第118話 文ちゃんの学校の文化祭はなかなか楽しかったよ

 さて、新發田しばたさんが、銃剣乱舞の二次創作というオタ沼に踏み込んでいくのはある程予想はしてはいたが、それにしても思っていたよりだいぶ早かった。


 そして、新發田しばたさんが小説を書きあげたら、一番先に俺が読むことになってしまったが、おそらくは属性的に夢女子であろう彼女の小説が、俺の好みに合うかは読んでみないとわからないんだよな。


 まあ、俺は少女漫画とかも割と普通に読んだりするので大丈夫な気もするが、俺の好みと新發田しばたさんの好みがまったく合わなくて、評価しづらい感じにならないことを祈ろう。


 そして明日の土曜日は文ちゃんの学校で文化祭が開催されるな。


 そのために明日は開店準備だけで上がりたい旨を王生いくるみさんに伝えておこう。


「すみません。

 明日はお隣さんの高校の文化祭の見学に行くんで、白檮山かしやまさんが来たら上がりでお願いします」


 俺がそういうと王生いくるみさんはにっこり微笑んでうなずいた。


「わかりました。

 今はさほど忙しくない季節ですし、開店準備をやってもらえるだけでも助かりますからね。

 しかし、明日に文化祭というと、県立船橋高校ですか?」


「ええ、そうなんです」


 県立船橋高校の文化祭、このあたりだと結構有名なんだな。


「お隣さんはすごく頭のいい方なんですね」


「そうなんですよ。

 実際びっくりしました」


 まあ、明日の早上がりは問題なさそうでよかった。


 そういえば文ちゃんのクラスが何組なのか確認しておいた方がいいかな?


『ふみちゃんこんばんは、明日から文化祭だね』


『うん、準備は万端だし、楽しみにしててね』


『了解、ところで文ちゃんのクラスって何組だっけ?』


『僕は一年一組だよ』


『ん、了解

 明日の朝はバイト先の開店準備だけ手伝って、早めに行くね。

 ちなみにパンフレットってあるのかな?』


『はーい、僕のクラスで待ってるよ。

 パンフレットは当日に受付の校門前で配布されてるよ』


『了解!』


 というわけで文ちゃんのクラスも確認できたし、たぶん大丈夫だろう。


 学校のHPで確認してみたら土曜日は9時30分開場 16時終了の15時30分入場受付終了らしいからまあ、焦ることもないな。


 そして翌日はいつも通りパティスリーへ出勤し、開店の準備をして10時前に白檮山かしやまさんが出勤してきたらバトンタッチだ。


 そして、店内外の清掃やフルーツのカットなどの仕込みを大体終わらせたところで、明るい笑顔とともに白檮山かしやまさんが出勤してきた


「おっはよー、じゃあいってらっしゃい」


 白檮山かしやまさんは物分かりが良すぎて時々怖い。


「はい、白檮山かしやまさん、後はよろしくお願いしますね」


「ん、まかせておいてよ」


 というわけで俺は県立船橋高校へ向かう。


 JR総武線各駅停車の東船橋駅で降りて、南口から出て大体まっすぐ南に10分ほど歩いて行った所に学校はある。


 校門前の受付にて受付を済ませて、パンフレットと1年・2年・3年と部活動などのその他の出し物のどれが一番良かったかを書き込む人気投票用紙を受け取り、まずは文ちゃんのクラスである1年1組へと向かう。


 教室の入り口に電飾を使ったきらびやかな装飾が施されてカジノらしさを醸し出しているし、アクセントとして風船をうまく使ってるのもポイントが高い。


 テーブルは机などをつなぎ合わせ、その上にグリーンのマットが敷いてあるし、高校の文化祭レベルなら十分な感じだな。


「いらっしゃいませお客様。

 チップを選んでください」


 チップ代わりになるのはペンシルカルパスや、ブラックライトニング、キャンディやうめー棒など。


「んじゃ、ペンシルカルパスで」


 チップ代わりに使うらしいペンシルカルパスを10本受け取って、クラスの中に入っていくと、なかなか盛り上がっているな。


 黒のベストとスラックスに蝶ネクタイのディーラーのほかに、うさ耳を付けた女子がルールの説明などをしている。


 賭け事を続けているうちにに熱くなっていって、勝っては喜び、負けが込んでは、めっちゃ悔しがっている奴もいる。


 文ちゃんはどこにいるのかと教室の中を見渡してみると、ルーレットのディーラーをしているようだ。


 カジノにおけるルーレットは非常にシンプルなゲームだ。


 回転盤ウィールに赤か黒の0〜36までの数字が刻まれており、ウィールの中にディーラーが投げ入れる球が、どこに転がり落ちるかを当てるだけのゲームで、ポーカーのような対戦相手との駆け引き要素はほとんどない。


