第66話 幼稚園の時の思い出は恥ずかしかったり懐かしかったりするものだ

 さて、朝食をとり終わったので、いつものように自分で皿などは洗ってかたづける。


「んじゃ、お母さん。

 ふみちゃんにこの辺りを案内してくるよ」


 俺はそういうとお母さんは笑顔で言う。


「はいはい、ゆっくりしていらっしゃい」


 そしてふみちゃんも笑顔で言った。


「んじゃ、いこ」


「あ、出来れば自転車のほうがいいと思うけど自転車ある?」


「あ、それは大丈夫だけど、自転車で出かけるなら着替えてくるね」


「了解」


 という訳で俺も自転車に乗って出かけられるように服を着替えて、自転車を押して道路へ出る。


 しばらくしてふみちゃんも自転車を押して道路に出てきた。


 さっきはスカートだったけど、パンツスタイルに着替えているな。


 まあ自転車に乗るならスカートじゃ乗りづらいだろうし。


「んじゃ、まずは駅前に行こうか。

 俺たちが通ってた幼稚園なんかもあるし、駅前で大抵の用事は済むと思うよ」


「うん、わかったよ」


 という訳で俺たちは自転車をこいで、まずは駅前へ。


 そしてまずやってきたのは駅前の踏切近くにある天満宮。


「この天満宮の裏が俺たちの通ってた幼稚園なんだよな」


「あーそういわれればそうだったね。

 たしか思い切り走りまわれる広い園庭があったよね」


「そうそう。

 園舎自体はかなーり古かったけどね」


「たしかお泊り会が今頃あったけど、泣いちゃう子がいたよねー」


「あー、よく覚えてないけど俺もかな?」


「そうそう、あっちゃんはお母さーんってぴーぴー泣いてたよね」


「全然覚えてないけど、大体想像はつくよ」


「たしか、泣いていたのは男の子が多かったな」


「まあ、男の方が親離れするの、大抵は遅いしな……」


「そうかもしれないね」


 ふみちゃんは笑っているが、実際に男の方が親離れできないことが多いんだよな。


「夏になったら神社での夏祭りもあるし、結構楽しかったよな」


「夏祭り……そういえばあったような気もするね」


「まあ、そんなに派手なものじゃないけど、いかにも地元の祭りって感じで悪くないよ」


「そっか、夏休みが楽しみだね」


「じゃあ、そろそろ他も案内するよ」


「うん」


「まず、踏切を渡った先に自転車屋さんがあるから、自転車がパンクしたりした時はあそこで直してもらってる。

 ただ、結構混んでることが多いから、修理に1時間くらい待つことも多いけどね」


「それは仕方ないよね。

 この辺りにある自転車屋さんってそこだけでしょ?」


「そうなんだよ。

 自転車自体はソミットストアとかでも売ってるけど。

 んじゃ、次はソミットストアに行こうか」


「うん」


 自転車を少しこいでソミットストアへ。


 駅近くなんだけど俺たちの家とは線路の反対側なのがちょっとした欠点ではある。


「ここの地下一階が食料品売り場でかなり品揃えが豊富で24時までやってるから結構便利だよ。

 一階から三階フロアには ソミットの日用品だけじゃなくウニクロやシモムラなんかの衣服やカメラ屋、書店や百円均一のダイトーのテナントも入ってるから、最低限何かを買いたければここに来れば、大体のものは手に入ると思うよ。

 ただおしゃれな服とか可愛い雑貨とかは南船橋のらららぽーととかに行かないとないけどね」


「そっか、とりあえず食材はここで買えばいいんだね」


「ちょっと遠いけど、値段はスーパーのマルコシの方が安いからお母さんはそっちで買ってるみたいだけどね」


「そうなんだ。

 それだとそっちも見ておいた方がいいかな?」


「んじゃ、のんびり行こうか」


「うん」


 俺たちは踏切を再度わたって家の方へ自転車を走らせる。そして家を通り過ぎてしばらくするとスーパーマーケットのマルコシがある。


「ここがマルコシだね。

 このちょっと先にファミレスのビックボーヤとサイデスカがあるから、たまーに家族で食べにきたりするね」


「なるほど、家族で食べに来るんだ。

 あ、ちょっと自転車で走り回って疲れたし、休憩がてら軽くお昼ごはん食べようよ」


「ああ、そうしようか。

 ビックボーヤとサイデスカどっちがいいかな?」


「それならサイデスカかな。

 あっちゃんはビックボーヤがいいかもしれないけど、お昼からステーキとかハンバーグはちょっと重いし」


「ん、了解」


 という訳でサイデで休憩ついでに、昼ご飯を食べることにする。


「いらっしゃいませ、何名様ですか?」


「二人です」


「では、ご案内いたしますね」


 俺たちは二人が対面に座れる、2人掛けのテーブルに案内された。


「んじゃ、頼もうか。

 ふみちゃんがよければだけど、サラダのLとピザを頼んで二人で分けて食べるのはどうかな?」


「う、うん、僕はそれでいいよ?」


「じゃあ、何のサラダとピザにしようか」


「野菜ときのこのピザにイタリアンサラダがいいかな」


「了解」


「ご注文はお決まりですか?」


「野菜ときのこのピザにイタリアンサラダ。

 とりわけられるように小皿も二枚お願いします」


 俺の注文を聞きながら店員さんがハンディターミナルに注文を打ち込んでいく。


「ドリンクバーはどうされますか?」


「ああ、それじゃ二人ともドリンクバーで」


「では注文を確認いたします」


 店員さんがオーダーを伝えるために厨房にハンディターミナルをもっていく。


「じゃあ、ドリンクバーにいこうか」


「うん」


 俺たちはドリンクバーのコーナーへ行って、俺はメロンソーダを、ふみちゃんはホットの紅茶を手にして席へ戻る。


「それにしても、あっちゃんはいつもこんな感じでほかの人とお料理を分けて食べたりしているの?」


「そうだなぁ。

 お母さんとか、クラスメイトとボウリングに行ったときとかこんな感じだったね」


「ふうん、納得。

 妙に手馴れてるとおもったよ」


「まあ、大きいサイズを頼んで分けて食べた方が安く済むしね」


「あっちゃんって変なとこで貧乏性だよね」


「あー、そうかも」


 そんな話をしていたら野菜ときのこのピザにイタリアンサラダが来た。


「まあ、何はともあれ食べようか」


「うん、いただきます」


「いただきます」


 そしてふみちゃんはニヘっと笑って言った。


「こうやって一つのお皿で取り分けて食べると私達って、仲のいいカップルみたいだよね」


「ん、確かにそう見えるかもな」


「うれしい?」


「まあ、ふみちゃんみたいな可愛い女の子と、そう思われて悪い気はしないよ」


「んふふ、正直でよろしい」


 そんなバカップルみたいな会話をしながら料理を食べ終える。


「さて、じゃあそろそろ帰ろうか。

 ふみちゃんも部屋の整理しないとだろうし」


「あ、すっかり忘れてた……」


 という訳でサイデで昼食を一緒に食った後は、家に帰って俺はふみちゃんの部屋の片付けが今日中に終わることを祈りながら、月曜日の予習をして日曜日は終わったのだった。

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