゃったかな」


「ん?

 俺が見てる限りではそんなに気になるようなことはなかったと思うけど」


 俺がそういうと文ちゃんは溜息をつきながら言った。


「でもさ、いかさまだって怒っちゃった人もいたし」


「ああ、うん、確かにいたな。

 ごめん俺がカジノがいいんじゃなんて言わなきゃよかったかも」


 俺の言葉に文ちゃんは首を横に振った。


「ううん、どうしても文化祭の出し物って遊園地にあるアトラクションに偏りがちだから、うちはそういう系統の出し物じゃなかったのは評判はいいんだよね」


「そうかぁ、なかなか難しいよな」


「うん、相手がいることって難しいよね」


 そして文ちゃんは俺の目をまっすぐ見ながら言った。


「そういえば今日はなんであの子を文化祭に誘ってきたの?」


「ん、九重さんのこと?

 今日は観劇を中心にするつもりだったから、劇を見るのが好きそうな知り合いで選んだのもあるし、やっぱり5月末にアメリカから来た帰国子女ってことでまだあんまり日本になじめてない感じもしたからね」


 俺がそういうと文ちゃんはうなずいて言った。


「なるほど、あっちゃんのそういう所はいいところだとは思うんだけど……僕も転校生だし、もっと僕にも優しくしてほしいかな」


「あ、うん、ごめん。

 そうしたら来週の土曜日に八千代にある京成バラ園に行かない?

 6月は、まだ春バラでも遅咲きのバラが咲いているはずだし。四季バラならちょうど見ごろだと思う。

 それにアジサイや花菖蒲なんかはちょうども見ごろだと思うしね。

 バラを見ながらのティターイムか結構いいと思うよ」


「うん、ちゃんと僕をエスコートしてくれる?」


「もちろん、ちゃんとエスコートするよ」


 俺がそういうと文ちゃんは満面の笑みで言った。


「んふふ、超期待してるから。

 そういえばそっちもそろそろ期末試験だよね?」


 文ちゃんの言葉に俺はコクコクうなずく。


「ああ。そろそろ三週間前になるし、試験勉強を始めようと思ってるんだけど、また教えてもらえないかな?」


 俺がそういうとクフフと笑って文ちゃんは言った。


「もちろんOKだよ」


「本当助かるよ」


 来週は土曜は文ちゃんとデートで、日曜は剛力君と買い物だな。


 予定


 来週土曜日:文ちゃんとバラ園でデート


 来週日曜日:剛力君と買い物


 6月25日:広瀬君の誕生日


 7月10日:東雲しののめさん誕生日


 7月21日:新發田しばたさんと小規模同人イベントに参加


 7月29日:西梅枝さいかちさんとホタル観賞


 8月1・2・3日:文ちゃんと海


 8月5・6・7・8日:九重ここのえさんと山でキャンプ


 8月10日:文ちゃんの誕生日


 8月のお盆:白檮山かしやまさんとコミケ1日目2日目に参加


 8月20日:中垣内なかがいととプールデート


 8月23日:南木なみきさんと水族館デート


 8月26・27日:弥生ちゃんとTDR


 7月末と8月末:東雲しののめさんと宿題

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