 ルーレットの賭け方は割と多様で、一番簡単なのがルージュノワールに賭ける方法で、約2分の1の確率で当たるので割合簡単な方だな。


 あとはゾーンで分けて賭ける方法。


 これは1〜12のゾーン、13〜24のゾーン、15〜36のゾーンに分かれていて、このかけ方だと約3分の1の確率で当てることができる。


 一番ハイリスクハイリターンなのは、数字への一点賭けで、当たれば36倍で返ってくるが、当然ながらそうそう当たるものでもない。


 まあ本当は他にもいろいろかけ方はあるんだが、そこまで細かくはやらないようだ。


 厳密にいえば回転盤ウィールにも主に二種類あって、ヨーロピアンルーレットとアメリカンルーレット。


 アメリカンルーレットとヨーロピアンルーレットの大きな違いは、ゼロの数とホイールの数字の並びだ


「ゼロ」の部分は緑で、赤でも黒でもなく、奇数でもなく偶数でもないので、基本的に客側の負けだ・


 そしてヨーロピアンルーレットは”0”のみの一つだ。


 だがアメリカンルーレットの場合は、”0”と”00”がある。


 つまり0に入る確率が2倍になるのでmアメリカンルーレットのほうが、客は負けやすいといえる。


 もちろん 0番や 00番にピンポイントで賭けていた者だけは勝ちとなるが。


 最近はメキシカンタイプというさらにもう一つ”000”の数字がある、さらに客が負けやすい台もあるらしいがq


 ゲームの進行手順としてはカジノディーラーからの『プレイスユアベット』(賭けてください)の合図でゲームがスタートし、プレイヤーが、ディーラーが投げた球がどの箇所に落ちるかを予想して、テーブル上にチップを置く。


 プレイヤーがチップを置き終わったら、ディーラーからの『スピニングアップ』(ボールを回します)の合図でウィールにボールを投入し『ノーモアベット』(締切です)の合図で賭けを締め切る。


 あとはボールが落ちたポケットの数字と色を読み上げ、外れてしまったチップをカジノディーラーが順番に回収し、当選したチップに対して、順次配当が付けられ客に返却される。


 ルーレットはプレイヤーもディーラーも簡単に行うことができるので文化祭のカジノにはもってこいなのだな。


 ちょうどゲームが始まるところだな


「プレイスユアベット」


 文ちゃんがコールすると、マットにチップ代わりの駄菓子がおかれる。


「スピニングアップ、ノーモアベット」


 文ちゃんがボールを投げ入れ、結果が出る。


 どうやら連敗したやつが声を荒げた。


「全然かてねぇ。

 イカサマしているんじゃないか?」


 文ちゃんは怒声に体をすくめている。


 さすがに俺は文ちゃんと声を荒げた奴の間に割って入った


「おいおい。

 負けたからってディーラーに当たるなよ。

 いかさましたってなんか証拠でもあるのか?」


 実際、昔のカジノだと回転盤ウィールやボールに磁石を仕込んだり、ボールが振動してはねたりするようないかさまはあったらしいが。


「そ、それは……」


 どうやらばつが悪くなったらしいそいつは脱兎のごとく逃げ出していった。


「やれやれ、ギャンブルで熱くなって他人に当たるなよな」


 そして文ちゃんが笑顔で俺に言った。


「えへへ、ありがとね。

 あっちゃん、助かったよ」


「いやいや、別に大したことはしてないさ。

 だいたい、おもちゃみたいなルーレット盤にいかさまをしかけても、景品は駄菓子だろ?

