470 北区教会
「クロエちゃん今日もおいちいご飯でちゅよー。はいあーん」
クロエがイヤイヤしたんだ。
「自分で食べるの」
「!」
「!」
「!」
「そっか。えらいぞクロエちゃん!」
少しずつ食事も自分で摂れるようになってきたんだ。
「お風呂はどうしまちゅかクロエちゃん。1人で入れますか?」
「お兄ちゃんと一緒がいい」
「そうでちゅか!じゃあお兄ちゃんと一緒にお風呂に行きまちょうね」
コクコク
「寝るのはどうしますか?そろそろ1人で寝れますか?」
「うううん。お兄ちゃんと一緒がいい」
「そうですか!じゃあ今日もお兄ちゃんと一緒に寝ましょうね」
コクコク
「アレク。あんた一歩間違えたら変態さね」
「そうよ!バブーシュカの言うとおりよ!」
「俺モソウオモウ」
「なんで変態なんだよ!クロエは子どもなんだぞ!妹だぞ!」
「じゃああんたアリサ様と風呂に入れるかい?」
「そ、そ、それは入れるわけないだろ!」
(こいつ顔が紅くなってるわ。キショ!)
「バブーシュカなんで私がこんな変態とお風呂に入らなきゃいけないのよ!」
「ヒッヒッヒ」
「変態変態って言うな!
変態ってのはなあ鼻の穴が膨らんで顔がモロに変態みたいな顔するやつのことだ!
あと鼻血とか出す奴のことなんだぞ!」
「アレク‥‥あんたやけに詳しいさねヒッヒッヒ」
「な、なんだよバブ婆ちゃん」
「なんでもないさねヒッヒッヒ。
それともあんたあたしと風呂に入るかい?」
「絶対入んねーよ!」
どんどんクロエはよくなってきたんだ。簡単な意思表示なら言葉を発するようになってきたしな。
▼
俺に挑んでくる生徒は1日に1人か1組になってきた。
「団長今日はお昼に6年3組が1度に8人です」
「やったっす。今日のノルマ達成っす!」
ノルマってなんなんだよ!
多数と闘る日はハチが大喜びしていた。
それでもジリ貧なのは間違いない。
これはいよいよ教室巡業をしなきゃいけないのかもしれないな。
「(ドン様やっぱりどっかの教室をまるごと‥‥)」
「(そうだなオギン)」
【 6年10組モブside 】
「3組の奴ら8人がかりでもやられたってよ」
「どうするよ?」
「3年に屈服なんてできるか!
このまま言いなりになるなんて気が収まらねーよ!」
「でもよ。このままじゃホントにあのアレクって奴の下につくしかないぞ」
「「「どうするよ?」」」
「ちょっと待てや。俺にいい考えがある」
【 ドンside 】
狂犬団の会議で決まった方針に基づき、各区の教会とその付近の貧民街の調査に幹部連中が動きだしたんだ。
さすが団長だよ。俺たちの活動もちゃんとみてくれてたんだな。
この帝都学園に来てからの俺はなんの目標も見出せなかった。
帝国屈指の強さを誇る学園といえど幸いトンと2人なら同い年で俺たちに叶う奴はいなかった。
それでも何かに満たされぬ思いはずっとあったんだ。憧れるくらいに強い奴と闘いたいって。
そしたら団長がいたんだ。この人は同い年というのに全校生徒の前で宣戦布告をしやがった。誰でもかかってこいって。
そして団長は言葉どおりに圧倒的に強かった。
教室で完膚なきまでやられたんだ。恥ずかしくも小便をもらしたんだ。殺されるって思った。
だけど団長はそんな俺たちに優しかったんだ。海洋諸国の未成年者No.1のキム・アイランドを兄と慕う理由は正直まだわからない。
だけど団長が慕うんならそれだけの理由があると思うんだ。
今は団長の覇道の旅を手伝っていきたい。
できればずっと。
俺たちは今北区の貧民街にある教会に来ている。
「ドン兄ちゃん北区の教会は初めてくるね」
「ああトン」
