第5話 ~side 西梅枝絵里~
私は中学生の時ものすごく地味で大人しい、いわゆる陰キャラでした。
けっこう人見知りもしていたし、コミュ障で会話が続かないことが多い子だったのです。
そんな感じだったから友達は全くいないわけではないけど、同じように地味でまじめっぽい雰囲気の子と少ししゃべるくらいしかできなかったのですね。
そんな感じだったから会話が弾むなんてことなかったのです。
でも、高校入ってもこのまま地味で全く目立たなくってほとんど会話できる相手がいない生活を送るなんていや…。
そのためにスマホで高校デビューする方法を検索したら、そのためにはかわいく見えるように髪型や制服の着方にこだわるのと一緒に自分の理想に近い女子と仲良くなって友達の真似をしたり、なるべく毎日男子と話すようにした方がいいと書いてありました。
さっそく私はなけなしのお小遣いを握りしめて美容室へ行って、私に似合うかわいらしい髪型をお願いしたら確かに今までとはイメージが大きく変わりました。
今までの堅苦しい雰囲気が少し緩くなったように見えたのは間違いないです。
これなら明るい自分に変わることができるかも?
それから高校に入ったら見知った人はいないから、知らない人を怖がらないようにしていかないとね。
そうしたらまずは隣の席の人と話をすることから始めてみようかな。
でも、話しづらそうな人だったらどうしよう……。
そんなことを考えながら私は自分のクラスである1年1組に向かい、自分の席を見つけてそこに座りました。
みんな話しかけたりしづらいのか微妙な空気が漂っていますね。
そこへ一人の男の子が教室へ入ってきました。
彼はニコリと笑って挨拶をしたのです。
「皆さんおはようございます」
彼が笑顔で挨拶をしてくれたことで教室の空気が少し和らいだ気がしました。
そうだ焦らなくて大丈夫、笑顔であいさつから始めてみればよかったんだ。
そして挨拶をした彼は私の横に座ったのです。
この人なら話しかけやすそう。
そう思った私は彼に挨拶と自己紹介をしてみました。
「あ、はじめまして。
私、
西の梅の枝ってかいて”さいかち”です」
私がそう言うと彼は笑顔で挨拶をし返してくれました。
「へえ、珍しい苗字だね。
俺は
苗字はアーティストのハタ坊と同じやつだ、よろしくな
「はい、隣が話しかけやすそうな人でよかったです」
「こちらこそ話しかけてもらえて助かったよ。
俺から女の子に話しかけると下心がありそうに思われるかもしれないしさ」
秦君はそういってるけどそんな感じは全然しない。
だから私は笑顔で言えました。
「秦君なら、大丈夫ですよ」
うん、隣が話しやすそうな人で良かった。
秦君はすごく落ち着いてるし、緊張もしていないように見えます。
だからこそ私も話しかけることができたんでしょう。
そして翌日の放課後、私は部活動をどうするか決めていなかったので、秦君に聞いてみたら彼は家庭科部に入りたいってちょっと意外な答えが返ってきました。
たしかに意外だけどなんとなく似合っている気もするから不思議。
ちょっと聞いてみたら秦君家事とかはかなり得意みたいでびっくりしちゃった。
その翌日に家庭科部の部活見学に行ったら、先輩たちがお菓子を作ろうって話になって、そこで秦君は先輩二人に負けないホワイトロールケーキを作ってしまったからまたまたびっくりしちゃいました。
なんでも秦君のお母さんがパンとかケーキを作るの好きだから「覚えちゃった」って言っていたけどすごいよ。
出来上がったロールケーキをカットして見栄えが良くなるように皿に盛りつけてくれたので、女子はみんなでスマホでそれを撮影してインスタに上げてみたけどどうかな?
結構インスタ映えしてると思うんだけど。
そして私と秦君は二人で家庭科部に入部することになったから私も頑張ってレシピを覚えないと。
そしてさらに翌日。
今日は少し髪型を変えておこうかなと思って、洗面所の鏡でハーフアップにしていたら妹にぼそっと言われちゃった。
「お姉ちゃんも私も地味顔なんだからちょっと髪型変えたところで変わんないって」
それに対して私は……。
「か、変わるよ。
髪型をちょっと変えるだけでも、気分が違うし、以前とは違う自分になれるんだよ」
「んー、確かに去年よりなんか明るくなったっていうか……なんか色気づいたって感じ?
気になる男の人でもできたの?」
「き、気になるっていうか……」
妹とはからかうようにニシシと笑って言いました。
「じゃあ頑張んなよ。
女は恋をするときれいになるって言うし」
「恋……なんていうにはまだまだ早いと思うけど、でもなんていうかすごく安心できるんだよね。
一緒にいると」
「はいはい、朝から惚気きかされるのはきついよー」
秦君は優しいし、頼りがいのある男の子だと思う。
でもそれは私だからってわけでもないと思うのですよね。
今日、私が髪型を変えたことに彼は気がついてくれるかな?
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