第80話 女子高生も焼肉好きだったりするんだな

 さて、中垣内なかがいと東雲しののめさんとのデートは、とりあえず無事終わった。


 中垣内なかがいとの反応なんかは、大体予想通りだったけども、東雲しののめさんに関してはかなり意外だったけどな。


 とはいえ東雲しののめさんは周囲をよく見て、空気を壊さないように行動するのが得意な感じはしていたから、ああいった行動をとれること自体は不思議ではないんだけども。


 そして今日は中間テスト後に行うと決めていた、焼き肉を勉強会メンバーで食いに来ている。


 メンバーは俺、西海枝さいかちさん、東雲しののめさん、南木なみきさん、中垣内なかがいと新發田しばたさん、剛力君の7人。


 おれは九重ここのえさんにも声をかけることにした。


「あー、九重さん?

 これからみんなで焼き肉を食べに行くんだけど一緒にどうかな?


 俺がそういうと九重さんは満面の笑みで言う。


焼き肉コリアンバーベキューデスカ?

 ソレニワタシモ参加していいのですか?

 ならばゼヒお願いシマス」


 ああ、アメリカでは日本の焼き肉はコリアンバーベキューなんだっけ。


「まあ焼き肉といってもJOJO苑みたいな、お高い場所じゃなくて、牛安の食べ放題の3500円コースだからそんなに肉の味には期待なしでいてくれるかな?」


 俺がそういうと九重ここのえさんは小首をかしげつつ言った。


「あ、ハイ。

 わかりマシタ」


 JOJO苑であれこれ頼んだら普通に一人で1万円とか超えたりするからな……アルコールも加えてだけども。


 その点、牛安はいちいち肉にA5だのサシだの赤みがどうたらとか熟成がなんたらとか言いたくなるようなお高い焼き肉しか食べたくない人のための店ではないが、2000円から4000円ほどという焼き肉としては庶民的で普通にそこそこの味の肉が食べれる非常にコストパフォーマンスの良い店だと俺は思う。


「8人ですがテーブル一つで行けますか?」


「あ、はい。

 8名様でしたら座敷が大丈夫ですよ。

 どうぞこちらへ」


 と案内されたのは卓上七輪が2つおいてある座敷席だった。


「なるほど、これなら8人でも十分座れるか」


 座敷席は大人数でワイワイやるにはいい。


「じゃあ適当に座って……東雲さん早いな」


 そして席に着いた東雲しののめさんは俺においでおいでをする。


「秦ぴっぴー、私に肉をちょうどよく焼いて食べさせてー」


「はいはい、しょうがないなぁ、しのた君は」


 というわけで東雲さんのお隣に座る俺。


「デハワタシにモオネガイシマス」


 と反対側には九重ここのえさんが入ってにっこり言ってきた。


 まあ、こういう時に人怖じせずに積極的に素早く動きそうなメンツではあるな。


「あーサラダとかアイスクリームなんかも含めると元は取れると思うから、俺は3500円の食べ放題で行こうと思うけど、単品で行きたい人はそれで頼んでくれな」


 俺がそういうと東雲さんが言う。


「どうせお金を出すのは秦ぴっぴなんだからみんな食べ放題でいいんじゃない?」


「まあ、そうなんだけどさ。

 まあ、じゃあそれで行こうか」


 と店員さんへ全員3500円の食べ放題コースで行くことを伝えると、まずは牛カルビ、ポークウインナー、鶏ももが、先出として運ばれてきた。


「んじゃ、みんな中間テストの勉強お疲れさんでした。

 そのかいもあって皆の成績も結構よかったと思うし、今日は焼き肉をたっぷり食べて英気を養おう」


「いっただきまーす」


 と言うわけで目の前の七輪の網の上にカルビなどを置いていく。


 もう一つの方の七輪には西海枝さいかちさんや南木なみきさんが、トングで肉をつかんでは置いて行ってるな。


 最初にコースを指定すれば、途中での追加注文タッチパネルでの注文なのでシーザーサラダだのキムチだのエリンギバターだのエビやイカだのを好きに頼む。


「やっぱりこういう時は牛トロ上タンっしょ」


 と東雲しののめさんが牛トロ上タンを頼む。


そして配膳されるとニコニコして言う。


「んじゃ秦ぴっぴ、お願いねー」


「はいはい」


「私はロースでお願いしますネー」


九重さんも肉をご所望の用だ。


「ん、了解」


と二人の分と俺の分も含めて七輪で焼いて適当と思われるところで、各々の皿に焼けた肉を置く。


「お姫様方お待たせしました」


「やたー」


「アリガチオデス」


そして一口食べた東雲しののめさんが満面の笑みで言った。


「さすが秦ぴっぴ、いい塩梅だね」


「はい、オイシーデース」


九重ここのえさんも満足らしい。


 ここは注文してから提供までの時間がかなり早いのでストレスにならないのがいい。


 さらに空いた皿の片付けも素早いのはいいよな。


 海鮮類も野菜焼きも値段を考えれば意外とおいしい。


「それにしても中間テストで全教科満点の学年1位とかびっくりだよ」


 東雲しののめさんがそういういうので俺はやや苦笑しながら答えた。


「まあ、高校の試験問題は必ずたどり着ける正解が定められてるものだしな。

 大学の研究とかみたいに世の中には正解がわかっていなかったり、そもそも正解がない問題を解決しないといけないこともたくさんあるからそれに比べれば簡単だと思うぜ。

 それに試験対策のための準備時間も十分あったからな」


 例えば二人の女の子にお客さんが付いていないときに、来店したお客さんが一人来た場合どちらの女の子に仕事ををつけるか? とかな。


 そして牛トロ上タンがいい塩梅に焼けたので東雲しののめさんのレモン汁のたれ皿へ入れる。


「お、ありがと。

 なんか何でもないようなことのように言ってるけど、口で言うほど簡単じゃないんだけど?」


「まあ、確かに口で言うほど簡単でもないけどな」


 今回満点をとれたのはそもそも通っている高校の偏差値がバカ高い学校ではないこと。


 みんなで勉強会をやってみたことで、俺自身にも効率の良い勉強法を当てはめることが出来たこと。


 そしてふみちゃんの的確な試験対策の問題の抜出しによるものなどが合わさった結果ではある。


 まあ、それでも正解が用意されている問題を解くというのはそうでないことよりはたやすいものだと俺は思うけどな。


 まあそんな感じで皆でわいわいがやがやと好き勝手にメニューを頼んでは食べまくっていたが女子高生も焼肉は好きなんだなあと思ったりしたわけだ。


 そしておっさんだった時に比べて、脂っこいカルビとかを食っても全く胃がもたれたり、脂身がまずいと感じたりしないのはいいな。


 うん、若い体っていうのは素晴らしい。

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