第94話 なんとかゲームを途切れさせない程度にはなったな
それぞれが所定の位置について練習を再開だ。
「じゃあ、もう一回いくよー」
先程の失敗を繰り返さないように、今度はボールを中心視野で凝視するのではなく、全体を周辺視野で捉え、てボールや自分以外のプレイヤーなどの動きを、大まかに見るようにする。
そうすると、ボールの動きなども却ってよくわかるようになるから不思議だが、人間も目は中心視野では色彩の変化を鋭敏に感じ取れるようになっていて、周辺視野では明暗の変化を鋭敏に感じ取ることができるために物体が動いたかどうかを鋭敏に捉えることができるようになっているらしい。
「おーらい!」
今回は早めに声をかけて、動くことが出来たので
俺はボールの落下点に移動してアンダーハンドパスと同様の体勢でレシーブをする。
ボールを腕で打ち返すのではなく膝のクッションを使ってボールの勢いを吸収した後で、膝を伸ばして体を持ち上げ、ボールを下から持ち上げるようにすることで、思った通りの場所へボールを上げることが出来た。
「おっけー!」
俺が上げたボールを
「よっしゃ、上手くいったな」
俺がそういうと東雲さんは反対側のコートからこちらのコートへ移動してきた。
「じゃあ、ローテーションしよっか、あたしは次はレシーバーかな?」
俺はうなづいていう。
「そうだな。
剛力君がサーバー、広瀬君がブロッカーで、
俺と
「おっけー!
どさくさに紛れて今度はあたしを押し倒さないようにね」
二ヒヒと笑いながら
「おーい、どさくさまぎれって、さっきのはわざとやったわけじゃないし、そういう事をやろうとするならタイミングとか雰囲気とか整えたうえで、相手から合意を得てからやるに決まってるだろ」
俺がそういうと
「うえ?!
そ、そうかえしてくるかぁ……」
いったいどういう反応をすると思ってたんだか。
「じゃ、じゃあ、行きますよー」
剛力君がボールをトスアップしてフローターサーブを打って来た。
ボールは俺と
「
俺がそう声をかけたが
「へ? あたし?!」
そしてボールは地面に落ちてしまった。
「今度は見事にお見合いしちまったなぁ」
バレーボール、或いは野球など複数の守備の選手がいるスポーツではよくある失敗だが、選手の間に落ちて来たボールを選手同士がとるのを譲り合ってしまい、結果として誰もとらずにボールが落ちて失点してしまうというのは中々にもったいない。
「あ、あはは、ごめんねー」
「んー、やっぱレシーバーだけで誰が拾うか判断をするのは難しいのかもな。
ボールがどこに飛ぶかを判断してセッターが誰が拾うか指示だしした方が良いかも」
俺がそういうと
「確かにねー」
そして
「と、すると、私が指示をした方が良いってことですね」
「うん、お願いね」
「じゃ、じゃあ、行きますよー」
そういった後、剛力君がボールをトスアップしてフローターサーブを打つ。
また微妙な位置に飛んできそうだが……・
「秦君!」
「了解!」
俺はさっとボールの落下点に入ってレシーブを上げ、
「広瀬君やるなぁ」
俺がそういうと広瀬君はかるく笑って言う。
「まあ、身長の差があるからね」
「それだけじゃなさそうだけどな」
その後もローテーションしていき、すべての場所を一通りやって、チームとしてそれなりに形になったと思う。
まあ、これで明日の本番も何とかなりそうかな?
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