第56話 東雲さんにデートはどこがいいのか聞いたらお任せだからちゃんと考えることって言われたよ。

 さて、みんなで集まっての勉強会とその様子の撮影は無事に終わった。


 まあ、東雲しののめさんと中垣内なかがいとにテストが終わったらデートしろと言われたのは予想外だったけどな。


 それはともかく脅迫状の件があるので、みんなには家族に車で迎えに来てもらっているが、元凶である羽賀がこの世界から消えているから実際には何かが起こることはもうないだろう。


 とはいえ、脅迫状だけでなく、ボディーアーマーや催涙スプレーも残ったままなので、羽賀に関連してあいつの行ったことが、すべてなかったことになった訳ではないようでもあるが。


 で、まあ俺は電車で家に帰る途中に、東雲しののめさんへ、SNSメッセージを送る。


東雲しののめさんは、デートで行きたい、具体的な場所とかある?』


 俺がそうメッセージを送ると東雲しののめさんからは返信はすぐに帰ってきた。


『秦ぴっぴ、それに正直に答えて、実際のデートの場所がそこになっちゃったらつまらないじゃーん』


『まあ、たしかに。

 それもそうか』


『それにさ、たとえばぁ。

 TDSトウキョウディスティニーシードのミラーコースターホテルにお泊りしてから、シードで、ナイトパレードまでの、一日デートがいいとかあたしが言い出したらどうするの?』


『そんなお金のかかる女とは付き合えません、今すぐ別れてくださいって言うね』


『うわー、そこは頑張ってほしいとこっしょ』


『ミラーコースターって安くて一泊6万円から、高ければ一泊50万円だろ?

 高校生男子がほいほいとデートで使えるような場所じゃないって』


『まあ、そんなことはあたしもわかってるし。

 だから、あたしと秦ぴっぴが両方とも一日ちゃんと楽しめそうなデートの計画を立ててくれれば、うるさいことは言わないっしょ』


『それってさ』


『ん?

 なになに』


『デートで何が食べたいって言って、何でもいいって言われて選んだ店が気に入らなくって、あたしは別の店がよかったのにー、とか言われちゃうパターンだったりしない?』


『だーかーらー、あたしはそんなめんどくさい女に見える?』


『いや、見えないけど』


『秦ぴっぴはさ、いろいろ物をよく見てると思うけど。

 それでも、やっぱり見えてないことも結構多いとも、あたしは思うよ』


『ん、そう感じてるならごめん』


『なんで謝ってるの』


『ん、いや、俺って東雲しののめさんを、ぞんざいに扱ってるように思われていたのかなって思ってさ』


『ぞんざいっていうか……なんかあたしって、ほかの女の子のために、便利に使われてる気がしたのは事実だよ』


 ……まあ確かにそれは否めないかもしれない。


 特に南木なみきさんを俺たちのグループの加えるために、東雲しののめさんには大きな負担をかけてたのも事実だと思うしな。


『ああ、東雲しののめさん。

 本当にいままでごめんな』


『わかればよろしい』


『うわー、そこまで言われると、それはそれでちょっとと思うんだが。

 まあ、デートは東雲しののめさんが絶対満足できるプランを練るから、中間テストで全教科60点以上取れるように頑張ってな』


『うん、頑張るっしょ』


『じゃな』


『じゃね』


 東雲しののめさんがこんなことを感じていたなんてな。


 俺はなるべく公平に接しているつもりだったんだが、実際にはそう感じない子もいて当然なのだろう。


 ともかく東雲しののめさんには今までの恩返しも含めて満足してもらえるようにしないとな。


 東雲しののめさんはみんなでいったカラオケとかボウリングはちゃんと楽しんでいたみたいだから人が多そうなところでも問題はなさそうだけども、どうするかな……。


 あまり遠くなくて、あまり金がかからなそうで俺と東雲しののめさんが両方とも楽しめそうな場所というと……東京スカイタワーとスカイタウンを中心にして時間があれば、浅草近辺に足を延ばすとかいいかもしれないな。


 あそこなら東京スカイタワーと隅田水族館だけでも十分時間はつぶせると思うし、そこまで金もかからないはずだし。

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