第90話 バレーボールの練習に付き合ってくれた中垣内や南木さんにお礼として家庭科部の活動に誘ってみたよ

 昼休みにスパイクを打つ練習をしていたら、午後の授業の予鈴もなったので、そそくさと練習は切り上げることにする。


「そういえば今日の放課後は部活があるから、練習は出来ないのよね?」


 中垣内なかがいとがそう聞いてくるので俺は頷く。


「試験準備期間から試験期間は部活動できなくて久々だしな。

 あんまり部活をさぼるのもどうかと思うんで、今日は参加しておきたいんだよ」


「そう……」


 何となく寂しげに言う中垣内なかがいとに俺は聞いてみた。


「あー、昨日や今日とかにバレーの練習の仕方を教えてくれた礼って事で、中垣内なかがいとも家庭科部の部活に参加してみないか?」


「え、いいの?」


「ダメとは言われないんじゃないかな?

 えっと、南木なみきさんも良ければ、一緒にどうかと思ってるんだけど」


 俺がそういうと南木なみきさんは少し驚いたように言った。


「私も参加していいのですか?」


「うん、まあ、今日は何を作るかによるけど、何なら作ったものを食べながら会話に加わるだけでもいいと思うし」


 俺は大仏おさらぎさんにSNSを通じて聞いてみることにした。


『今日の部活動にクラスメイトをつれていってもいいですか?

 後、今日は何するんでしょうか?』


 大仏おさらぎさんからはすぐに返事が返ってきた。


『もちろん大歓迎だよー

 きょうはチョコケーキを焼こうと思ってるけどどうかな?

 何か作りたいものがあるなら、そっちでいいけど』


『いえ、俺はそれでいいですけど、ホワイトチョコがあると嬉しいです。

 あと、なにかケーキに合いそうな飲み物もあった方が良いかもしれませんね』


『了解・

 じゃあ、コンビニでホワイトチョコとペットボトルの紅茶とかコーヒーでも買っておくね』


『了解しました』


 んで、話もついたので二人に伝える。


「よし、先輩の許可も確認したし、安心していいと思うよ」


「んじゃ、私も行く!」


 中垣内なかがいとがそういうと、南木なみきさんも言った。


「では、私も参加させてもらいますね」


「了解、じゃあ二人とも、放課後よろしくな」


「ええ、すこしは期待しておくわね」


「よろしくお願いします」


 というわけで、放課後に俺たちは家庭科実習室に向かった。


 今回は 俺と西梅枝さいかちさん、東雲しののめさんに加えて、中垣内なかがいと南木なみきさんも一緒さ。


 そして、大仏おさらぎさんと雅楽代うたしろさんはすでに来ていた。


「お久しぶりです、大仏おさらぎさん、雅楽代うたしろさん」


 俺がそういうと大仏おさらぎさんが、笑顔で答えてくれた。


「こんにちは、そちらの二人が今日のゲストかしら?」


「ええ、こちらが中垣内なかがいとさんで、こちらが南木なみきさん」


 俺がそういうと南木なみきさんがペコっと頭を下げて挨拶をした。


南木なみき紗耶香さやかです。

 本日はお邪魔させていただき、ありがとうございます。

 どうぞよろしくお願いします」


 雅楽代うたしろさんが笑顔で言う。


「はい、私は雅楽代うたしろ香苗かなえです。

 よろしくねー」


 そして中垣内なかがいとが少し緊張したようにおずおずという。


「あ、あの、中垣内なかがいと静香しずかです……」


 大仏おさらぎさんが少し苦笑していった。


「あ、そんなに緊張しなくても大丈夫よ。

 私は大仏恵おさらぎめぐみといいます」


「あ、は、はい、よろしくおねがします」


 東雲しののめさんと対照的に中垣内なかがいとは割と人見知りするみたいだな。


「では、今日はチョコケーキづくりですね」


「はい、ホワイトチョコはありましたか?」


 俺がそういうと大仏おさらぎさんは頷いて言う。


「ええ、大丈夫ですよ」


「有難う御座います」


 俺が今日作る予定なのはコーヒーやココアを使った生地に、ビターチョコレートクリームのビターチョコケーキと卵白を使ったホワイトケーキ生地にホワイトチョコレートクリームのスイートホワイトチョコケーキ。


 ケーキ生地の作り方はロールケーキと同様に卵でメレンゲを作り、砂糖や牛乳、小麦粉。コーヒーやココアパウダーなどを入れてオーブンで焼き、クリームはホワイトチョコレートを細かく刻んで耐熱容器に入れ、クリームチーズや生クリームを加えて、レンジで加熱して、溶けるまで混ぜてから冷ます。


 それぞれのケーキ生地にクリームを塗り、最後にチョコレートの平らな面を上にして、ピーターで削ってまぶすことでケーキは完成だ。


 ケーキを作ってる間中垣内なかがいと南木なみきさんは俺が作業してる様子をじっと見ていたし、西梅枝さいかちは俺にメレンゲの立て方とかのこつを聴きながらケーキを作っていたけど、東雲しののめさんはその様子を見ながらにまにま笑っている。


「はたぴっぴは、バレーボールはへたぴっぴだけど、料理は上手だよねぇ」


東雲しののめさんは一言多いって」


「それが私だもん」


「さて、ケーキも仕上がったし……とりわけて……」


 俺がそういうと一番最初に手を出したのは東雲しののめさん。


 彼女はホワイトチョコケーキをパクりと口に入れて言った。


「やたー、じゃあさっそく、あぐ……おおー甘くておいしー。

 はたぴっぴ、ストレートティーちょーだい」


「へいへい、かしこまりましたお嬢様」


 俺が紙コップに冷えたペットボトルのストレートティを入れると東雲しののめさんはごくごくと飲み干す。


「ん、紅茶に合うなぁ」


「それは何より」


 その後、俺の袖をちょいちょいと引きながら、周りから俺に隠れるように中垣内なかがいとは言った。


「わ、私にもケーキと紅茶をとってよ」


「ん、何がいい?」


「ビターチョコにミルクティー……」


「了解」


 俺は中垣内なかがいとのオーダーに従ってビターチョコケーキを皿にとって、紙コップに冷えたペットボトルのミルクティを注いで渡す。


「ん、確かに美味しい。

 バレーボールも最初は下手だったけど、結構上達したし……あんたって結構器用なのね」


「んー、俺的にはそうでもないとは思うけどな」


 なにしろなんでもできるふみちゃんという幼馴染が居るからな。


 そして西梅枝さいかちさんは自分の作ったものと合わせて少しづつ取り分けて、ケーキを食べ比べている。


「なるほど、甘いホワイトチョコのケーキと、ビターなチョコケーキ。

 見た目も対照的ですしこういう作り方も面白いですよね。

 私はメレンゲの立て方が足りなかったかも」


「ああ、ちょっと生地が固めかもね。

 メレンゲの丁度いい立て方ってなかなか難しいから、結局何回もやって慣れるしかないんだけど」


「そうなんですね。

 うん、私も頑張ってみます」


 そして南木なみきさんにもケーキと紅茶は好評なようだ。


「ふふ、甘いものを食べると幸せな気分になれますよね」


「確かにそうだよな」


 チョコケーキがみんなに好評な様で良かったよ。

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