第114話 俺があげたきんちゃく袋を西海枝さんは手直しして弁当袋として使ってくれているようだ

 さて、翌日の昼休み。


 最近は梅雨で天気もいまいちなので、昼食は中庭ではなく教室で弁当を食べるようにしている。


 そして俺は、いつものように西海枝さいかちさんが作ってきてくれた弁当を食べようとしていたが、西海枝さいかちさんが取り出した彼女のお弁当袋は、一昨日に俺が作ったきんちゃく袋に似ていた。


「あれ、それって、この前の家庭科部の活動の時に俺が作ったやつ?

 あ、でもちょっと形が違うかな?」


 俺がそういうと西海枝さいかちさんははにかみながら言った。


「はい、昨日の放課後に被服室の使用許可をとって、秦君がくれたきんちゃく袋をお弁当を入れやすいように手直ししてみたんです」


 俺は西海枝さいかちさんの弁当袋を見て、首を傾げた。


「手直しといっても底の部分を平らにできるよう底布を付けて、横にマチを付けて、お弁当がひっくり返ったりしないようにするのは、ほとんど作り直すのと変わらなかったんじゃ?」


西海枝さいかちさんは首を横に振っていった。


「そうでもないですよ。

 巾着口を作ったりするのは大変ですし、そこが終わってるだけでもだいぶ違いますから」


「まあ、確かにそうかも?

 あんまりのんびりしてると昼休みが終わっちゃうし、そろそろ弁当を食べようか」


西海枝さいかちさんはうなずいた。


「はい、そうしましょう」


 今日のメニューは豚の生姜焼き。


 それに千切りキャベツとプチトマトとアスパラ、卵焼きが一緒に入っていることもあってとても華やかだ。


 ごはんにはごま塩が振りかけてあるな。


 俺の弁当と西海枝さいかちさんの弁当は弁当箱のご飯の量はだいぶ違うが、メニューそのものは同じだ。


「肉がメインだとどうしても見た目が茶色っぽくなるんで、華やかさがなくなりがちだけど、赤・黄・緑も加わると彩鮮やかで華やかだよね。

 おまけに栄養バランスも良くなるし」


 といったと俺はしょうが焼きを一口パクリと口にする。


「うん、甘辛いしょうがの風味が聞いててすごくうまいね。

 市販の生姜焼きのたれとはちょっと違うっぽいけど」


 俺がそう聞くと西海枝さいかちさんはニコッと笑って言った。


「あ、はい。

 市販のすりおろし生姜ではなくって、きざみ生姜を使ってて、あとは醤油とと砂糖にみりんで味付けをしてます」


「なるほど、きざみ生姜だから生姜の味が生きてるのか。

 西海枝さいかちさんは本当努力家だよね」


「いえ、それほどでもないですよえ。

 生姜焼きのレシピは探せばたくさんありますからね。

 なるべく手間が省けて、なおかつ美味しいものを試してみただけで」


「そういうことをちゃんとできるのはすごいと思うけどな」


 そんなことを話しながら弁当を食べていたらいつの間にか食べ終わっていた。


「今日もごちそうさまでした。

 本当いつもありがとうな」


「いえいえ、どうせ私の分も作っていますので、作る手間はそんなに変わりませんし大丈夫です」


 本当に西海枝さいかちさんは、いいお嫁さんになれそうだよな。

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