第93話 練習の最中に南木さんを押し倒す形になっちまったがもちろんわざとじゃないぞ

 さて、明日に迫った球技大会に向けて、昼休みにメンバーでの練習。


 体育館のバレーボールのコートやバレーボールを借り、ポールを立ててネットを張り実践に近い形式での練習だ。


「もう時間もあんまりないし、今日はサーブ、レシーブ、トス、アタックとブロックをつなげていけるように、2対4に分かれて実践に近い形で練習したいと思うけどどうだろう?

 具体的にはサーブをするサーバーが一人に、レシーブを受けるレシーバーが二人。

 トスを上げるセッターが一人。

 そのトスをスパイクするアタッカーが一人にそれをブロックするブロッカーが一人。

 できれば俺はレシーブの練習からしたいと思う。

 サーブもまともに拾えないとゲームにならないしな」


 俺がそういうと東雲しののめさんがにぱっと笑って言う。


「おっけー、なら私にサーバーは任せておいてよ!」


 そして南木なみきさんが続けていった。


「わ、私もレシーブの練習からしたいです!

 セ、せめて本番では皆さんの足手まといになりたくないですし……」


 その言葉に東雲しののめさんがにぱっと笑って言う。


「おー、そのいきそのいき、やるきだねぇ」


 その次に手を挙げたのは中垣内なかがいと


「じゃあ私はセッターをやるからそこの二人はちゃんと私に向かってボールを上げてよね」


 中垣内なかがいとが俺と南木さんを見ながらそういうので俺はうなずいていう。


「お、おう、ちゃんとセッターにボールを上げるのが、レシーバーの役目だしな」


 そして南木なみきさんもうなずいた。


「あ、は、はい、頑張ります」


「じゃあ僕はアタッカーをやろうか」


 広瀬君がそういうと剛力君が言った。


「じゃ、じゃあ、僕はブロッカーですね」


 というわけで東雲しののめさんのサーブから一連の動作をつなげる練習だ。


 ちなみにバレーボールのコートは大きさは長辺18メートル、短辺9メートルの長方形で、それを2つに分けているため、自軍のエリアは9メートル四方で、これはテニスコ-トとさほど変わらないから守備範囲は広くないが、その分守備でお見合いしたり、かち合ったりする可能性は高いから気を付けないとな。


 この場合のお見合いとは、選手の間に落ちて来たボールを選手同士がとるのを譲り合ってしまい、結果として誰もとらずにボールがコートに落ちてしまうミスプレーのこと。


 本来は6人が入るが、俺は南木さんと二人で、飛んできたボールをレシーブで中垣内なかがいとに返さないといけないわけだ。


「南木さん、俺が取れそうなときはオーライって声を出すようにするねー」


「わかりました」


 そして東雲しののめさんがフローターサーブの態勢に入った。


「いっくよー」


 俺と南木なみきさんはうなずく。


「よーし来い!」


「はい、どうぞ」


 ポイっとボールをトスアップするとパーンという音とともにボールは俺と南木なみきさんの中間くらいへ飛んでくる。


 しかも、無回転なのかボールの軌道がかなりぶれてる。


 フローターサーブの無回転はそこまで珍しくないらしいとは言え、こりゃやばいな。


 とりあえず俺が取りに行ったほうがいいか?


 俺はボールに向かって走り出しながら声を上げた。


「オーライ!」


 しかし、近くで南木なみきさんの声が聞こえた。


「え?」


 そしてどんという衝撃。


「あいたた……」


「あううう」


 俺と南木なみきさんが思い切り衝突し、体重の重たい俺が南木なみきさんを押し倒すようになってしまった。


「ご、ごめん!」


「あ、だ、大丈夫です」


 俺は飛び起きた後、南木なみきさんに手を差し出した。


「捻挫とか大丈夫そう?」


 南木なみきさんは、少し顔を赤くしていう。


「だ、大丈夫です。

 ねん挫とかはしてないと思います」


「はあ、其れならよかった」


 そこでかかったのは中垣内なかがいとの声。


「まったく、昼休みからクラスメイトの女の子押し倒してるんじゃないわよ」


 そして東雲しののめさんも言う。


「さっすがはたぴっぴ、てなれてるぅ」


 俺は二人に向かっていった。


「おーい、わざと押し倒してるわけじゃないし、手慣れてもないぞぉ」


 その様子を困惑したように見ている南木なみきさんに、はぁと大きなため息をつく広瀬君。


 いやまあ、南木なみきさんのお腹は意外とふわっとしていてやわらかい感じだったけどさ。

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