第101話 九重さんと西梅枝さんのダブルスは見事に優勝かすげえな

 さて、バレーボールの三回戦目で惨敗を喫した俺たちだったが、そうなったらあとは応援に回るだけだ。


 男子サッカーと女子のバスケ、それから女子のテニスダブルスが勝ち抜いて、負けたのは男子のテニスダブルスと男女混合のバレーだったらしい。


「意外と、うちのクラスはスポーツ得意な奴が多かったんだなぁ」


 因みに運動系の部活はこのあたりだと市立船橋や習志野、東京学館船橋、八千代松陰といった野球やサッカーも強い高校がバレーボールなんかも強いので、本気でサッカーやバレーボールで全国を目指してるような奴はうちには来ないとも思うけど。


 因みにテニスは東京学館浦安と八千代松陰、東葉高校に八千代高校なんかなので結構強豪校は違うけどな。


「まあ、俺は九重ここのえさんと西梅枝さいかちさんの応援に行こうかと思うけど、みんなも応援したい奴の所に行ってくれな」


 というわけでまた分かれて応援することにし、俺と一緒は東雲しののめさん。


 広瀬君と剛力君はサッカー、中垣内なかがいと南木なみきさん女子のバスケの試合を見に行くことになった。


「俺ももう少しクラス内での交友関係広げた方が良いんだろうけど……」


 俺がそういうと東雲さんはにパッと笑って言った。


「秦ぴっぴは部活だのバイトだのもいろいろやってるし無理なんじゃなーい?」


「ああ、うん、マジでそれなんだよな。

 月曜日から土曜日の13時くらいまではまではユアチューブ用の動画撮影と、家庭科部の部活と、パティスリーのバイトで大体埋まってるし、日曜日もちょこちょこ予定が入るしなぁ。

 広瀬君なんかは塾通いがあるみたいだから、俺より時間的余裕は無いかもしれないけど」


「そうだねぇ。

 多分もうちょっと偏差値とかが上の学校に落ちて、滑り止めで受かったここに来た感じなんだろうね」


「そうなると塾で勉強を補って上の方の大学を目指してる感じなのかな」


 そう言えば広瀬君のそう言った事情とか聞いたことが無かったな。


 とはいえ志望校に落ちて、滑り止めでここに来たのか?とかはなかなか聞けないよなぁ。


「なんとなくだけどそんな気はするね」


 東雲さんが頷く。


「だとすると広瀬君の誕生日プレゼントは文房具とかで勉強するのに役にたちそうなものとかの方が良いのかもな」


「お。そういえば誕生日近いんだっけ?」


「広瀬君の誕生日は6月25日だね」


「いやあ、本当に良く覚えてるよね。

 さすがだね秦ぴっぴは」


「そりゃ、数少ない男友達で、高校ですぐに仲良くなった相手だしな」


 そういう意味で言えば南木なみきさんや剛力君あたりもそろそろ誕生日を聞いていいかな?


 そんなことを話していたら、やがてテニスコートに到着した。


 そして九重さんと西海枝さんの試合はすでに始まっていた。


「ハアッ!」”パカ-ン”


 相変わらず九重ここのえさんが打ち出すサーブはめちゃ早く、相手の前衛は対応出来てない。


 まあ、テにニスはボールが体にあたったらポイントを取られてしまう以前に、硬球が当たった場合はめちゃくちゃ痛いらしいからな。


 そんなものが相当な速度で飛んでくるのだから、そりゃ恐怖ではあるんだろう。


 もっとも故意のボディショットは基本マナー違反なのでふつうはやらないけどな。


 超人中学生による”テニヌの王子様”だともう普通に相手にボールをあてにいったりしてるけど。


 そしてぽかんとした様子で試合を眺めてる新發田しばたさんに俺は声をかけた。


新發田しばたさん、応援お疲れ様」


「あ、秦君こんにちは。

 私は補欠でよかったです。

 西海枝さいかちさんはすごいですよね。

 あの九重ここのえさんとダブルス組んで普通に試合できるなんて」


「ああ、確かに西海枝さいかちさんはすごいよな。

 ぶっちゃけ俺がテニスで九重ここのえさんと一緒にプレイしてついていける気がしない」


 俺がそういうと東雲しののめさんがコクコク頷いた。


「ほんとえりちんは凄いよね。

 秦ぴっぴの点数が良すぎて目立たなかったけど、中間テストの点数もかなり良かったみたいだし、

 でもそういう事を自慢げに言うわけでもないしね」


 新發田しばたさんが少し落ち込んだように言う。


「正直羨ましいですね……」


 俺は首をかしげて言う。


「でも、新發田しばたさんめっちゃ絵がうまいしそれも才能だと思うよ」


「そ、そうでしょうか?」


「いまはソシャゲでキャラクターが沢山必要とされたりするし、ラノベを中心に小説の挿絵も可愛らしい絵柄に移ってるっぽいしね

 なんでイラストレーターの仕事も増えてるし、頑張ればそれで食っていけると思うよ。

 絵本作家とカは大変らしいけど」


「イラストで食べていくですか……」


「まあ、一生安泰かっていうとそうでもないかもしれないけどね。

 時代が変わると受ける絵柄も変わるしさ」


「はい、そうですよね」


 まあ、そんなことを話して、時々エールを送っていたりしていたが、最終的に九重ここのえさんと西海枝さいかちさんのペアは女子ダブルスで優勝してしまった。


「イエーイ。

 エリー、私たちがWinnerデース」


 九重ここのえさんが西海枝さいかちさんを抱きしめて喜んでいる。


「はい、勝てて良かったです」


 照れたように抱きしめられている西海枝さいかちさんたとに俺は拍手を送った。


「二人とも、優勝おめでとう」


 そして東雲さんも拍手しながら言う。


「いやー、えりちんはかなり凄かったんだねー。

 友達として鼻が高いよー」


 やはり照れたように西海枝さいかちさんは言う。


「えへへ、そ、それほどでもないです」


 そして、新發田しばたさんは二人にタオルなどを差し出しながら言った。


「二人とも、お疲れ様です。

 タオルとスポーツドリンクをどうぞ」


「助かりマース」


「うん、ありがとうね」


 そして俺は西海枝さいかちさんにきいてみた。


「まあ、やっぱスポーツは身体能力と練習量がものをいうんだと思うけど、西海枝さいかちさん実はテニスやってたの?」


「ええと、私は小学校から体育の時間にテニスの授業がありましたから、それで何とかついていけたんだと思います」


「そうだったんだ……・

 まあ、小学校から体育の授業でやっていたのならある程度は出来るようになるものなのかな?」


 そういう俺の言葉に東雲しののめさんは首を振った。


「あたしも一応授業ではテニスを少しやったけど、えりちんみたいにやるのは無理だと思うよ」


 新發田しばたさんも東雲さんの言葉に頷いた。


「私もとてもではないですけど、無理ですよ」


 うーん、やっぱり西海枝さいかちさんって、一見すると地味だけど何でもそつなく出来るタイプなんだな。

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