第53話 なんだかいろいろとおかしくなっている気がするが気のせいか?まあ学校生活は変わらないみたいだが
さて、羽賀に襲われた翌朝、目が覚めた俺は何か違和感のようなものを覚えた。
部屋がいつもより暗い気がするのだ。
いったいなぜなのか? とカーテンを開けてみたら、その理由がわかった。
俺の家は一軒家で、俺の部屋は2階にあり、隣は月極駐車場だったはずなのだが、そこに新しい建売住宅が建てられていたのであった。
あちらも2階建てなので、それで朝日が建物にさえぎられてしまい、暗くもなるはずではある。
隣は駐車場だったような気がするのだが、そういえば2月か3月くらいから、建築工事が始まっていたような気もする。
セキスイホームやトヨタハイムなどのプレハブ系建売メーカーだと、工事開始から1.5ヶ月~2ヶ月で家が建つはずだしな。
だが、なんとなく気になった俺は朝ごはんの時にお母さんに聞いてみた。
「お母さん、うちの家の隣って駐車場じゃなかったっけ?」
俺がそう聞くとお母さんは少し苦笑していった。
「確かに前は駐車場だったけど、2月の終わりくらいから工事は始まっていたでしょう?」
「そう言われてみれば、最近はこの辺り駐車場をつぶして、家を建てるの増えてたっけ」
「そうみたいよ」
確かに以前は月極駐車場だったところを、コインパーキングにしたり、コインパーキングをつぶしてそこに家を建てることが増えていたりはするようだ。
昔と違い駐車場のついたマンションや一戸建ての建売が増え、しかもマイカーを持たない人間も増えたことで、駐車場はあまりもうからず、そのスペースに家を建てて売ってしまった方が、税金対策としてもいいという風になってしまっているみたいだしな。
コインパーキングも競争が激しすぎて、あまりもうからないようだし。
しかし、これって
そしてなんとなく見た、テレビに映っていたニュースを見て、俺は吹き出しそうになった。
「本日、一夫多妻法、通称ハーレム法が施行されました。
日本政府は歯止めがかからない少子化の対策のためこの法案を強引に成立させました。
ですが、25歳以下の日本人男性には公的に4名までの、さらに正当な理由があれば5人以上の妻を持ってもよいとされている、この法案に対しては賛否両論があります」
まあ、賛否両論は当然出るだろうな。
「この際、結婚した25歳以下の家族には一人当たり毎月10万円の補助金が支給されます。
もちろんその際はケースワーカーによる観察や聞き取りなどが行われますし、不倫行為に対しては厳罰が適用されることになります」
一人当たり10万円の補助? それまじなのか?
そして不倫するくらいならちゃんと結婚しろってことか。
「なお、複数人の妻を持つときにはそれぞれお互いの承認が必要です。
また、それぞれの妻の間の扱いには差異を設けることは決して許されません。
居住スペースは全く同じでなければいけません。
また一緒にいる時間や食事の内容などに差があることも一切認められません。
もし差別があると妻の一人がみなし裁判所に訴え出た場合は、離婚の申し立てとともに賠償や養育費の支払い責任を負うことになります」
おおう、これってイスラムのハーレム結婚制度を日本へ持ってきたのか?