 そこまでする理由もないじゃん」


「まあ、そうなんだよね」


「そのスーツに蝶ネクタイ。

 すごく似合っていて素敵だね」


「ん、そういわれると悪い気はしないね」


 その後、俺は文ちゃんのルーレットにプレイヤーとして参加し、結果としてはペンシルカルパスを15本ほどにして所でやめておいた。


 賭け事なんてのはちょっと勝ったところでやめておくのが一番だからな。


 そして、ちょうど交代の時間になったようだ。


一二つまびらさん、交代の時間だよ」


「うん、じゃあ、後はお願い」


 そして文ちゃんは俺に笑顔で言った。


「僕おなかすいちゃったし、何か食べに行こうよ」


「ああ、2年生のクラスは食べ物屋なんだよな。

 とりあえず見に行くか」


「うん」


 パンフレットを見ると文化祭定番の喫茶のほかに中華点心、焼きそば、ハンバーガー、カレー、牛丼などの模擬店もあるようだ。


 ありがたいのは手作りカレーとかが300円とかで激安なことだな。


 だが、鐵道研究部は駅弁とお茶などをうってるらしい。


「うーん、安さをとるか、珍しさをとるかかなぁ。

 あと文ちゃんが服を汚したり、服に匂いをつけたりしないように食べやすそうなものか」


 俺がそういうと文ちゃんは笑いながら言った。


「確かに服に汁が跳ねたり、匂いが付いたりするのは困るね」


「とすると駅弁が無難かもなぁ」


「だね」


 というわけで俺たちは鐵道研究部に向かう。


 駅弁は何種類か売っていたが千葉駅のベストセラー商品である菜の花弁当をチョイスする。


 鶏そぼろと煎り玉子が千葉の県花である菜の花を思わせ、箸休めにはあさり串が入るという何ともらしい弁当だ。


 鉄道のボックスシートを模した飲食スペースで俺たちは向かい合って食べはじめた。


「お茶がついて600円ならだいぶ安いな」


 俺がそういうと文ちゃんもうなずいて言った。


「それに冷めていてもおいしいのが駅弁のいいところだよね」


 食べ終わったら文ちゃんと一緒に構内を見て回る。


 クイズ研では早押しクイズをやっていた。


 結果としては文ちゃんが優勝。


 俺ははまったくだめだった。


「さすが、県船だな。

 クイズのレベルが高い」


「あはは、そうかもね」


 それから一年生のアトラクションの手作りメリーゴーランドにものってみたが手製とは思えない精緻な作りだった。


「これを高校1年生が作るとかスゲーな」


「本当だよねぇ」


 そして文ちゃんが戻る時間になった。


「僕、そろそろクラスに戻らなきゃ」


「ん、頑張ってな」


「あっちゃん、本当にさっきはありがとね」


「ん、ルーレットで負けてるやつに難癖付けられたのを遮ったことかな?

 でも、いかさまなんてしてないんでしょ?」


 俺がそう聞くと文ちゃんは申し訳なさそうに言った。


「んー。

 実は僕ある程度狙ったところにボールを入れてたんだよね」


「え、そんなことできんの?」


「必ずじゃないけど、なんとなくどう投げたらどこに入るかとかわかっちゃうんだよ。

 ダーツとかも大体狙ったところに投げられるしね」


「へぇ、それは一種の才能なんだろうね」


「まあ、だから完全にいかさまじゃないとも言えないかなーって感じではあるんだよね」


「でも、ある程度楽しませるようには投げてたんだろ?」


「それは当然だよ。

 それで熱くなっちゃう人が多かったかも」


「まあ、そういうやつもいるから気をつけてな」


「うん、僕、今日はすっごく楽しかったよ」


「俺も楽しかったよ」


 それから少し俺は一人で見て回ったがジェットコースター、UFOキャッチャーなどかなりレベルの高い展示もやっていてびっくりした。


 なかなかに楽しい一日だったよ


 クリア


 ふみちゃんの学校の文化祭


 予定


 6月25日:広瀬君の誕生日


 7月10日:東雲さん誕生日


 7月21日:新發田さんと小規模同人イベントに参加


 7月29日:西海枝さんとホタル観賞


 8月1・2・3日:ふみちゃんと海


 8月5・6・7・8日:九重さんと山でキャンプ


 8月10日:ふみちゃんの誕生日


 8月のお盆:白檮山さんとコミケ1日目2日目に参加


 8月20日:中垣内とプールデート

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