第86話 ふみちゃんの学校はもう衣替えか
今では俺と
その応用でアンダーパスを同様にやってみたが意外とスムーズにパスを返すようになっていた。
中垣内は結構器用に立ち回れるとは思っていたけど、思っていた以上だったな。
そして日も傾いて、あたりが少し暗くなってきた。
「今日はこのくらいで上がろうか。
なんとなくだけど、ボールコントロールのこつはつかめた気がする。
練習につきあってくれて二人とも有難うな」
俺がそういうと
「いえいえ、私こそありがとうございました。
これで球技大会では足を引っ張らないで済みそうです」
しかし、
「まだ、オーバーパスとアンダーパスができるようになっただけだからね。
トスはオーバーパス、レシーブはアンダーパスの応用でできるけど、サーブやアタックはまだやってないのだから浮かれないの」
「あ、そりゃそうか。
確かにサーブが入らなきゃ話にならないもんな。
とはいっても明日は家庭科部の部活動があるから……昼休みになんとかするしかないか」
俺がそういうとフフンと胸を張って
「仕方ないわね、明日の昼休みの練習も付き合ってあげるわよ」
そして
「わ、私もお願いしますね」
「もちろんよ」
そして借りたバレーボールを体育倉庫へ戻して俺たちは帰路についた。
球技大会が終わったら、
津田沼駅に到着したら女子二人と別れて、船橋で東部アーバンラインに乗り換える。
そして、ホームで到着していた電車に乗り、シートに座って発車を待っていたら声をかけられた。
「あれ?
あっちゃん?」
かけられた声のほうをに顔を上げると、そこにいたのは幼馴染のふみちゃんだった。
そしてふみちゃんは俺の隣に腰を下ろした。
「ふみちゃんも今帰り?」
「うん、今日は学校の図書室で自習してたら、少し遅くなっちゃったんだ。
あっちゃんは……なんか顔がはれてるけどいったい何やってたの?」
「ああ、うちの学校はもうすぐ球技大会があるからさ、俺はバレーボールに出るんだけど、その練習で顔面に何度かバレーボールがぶち当たったからそのせいかな?」
俺がそういうとふみちゃんはくすっと笑った。
「あっちゃん、あんまり運動は得意じゃないもんね。
昔からよく転んでたし」
「そうなんだよな、さすがに最近は何もないところで転んだりはしないけど」
「僕の学校は球技大会とかは秋で、もうすぐ文化祭なんだよね」
「そうなんだ、ちょっと珍しいかも」
「そもそも僕の学校は学校行事自体が少ないからね。
まあ、基本的に進学校で授業優先だからだからしょうがないけど、いろいろできるあっちゃんがちょっとうらやましいかな」
「うちの学校も結構特殊だからなぁ。
一学期の終わりに”音楽””演劇””古典芸能”なんかの芸術鑑賞を習志野の大ホールでやったりするし、普通科なんだけど芸術学校よりなんだよな」
そんな他愛もないことを話しているうちに馬込沢に到着したので俺たちは電車を降りて家へ向かう。
そしてふみちゃんの服を見て今更気が付いた。
「あ、ふみちゃんの学校のほうは、もう衣替えで服変わってるんだ。
夏服だよね、それ」
そう、5月までは黒いセーラー服だったが、今ふみちゃんが着ているのは白いセーラー服だった。
「あ、これは夏服じゃなくって中間服だね。
6月と10月の間は白いけど長袖のセーラー服なんだ」
「ああ、中間服なんだ、それ。
俺たちみたいにブレザーの場合は暑い場合はジャケットを脱げばいいけど、セーラー服はブラウスの上に着るとかじゃないから、脱ぐわけにもいかないし大変だよね」
俺がそういうとふみちゃんは小首をかしげた。
「んと、あっちゃんは、セーラー服の下はブラとかの下着だけしか着てないと思ってる?」
「え? そうじゃないの?」
少なくともコスプレイメクラのセーラー服の下に何か着るってのはないし、アニメとか漫画のセーラー服の下にもシャツなんか来てたりはしないよな?
俺がそういうとふみちゃんは肩をすくめて言った。
「あのね、セーラー服の下にはアンダーシャツかキャミを着るのが普通だよ」
「え、そうなんだ」
「まあ、暑くて仕方ないとか面倒くさいとか袖や襟が出ると困るとかで、夏服の場合はそういうのを着ない人もいるかもしれないけどね。
あと、襟元とか胸元が開いているから、下に着る物はかなり限られてくるし、インナーがウエストのとこらから見えたりするのもみっともないからインナー選びは結構大変だけど」
「そっか、女の子は大変なんだね」
「そうなんだよ。
教室や塾のエアコンも男の子に合わせて温度が低いことがあるから、寒すぎてサマーベストを着たりする場合もあるし。
でも外に出るとすっごく暑かったりもするしね」
「そりゃそうだよなぁ」
「あとスカートの中には黒パンも履くのが普通だしね」
「ん?
黒パンって?」
「股下がすごく短いスパッツ。
生理の時は専用のサニタリースパッツをはくときもあるけどね」
「な、なるほど、女の子は大変だよね」
「そうなんだよー。
僕たち女の子は服装を考えたり整えたりだけでも大変なんだよ」
「髪の毛のセットとかも苦労してるし、女の子は本当大変だよなぁ。
ふみちゃんなんかは勉強だけでも大変なのに本当偉いと思うよ」
俺がそういうとふみちゃんはくくっと笑う。
「本当、あっちゃんはそういうのをわかってくれてうれしいよ。
僕の学校の男子なんて勉強以外興味ないって感じだしさぁ」
「そっちの学校は偏差値74とかだから、まあそういうやつばっかりにはなりそうだよな」
「でも、毎日毎日学校で勉強して、学校が終わったら22時まで塾で勉強してじゃあ、高校生活が楽しくもなんともないような気がするんだけどね」
「いまはいい大学に入って、無事大学を卒業すれば将来安泰ってわけでもないしなぁ。
高校の三年間を全部勉強に費やすのが正しいのかって、俺は思ったりもするけど……まあ、勉強ができたほうがいいのも、いい大学という高い学歴を持ったほうがいいのも事実だったリするから何とも言えないよな」
そんなことをつらつらと話していたら家に到着した。
「それじゃ、あっちゃん、またね」
「ふみちゃんも。
今日はいい夢を見れるといいな」
「へへっ。
きっとみられるよ」
そういって隣の家に入っていくふみちゃんの後姿を見て、彼女は今幸せなんだろうか? と思ったりするが、少なくとも不幸ではないと思いたい。
あ、そういえばのふみちゃんの学校の文化祭がいつで、他校の生徒が見学できるのか聞いておけばよかったかな。
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