第87話 だから女の子のちょっとした外見の変化にいち早く気づけというのは彼女いない歴=年齢の一人っ子にはキツイって

 さて、ふみちゃんの学校と違い、うちの学校は衣替えの期日は決まっていない。


 寒かったら6月でもブレザー着ててもいいし、5月でもシャツやブラウスの上にベストだけのやつがいたりする。


 外では寒いが教室では暑いなんて場合は教室ではブレザーを脱いで授業をうけてもいい。


 一般的に衣替えは6月1日と10月1日が多いらしいが、日によっては6月でも朝夕は結構肌寒かったりするし、男子は暑くても、女子には寒いという場合もあるだろう


 そういう点ではかなり自由な校風なのはありがたいな。


 今日は朝から晴れているうえに南の風が吹いてるせいでか、少し暑い感じだしブレザーはいらなそうだからサマーセーターを着ていくことにする。


 いつものように教室に向かい入るところで中へ笑顔で挨拶をしたが、今日はまだ西梅枝さいかちさんは来ていないみたいだ。


 そしていつものようにすでに来ていた広瀬君や剛力君とだべってしゃべっていたら、入口の方から西梅枝さんがあいさつする声が聞こえた。


「皆さんおはようございます」


 でいつも通り自分の隣の席に向かってくるわけだけど、西梅枝さいかちさんも今日はブレザーではなくて、カーディガンを羽織ってるな。


 そしてにこやかにそして何かを期待するような雰囲気で西梅枝さんが俺に挨拶をしてきた。


「秦君、おはよ」


「おはよう西梅枝さいかちさん」


 この様子だとまた何か変えたのかな?


 と思ったら今回は前回よりはわかりやすかった。


「あ、今日は夏らしくローポニーなんだね。

 その髪型、夏らしく、さわやかですごく可愛いとおもうよ」


 俺がそういうと西梅枝さいかちさんはぱあっと花が咲くように笑った。


「えへへへ、そうかな?

 ほめてもらえてよかった」


「うん、ゆるめのウェーブがスポーティな感じよりフェミニンな感じにしてると思うし」


 そんなことを言っていたら東雲しののめさんも教室に入ってきた。


「みんなー、おっはよー」


 そして俺のそばにによって来るとニパっと笑って言った。


「どうよ?! はたぴっぴ」


「いや、何がどうよなんだか説明が欲しいんだけど?」


 いや、東雲しののめさんも、多分何か変えたんだろうけど髪型というわけではなさそうだし……まあ、女子高生が校則を守れる範囲かつ月のお小遣いでできることは限られてるけど……ン?


「ネイル? 薄ピンクのジェルネイルかな?

 あと、手の甲がめっちゃつややかだからネイルと一緒になんかやった?」


俺がそういうと東雲しののめさんは少し驚いた表情で言った。


「そそ、せいかーい。

 パラフィンパックってやつだね」


「ああ、パラフィンパックって要はワセリンを塗るのと同じような効果があるんだよな確か。

 ワセリンっているとボディビルダーが使うみたいなイメージがあるけど」


「いや、そこは余計なこと言わない」


「肌の表面に油膜を張ることで皮膚の内側からの水分蒸発を防ぎ、肌の乾燥を阻止しつつ、見た目もすべすべになるんだっけ?」


「いやあ、はたぴっぴならわかってくれそうだと思ったけど、そこまで理解してるとむしろきもいし」


 東雲しののめさんはけらけら笑いながら言った。


「おーい、それはちょっとひどくないかーい?」


 と、俺も冗談めかして答える。


「あははは、もちろん冗談だよん」


 まあ、冗談で言ってることはわかるが、あれこれ知ってるのは、やっぱきもいのかね。

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