469 狂犬団会議



 「団員も順調に増えてるっすねー」


 「ハチ今何人だっけ?」


 「500人をちょっと超えたくらいっすよ」


 「順調ですね」


 「「「うんうん」」」



 正式に部活動と認められた狂犬団の部室で話す俺たち幹部連10人だ。

 男女問わず学年問わずの仲間たちだ。


 「でもさ最初のころみたく歩けば誰かが寄ってきて闘うことなくなったじゃん?」


 「そう言われればたしかにそうですね」


 「最初はトンが時間と場所決めてたもんな」


 「ええ。希望者が多過ぎて最大1日5戦までって決めてましたからね」


 「なんかさ最近避けられてるっていうかさ‥‥」


 「そりゃそうでしょ。団長闘る奴闘る奴全部ワンパンでのしてるんですもん」


 「もっとさ確実に数増やしたいんだよね俺」


 「「「うんうん」」」


 「じゃあ順番に教室回ったらどうっすかね」


 「なんて言うんだよ?」


 「狂犬団に入らないと痛い目に遭うぞとか?」


 「殴りこみとか?」


 「それこそ狂犬じゃねぇか」


 「「「うーん‥‥」」」


 「「「困ったなぁ〜」」」



 実際そうなのである。最初のころみたくかかってこいって言う単純な挑発にのってくる奴は確実に減っているんだよね。


 そんな血の気の多い奴は減ったけど全学園生徒数3,000人ちょっとから500引いたら単純にまだ2,500人残ってる。

 だからドントン兄弟が言う「覇道」じゃないけど、まだまだ道半ばなんだよね。



 「それとさ。お前らに聞きたいけど『狂犬団』ってなんもしてねぇじゃん?」


 「えっ?団長のあとについて練り歩いてますよ?」


 お祭りの行列かよ!


 「僕リストバンド配ってます!」


 「私名簿作ってます!」


 「「私(僕)団長の応援してます!」」








 「あのな‥‥なんかしようぜ」


 「「「なんかってなにを?」」」


 「いやだからなんかだよ!」


 「金儲けとか?」


 「別に金なんか欲しかねーよ!」


 「そりゃ団長だけっすよ!」


 「「「そうよ(そうだ)!」」」


 「団長金銭感覚がズレてるっていうか金ありすぎなんですよ!」


 「そうなのかぁ?俺別に買いたいものないし」


 「「でたー!金持ちのいうセリフだよ!」」


 「「「だよなー」」」



 狂犬団の連中は俺がアレク工房の大元だってことや俺のためにミカサ商会が帝都にやってきたことまで知ってるんだ。


 「じゃあお前らは欲しいものはあるのかよ?」


 「えー私はオシャレな制服がほしいな」


 「私もー」


 「制服!

 いーじゃんそれ!俺も制服着たいんだよね。毎日服変えなくてもいいし」


 「隊長って強いけど正直オシャレじゃないですもんね」


 「えっ?!」


 女の子の隊員がそう言ったんだ。それは他のやつらにも伝播した。


 「「うんうん。たしかにそうだよな」」


 「「だな。いっつも同じ服着てるし」」


 「「だよなー」」


 ドンとトンが頷いてやがる。

 くそっ!

 こいつら‥‥たしかに小綺麗な格好してるもんな。そういやみんなもダサくないよな。


 「でもさでもさ。服は汚くなきゃそれでいいんじゃね?」


 俺バブ婆ちゃんが洗ってくれてる服2着を交互に着てるし。


 「よくないっす。それはモテない君典型のセリフっす」


 「なんだよハチ!」


 「「「だな」」」


 ガビーン!

 やっぱり俺はダサいのかよ!


 「じゃあさ制服着てたらいいのかな?」


 「そうですね。たしかに制服なら基本ダサくは見えませんね」


 「海軍の白い正装とかカッコよくない?」


 「「ああたしかに」」


 「あれはカッコいいですね」


 「陸軍の軍服はダサいけど海軍の白い制服はカッコいいっすね」


 世界は変わっても海軍の制服がカッコいいのは共通認識のようだ。


 「じゃあ俺らの制服作ろうよ」


 「やった!団長の奢りですか?」


 「別にいいけど」


 「「「おおー!」」」


 「却下だ」


 「「「なんでだよドン?」」」


 「それじゃあダメなんだよ。そうですよね団長?」


 「うん‥‥」


 「「「??」」」


 「貰った金じゃなくて自分たちで稼いだ金で作るから愛着が湧くんっすよね」


 「うん」


 「「「おおーっ!」」」


 「じゃあさ。お金ができたら私ん家服屋だから安く作ってもらえるようにお父さんに話すわ」


 「「「いーなそれ!」」」


 「じゃあ制服作るための資金を作ろうぜ!」


 「「「おおー!」」」


 「で何する?」


 「「「うーむ‥‥」」」


 「魔獣狩って魔石を売るとか?」


 「1年や2年じゃ危ないじゃん」


 「「「だな‥‥」」」


 「ちなみに強い魔獣って隊長これまでにどんなやつ倒しました?」


 トンが聞くから正直に答えたよ。


 「うーん。死にかけたのはサスカッチとかバブルスライムかな。

 意外にめんどくさかったのは金のゴーレム。

 オークは肉うまいし簡単に狩れるけど個体数がそれほど多くないんだよなぁ」


 「「「‥‥」」」















 「さてと。団長はほっといて現実的な話をしようぜ」


 「「「そうだな(そうね)」」」


 なんでだよ!俺も仲間に入れてくれよ!



 ここでハチがいいことを言ったんだ。


 「ドン先輩やトン先輩たち海洋諸国の先輩たちが教会の炊き出しを手伝ってるのにヒントがあるかもしれませんよ」


 「それってどう言う意味だよハチ?」


 「アンタ頭いいから何か考えてるんでしょ」


 「えーっとですね東西南北各区の貧民街の教会が今以上の機能を果たしたら貧困層は減るでしょ」


 「そりゃまあそうだな」


 「「「うんうん」」」


 「そしたら自然と貧しい子どもも減るし犯罪も減りますよね」


 「「「なるほど!」」」


 「幸い海洋諸国の先輩たちは各区の裏社会にも通じてますからね。

 納得しないゴロツキ共は狂犬団らしく力で排除すれば良いだけですよね」


 「「「そうだな」」」


 ドン、トン。あと海洋諸国のお前ら。顔が怖いって!

 でもたしかにそうだな。なんだかんだといって帝都学園生だから同世代の子たちの中では抜きん出て強いからな。

 その上狂犬団の連中は下手すりゃ並のゴロツキ共より血の気が多いし。とくに海洋諸国の奴らだけど。


 「4ヶ所に隊員を分けてなんかすれば同時に結果も生まれてきますよね」


 「「「だな(だね)」」」


 「弱いもん虐める奴らは力で屈服すればいいしな。狂犬団らしいちゃ狂犬団らしいよな。ねえ団長?」


 そっか。ゴロツキ共なら合法的に相手できるな。


 「クックック。だよな」


 「(ねぇ団長めっちゃ悪い顔してるよ)」


 「(しーっ)」


 「じゃあ制服を作る資金を得るためにまずは各区の貧民街の調査と問題点の洗い出し。金儲けの具体策はそらからだな」


 ドンが言った。


 「「「了解!」」」

 

 すげぇなこいつ。軍師みたいだな。


 「あーあまたあんたみんなにやってもらってるわね」


 そのとおりです。シルフィさん。





 実はこれが先々中原中に広がる国を跨いだ狂犬団という組織の源流になるんだ。

 このときはそんなふうになるなんってこと誰も考えてなかったんだけどね。


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