教会の全容が見えてきた。ん?派手じゃないかここ。
「兄ちゃんここって‥‥」
「ああ‥‥」
貧民街にあるというのに小綺麗な、いや拝金趣味を窺わせる無駄な造形美が目につく。
これは無償の愛を謳う教会には似つかわしくな。
「ドン様トン様、北区の教会は鍛冶屋街と貧民街に1つづつ。
貧民街の教会からはあまりいい話は聞きませんよ」
俺たち兄弟にずっとついてきてくれるギンの報告だ。
ギンは帝国内にいる一族の草の連絡係もしている。
「そうかおギン」
帝都スタッズの居住区アポロの北区は大きく分けて鍛冶屋街と庶民街に分けられている。
貧民街は鍛冶屋街と庶民街の間。2本の川に挟まれた間にある。
俺たち海洋諸国で言えばデグーのグランドみたいなもんだな。
ここは南区の貧民街ほど悪臭はしない。庶民街に近いからだろうか。
その代わりといってはなんだけど庶民街の住人からも鍛冶屋街の住人からも差別を受けている印象が強い。
ここの教会は増え続ける貧民街の住民のために先代皇帝の指示で建てられたものだ。
それなのに。悪い噂を聞くっていう意味がわからないが。
教会には先ぶれを出しておいた。
が、まさかこんな応対をされるとはまったくの想定外だった。
「なんだ学園生から話があるとは聞いていたが‥‥お前たちは海洋諸国民か?」
「はい神父様。海洋諸国から帝都学園に留学しています」
「フン。女神様もよくこんな卑しい奴らにも平等などと宣うたもんよ。で用はなんだ?」
「神父様何かお困りのことはありませんか?
今後学園生の有志でお手伝いをしたいと思いますが」
「それはお前ら海洋諸国人がということか?」
「海洋諸国人だけではありませんが、まあ俺たち海洋諸国人も多くいます」
「フン。で目的はなんだ?金か?金なら出さんぞ!海洋諸国人は子どもまで金集めに使うようになったのか!」
「いえ神父様。私たちは貧民街の人やその子どもたちのために何か役立つことができればと思い、その相談に来ました」
「そうか。金の無心じゃないんだな」
「はい」
「じゃあな小汚いガキどもをどこかへやってくれ。そうだな掃き溜めは掃き溜めらしくこの北区から南区へ追いやってくれると助かるな」
「神父様先ほどからお聞きしているとそのお考えは女神様の教義とはあまりにもかけ離れたものかと」
「ん?なんだ?かけ離れてたらどうする?騎士団にでも訴えるか?」
「いえ‥‥」
「そうだろ。学園生とはいえ誰もお前ら海洋諸国人の言うことなんぞ聞くもんか」
「ですが神父様」
「あーもういい!時間の無駄だ。とっとと失せろ」
「(兄ちゃんあいつ‥‥)」
「(我慢しろトン)」
「ドン様‥‥草によればこの神父からはあまりよくない噂もあるようです。しかも海洋諸国人たる我らバガス一族へのあの態度‥‥すぐにでも始末してやりますか?」
「ならんぞおギン。わかりきったことだ。ただそれが神父様だったいうことだけだ」
「くっ‥‥」
「兄ちゃん団長に相談したら?」
「いやまだだ。俺たちだけでやるぞ。何もできなくなるまではな」
「「「はい!」」」
ーーーーーーーーーーーーーー
この北区の貧民街に。
人族と山猫獣人のミックスの兄妹がいた。
山猫獣人である父親はダンジョンに潜ったままこの1年帰ってこない。
病弱な人族の母親はこの1年ほぼ病床にあった。
兄6歳妹3歳。
もちろん学校には行っていない。
「お兄ちゃんお腹が空いたにゃ」
「我慢しろ。週末は教会で炊き出しがある。それまでは水を飲んで我慢するしかない」
「うん」
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