以前から 夫婦の所得の合計額が340万円未満の世帯で、婚姻日における年齢が夫婦ともに34歳以下の世帯には30万円の補助を出すとかはあったんだがあまり効果はなかったんで大きく改善したのかもしれないが………。
ハーレムというと男にとってウハウハのように聞こえ、女性が蔑視されているように見えるが、実際はそうでもない。
風俗店で働いていた俺にはそのあたりよく分かるが、女性が多数の中に男が一人で可能な限り平等に扱わないといけないとなると、それは非常にきついのだ。
なので、中東を中心としたイスラム教徒やアフリカのような一夫多妻が法律で認められている国々やミャンマーやロシアのように、一夫多妻制は違法だが犯罪には問われない国でも、実際に複数の妻を持つケースは、多くて1割、平均だと3%程度しか複数の妻を持っているわけではないらしい。
まあ、一番最初に結婚した第一夫人が一番えらいとはされるが、夫はそのあと第二夫人をめとるとき、第一夫人にお伺いをたて、許諾されないといけない。
もっとも、それはいやだからと拒否できるとも限らないみたいだけどな。
また妻に対して全員に同じ大きさの家を与えなきゃいけうえに、外食するときも食べるものは公平でないといけないし、第二夫人の家に寝泊まりしたら、第一夫人のもとへも平等に寝泊りしていかなければならないので、第一夫人とのやり取りが面倒くさいから第二夫人は取らないという男側の意見も多いらしい。
一夫多妻と聞くと、女性蔑視のように思われるかもしれないのだが、実際には男性のほうが厳しい制度だったりするんだ。
逆にアメリカなどでは、
「この法律の施行を受けて、政府は大学生や高校生の男子に対しての恋愛を推奨するとも発表しています」
おいおい……日本政府は本気かつ正気かよ。
まあ、朝っぱらからそんな事はあったが、いつものように学校へ俺は登校する。
それはともかく、ハーレム法が施行されたからと言って、街の雰囲気が大きく変わるわけでもなく、複数の女を侍らせている男が目につくようになったとかは特にない。
そしてクラスに到着した俺は、いつもどおりクラスメイト全体に挨拶をしたあと、集まってるいつものメンバーにも挨拶をする。
「
昨日は特に何もなかったかな?」
俺がそういうと
「はい、お母さんに迎えに来てもらったこともあって、私の方は特に何もありませんでした」
ふむ、みんなに脅迫状を見せて、家族に迎えに来てもらい、車で帰ったという事実は消えてないみたいだな。
しかし、前の席にいたはずの羽賀の姿はなく、そこに誰もいない事を気にかけているメンバーもいないよいうだ。
ついでに言えば、クラスメイトの女子の視線が俺に対して妙に生暖かいような気がする。
俺がやっていること自体はいつもと変わらないはずなんだけどな……。
ただ少し気にかかるのは、そもそも俺の隣の席の女の子は”前”でも
ぶっちゃけ”前”は会話とかも全然しなかったから、全然覚えていないのも事実なんだが、斎藤とか進藤とかといったもっとありきたりな名前だったような気もするんだ。
俺がやり直しているのは本当に”前”と同じ過去なのか少し疑問だったのだが、少なくともハーレム法の成立なんてのはなかった。
羽賀と俺の存在がこの過去世界を大きく変えてしまっているのか?
あの
人類が滅亡してしまった世界で、肉体を失って概念的存在になってすら消滅することも許されず、50億年以上の時間をかけて、人類を再び生み出すことを強制させられていた人物がいたように思うが……まさかな。
それはともかく昨日は脅迫状の件もあって、家庭科部の部活動はサボってしまったし、勉強の遅れを取り戻したほうがいいか。
「
俺がそうきくと
「そんなの当然無理に決まってるっしょ」
「まあ、そりゃそうだよな」
「それなら今後は火曜日と木曜日の動画撮影の勉強会に
何なら
そういうと
「私も勉強会に参加していいのですか?」
「人が増えても手間は、多分そこまで変わらないからね。
むしろ得意な教科を苦手な人に教えたほうが勉強が捗ると思うし」
「なら、私も参加したいです」
そして
「僕もです」
広瀬くんはというと。
「ごめん、僕は塾通いがあるから無理だ」
そしてその後に苦笑しながら小さくなにかつぶやいたようだ。
「流石にそこの空間に入り込める度胸はないしね」
そして俺はみんなにいう。
「まあ勉強会が終わったら家族に迎えに来てもらうのは昨日と一緒。
まあ、多分ただの悪戯なんじゃないかとは思うけどな」
実際には脅迫状を書いた羽賀は消えてしまって、どうもその存在は最初からいないものとされてしまっているようなので、結局誰かのいたずらとしてなにもないまま終わるだろう。
羽賀にレイプされていた幼馴染の女の子も、羽賀が消えたことで、その事実自体がなくなって、きっと今は平穏な生活を送ってるんじゃないかな。
多分だけど。
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