第81話 球技大会か、スポーツは苦手なんだよな

 さて、中間テストやその後のデートや皆との焼き肉も終わって通常モードに戻った6月。


 今月は 校内球技大会がある。


 男子はサッカーとバレーボールにテニス、女子はバスケットボールとバレーボールにテニス。


 バレーボールは3人ずつの男女混合チームだ。


 4月に入学した1年生にとって、集団競技はクラスメイトと新たに仲良くなれるチャンスで、男子は活躍すれば女子に黄色い声を送ってもらえたりもするんだが……。


「球技大会か……」


 俺がそう言ってため息をつくと西海枝さいかちさんが心配そうな表情で言う。


「あの、何かありました?」


「あ、うん。

 俺は運動はそんなに得意じゃないし、球技大会でほかのみんなの足を引っ張ったりしないかなって」


 俺がそういうと西海枝さいかちさんが不思議そうに言う。


「え?

 そうなのですか?

 私は秦君ならそのあたりもそつなくこなしちゃうように思ってましたけど」


 そこへ突っ込みを入れてくるのは東雲さん。


「そいや秦ぴっぴは確かにボウリングそんなにうまくなかったしねー」


 俺は苦笑しつつ答える。


「俺、スポーツはそんなに得意じゃないんだよ。

 運動音痴ってほどでもないけど、活躍できるって程でもないのがなんとも微妙なんだよな」


 俺がそういうと東雲しののめさんが笑いながら言った。


「いやあ、秦ぴっぴみたいにコミュ力高くて、家事も接客バイトもできて、中間テストで全教科100点の1000満点取って、その上スポーツもできたら完璧超人過ぎてむしろ引くっしょ」


 まあ、その言葉には同意するが、俺のお隣さんの幼馴染はそんなタイプらしいのがなんともなんだけどな。


「まあ、中学の時は昼休みにサッカーだのバレーボールだのして遊んでたから、できないわけじゃないけど、サッカー部じゃ補欠にも入れない程度だったしな。

 まあ運動系部活の強いところに行きたい奴は、市立船橋とか習志野みたいな場所に行ってるだろうし、この学校は音楽系を中心とした文化部の方が影響力強い特殊な学校でもあるし、めちゃくちゃ足を引っ張ることもないとは思うけど」


 そして東雲しののめさんが言う。


「そんなに心配ならバレーのメンバー男女3人ずつ6人組を知り合いで固めちゃえばよくない?」


「そこに気づくとは……やはり天才か」


「いや、それほめてないっしょ?」


「ばれたか。

 まあ、それはともかく、メンツを身内で固めるとすると……」


「はいはい、それなら私もバレーやる!」


 とまず中垣内なかがいとが割り込んできた。


 そしてその次はというと。


「あ、あの、私も混ぜてもらえますか?」


 というのは南木なみきさん。


「じゃあ男子は、俺と広瀬君と剛力君……かな?」


 そういうと広瀬君が苦笑した。


「君のハーレムに僕をためらわず入れるあたり、秦君はもうなんというか……」


「いや、別にハーレムじゃないだろ?」


「まあ、そういうことにしておくよ」


 うちの学校は各クラスが各30人なので男子は全員参加なのだ。


「まあ、バレーなら夏の校庭を走り回ったり、スライディングしたりして、全身ホコリだらけ泥だらけにならなくて済むだろうし、多少は楽だと思うけど」


 実際にサッカーはめちゃくちゃ走り回ることも多いから疲れるんだよな。


「じゃ、このメンバーで、球技大会頑張ろうぜ」


 俺がそういうと東雲しののめさんが自信ありげにいう。


「ふっふっふー、任せておいてよ」


 対照的にあまり自信がなさそうなのは南木なみきさんだ。


「も、もし皆さんの足を引っ張ってしまったらごめんなさい」


「まあ、あくまでも親睦を深めるのが目的の行事だし、勝てなくても楽しめればいいんじゃないかな?」


 俺がそういうと剛力君が言った。


「じゃ、じゃあ僕も頑張りますね」


「まあ、勝てるならそれに越したことはないしね」


 というわけで俺たちは球技大会のバレーボールのために頑張ることにしたのだ。


 ちなみに西海枝さいかちさんと九重ここのえさんは女子テニスに参加するそうだ。


「私たちの参加するテニスの試合応援しに来てくださいね」


「私たちもガンバルヨー」


「ああ、二人も頑張ってくれな」


 タイプ的には正反対なんだけど、なんだかんだで西海枝さいかちさんと九重ここのえさんは仲良くやってるっぽいな。

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