第27話 南木さんを皆と一緒に遊ぶように誘ってみたよ

 さて、ベーグルの調理も無事成功して、みんなで2個ずつおいしくいただくことができた。


 家庭科部の部活動は順調だな。


 そして、その翌日だが、俺はいつものメンバーである俺、広瀬君、剛力君、西海枝さいかちさん、東雲しののめさんがそろったところで、いったん会話を中止して、皆に言った。


「あ、みんなちょっと待っていてくれるかな?」


 俺がそういうと東雲しののめさんが首を傾げた。


「ん、どしたの?」


「ん、ちょっとみんなに提案したいことがってさ」


 そして俺はぽつんと席に座っている南木なみきさんのもとへ行って、彼女へ声をかけた。


「南木さん。

 ちょっと話があるんだけど一緒に来てもらえる?」


 俺がそう声をかけると慌てたように彼女は答えた。


「え、あ、はい、いいですよ」


 というわけで、俺は南木さんを連れて自分の席へ戻って言う。


「今度の日曜日だけどさ。

 みんなに予定が特になければ、このメンバーでオーランで遊んで、親睦を深めたいと思うんだけどどうかな?」


 オーランはオールラウンドワンのことでボウリングやゲームセンター、カラオケ、バッティング、アーチェリー、ダーツ、ビリヤードなんか等が一か所で楽しめる、複合型のレジャー施設。


 高校生・大学生などの学生からファミリーまで手ごろな金額で一日中、手軽に遊べる人気の場所だ。


 俺はそういうとまず東雲しののめさんが答えた。


「あたしは日曜日、ダイジョブだよー。

 みんなでわいわいいろいろ遊ぶのっていいよね」


 そして西海枝さいかちさんも言う。


「私も大丈夫です。

 前回のカラオケはいけなかったので、ぜひご一緒させてください」


 そして広瀬君と剛力君も。


「ああ、僕は大丈夫だよ」


「僕も大丈夫です。

 みんな集まって遊べるのはうれしいですよね」


 で、最後は南木なみきさんだけど……。


「あ、あの、私も混ざっていいんでしょうか?」


 その言葉に俺は彼女の不安を解消するためにも笑顔でうなずく。


「うん、むしろみんなぜひ仲良くなりたいと思ってると思うよ。

 まあ俺と、東雲しののめさん、剛力君はカラオケで一緒に遊んだけどね」


「あ、じゃあぜひとも、お願いします」


 南木なみきさんは、かなりな美人で学校でも上位に入ると思う。


 こういうルックスのいい人は、みなコミュ力が高そうに見えるのだが、実はかならずしもそうではなかったりもする。


 で、そういう場合はなんでこんなダメな奴にという男に引っかかったりするわけで、孤立気味で不安なところを、優しくされるところりと行ってしまうことが多いってことだな。


 宗教や霊感商法に引っ掛かったりすることが多いのもこのタイプだ。


 こういうタイプの女の子には優しさや包容力を見せ、相談に乗りつつ安心させて、不安を解消してあげるのが、実際に効果的で、そうすれば依存されることも多いのだ。


 あとは空気を壊すような発言や態度をあまり取らない女性や優柔不断な女性は押しに弱いことが多いが、意外とギャル系はこれだったりする。


 こういう場合は少し強気でごり押しした方がよかったりする。


 そういったことを感じ取って的確に行動すれば、デートしたり、ホテルへ行ったりするのは、実はさほど難しくはない。


 むろんこういったことをするためには、観察力やコミュニケーション能力を磨いたり、面の皮の厚さを身に着ける必要は当然あるけどな。


 のだが……俺は同級生相手にそういったことをやりたいわけではないし、どうすればこうなると結果が分かり切ったことをしてもつまらない。


 そもそも、他人を意のままに動かすことに快楽を感じるサイコパスでもない。


 南木なみきさんには、同性とのコミュニケーションに慣れてもらい、もっと自信をもって学園生活を送ってほしいのだ。


「じゃあ、今度の日曜日に駅前に9時集合してシャトルバスでオーランに行こうぜ」


「うん、了解」


「わかりました」


「了解、駅前に9時だね」


「楽しみだねー」


「そ、そうですね」


 皆がうなずいてくれたので今度の日曜日のスケジュールは決まった。


「じゃあ日曜日、楽しみにしてるからよろしくな」


 というわけで、俺たちのグループに南木なみきさんを加えることに成功したと思う。


 後は東雲しののめさんや西海枝さいかちさんなどの、同性とのコミュニケーションに慣れてくれれば、周りの同性からの嫉妬や悪意も薄れるんじゃないかな?


 そのためには、誰にでも物怖じしないように見える東雲しののめさんが、大事な役割を果たしてくれるのではないかと俺は思っている。

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