375 暗闇の予兆
帰省の報告をかねてシルカさんに新商品の相談(商談?)をしたんだ。
メイプルシロップ、リズ鍋、戦闘靴、リアカーなど。
「でね今から話すのが今回の1番重要な話なんだ」
「えーアレク君、メイプルシロップの話やゴムの話だけでもうお腹いっぱいって言うか私の頭の中がぐるぐるになっちゃいそうっスよ!」
「あはは。でもね今からの話はもっともっとすごい話だからね。ちなみにサンデーさんかミカサ会長にもすぐに相談したいくらいなんだ」
「ごくん。それってメイプルシロップみたいなもんっスか?」
「うううん。それ以上だね‥」
「マジっスか?!」
「マジ」
「‥‥」
「とにかくね、厨房借りるよ。シルカさんの今日の昼ごはんと夜の賄いは俺が作るからね」
そして俺は貴重な米を使って試食用のご飯を炊いたんだ。もうね、本当に試食用のご飯は少ないからシルカさんだけの分しか炊けないんだ。
白ご飯・卵かけご飯・カレーライス・おにぎり
今できるプレゼン用のお米最強ラインナップだね。
「従業員さんの分は作れなくてごめんね。もう試食用もわずかしかないんだ。ただカレーだけは従業員さんの分もあるからあとでパンにあわせて食べてみて」
「かれえ?なんかわかんないけどごちそうさまっス」
「「「アレク君ごちそうさま!」」」
「私アレク君のご飯はとっても美味しいって聞いてたから楽しみだわ」
「「私もよ!」」
「あはは‥良かったデス」
3人の従業員さんがみんな喜んでいる。米を食べてもらえないのは申し訳ないけど。でも俺が作るものが美味しいって、そんな噂が広がってたとは知らなかったな。シンプルにうれしいな。
白ご飯には焼いた肉をのっけて食べてもらった。焼肉丼だね。
「うまいっスね。米は癖がない食べものなんっスね。私パンより好きかもしれないっス」
次いで卵かけご飯を食べてもらった。卵はアンナが面倒みてる産みたて卵だからね。
「これは!」
そう言ったきり無言でスプーンを掻き込み続けたシルカさんだ。
「めちゃくちゃうまいっス!」
「でしょー」
やっぱ卵かけご飯は最強だよな。
そしてカレーライスがシルカさんをさらに米の沼に追い込んだんだ。
「なんスかこれは!」
「カレー自体は従業員のみんなで食べてね。これはパンにも合うから」
「このかれえ。これもアレク君が作ったんスか?」
「ちょっとだけね。カレー自体はデニーホッパー村にナゴヤ村から新しく移民で来てくれたシシカバブ一家の郷土料理なんだ。めちゃくちゃうまいよね」
「うまいっス!米に合わせると最強っス!」
「あはは。でねこのカレーの素になる種、シシカバブ一家のお爺さんたちが言うには畠に種を撒いたら簡単に生えてくるそうだから」
「こんな美味しいものが?!」
「うん。カレー自体は素になる種をブレンドしてこの味にするんだけどね。種の栽培はうちの父さん、チャンおじさん、ニャンタおじさんに聞いてみて。畠はこの3人がやってくれるから。あとはカレーの素の作り方はシルカさんに伝えておくからうまいことやっといてね」
「これはすぐにアレク工房で登録するっス。こんなおいしい食べものは早く世の中にださねばっス!」
「でね今日1番のお願いって言うのはこのお米だよ」
「たしかにこの米はすごいっスよね。これはパン、麦を超えてもまるで不思議じゃないっス」
「だよね。それでねシルカさん、稲を栽培していく上でどこからも文句の言われない農地、土地がほしいんだ。それとまずは今年の秋に試験栽培分が収穫できるんだ。そこから来年以降増やしていく10年くらいの拡大計画を経てね、俺はいずれ麦を超える穀物になると思ってるよ」
「あり得るっス」
「うん。ただね‥」
「アレク君やっぱり‥」
「うん。去年シルカさんからも教えてもらったことに関連してるよ。この米は麦並に、いや多分麦以上に広がると思うんだ」
「私もそう思うっス!すごいっスね米は」
「うん。だからそれを1領主の力で制限させたくはないんだ。かと言ってヴィヨルドばかりに頼りきるのもまずいかなって。
この米は真っ当な農業をする農民が真っ当な値段でシルカさんたち商人に売り、真っ当な値段で領民にいや中原中の人に食べてもらいたいんだよ」
「アレク君!」
ギュッ!
シルカさんに抱きしめられた。えっ?俺なんか変なこと言ったかな?気持ちいいしシルカさんいい匂いだからいいんだけど。えへへ。
「今年はアレク君のやり方でいいと思うっス。でもその拡大計画?それは私だけじゃ決められないっス。これはサンデーさん、ミカサ会長、商業ギルド長にまで話すべきっス」
「わかったよ。今年はうちの村、のんのん村、ニールセン村とヴィヨルドの俺が畠で作る分のあわせて4箇所で試験栽培をするからね」
「収穫まではどんなスケジュールなんっスか?」
「春に植えて100日くらいかな。連作障害も無さそうだからね、麦が終わって米栽培って形ができると思うんだよね」
「単純に主食の収穫量が2倍になるんっスか!」
「うん。そう考えて間違いないと思うよ」
「やっぱりヴィンサンダー領だけではいろいろ問題があるでしょうね」
「たぶんね‥」
シルカさんとの打ち合わせ。あとはヴィンサンダー領領都学校の奨学金や学生寮に関して。俺のアレク工房から生まれる利益をそこに使ってほしいから、領都のケイト先生と連絡をとってほしいと伝えたんだ。あと時計の件もね。シルカさんからは快く引き受けてもらったよ。
「それからアレク君、ちょっとだけアレク君の耳に入れておきたいことがあるんっスけど‥」
シルカさんが変わらぬキュートな笑顔を浮かべながらも目元だけは真剣になったんだ。
なんだろう?
【 ◯◯◯ side 】
「話題のルーキーと言っても鉄級が3人だ。大したこっちゃない。予定どおり野党に扮して荷物をいただき、あとは皆殺しにすればいいさ。ああ。火矢は使うなよ。荷物が燃えたらもったいねぇからな。ああ‥‥そうだな。サンデーは金になるな。お前らも絶対殺すなよ。ミカサ商会からしこたまふんだくってやるからな。ギャッギャッギャッ。お頭‥‥?ああ‥‥。そんくらいはいいぞ。てめえらもそんくらいの楽しみがねぇとな。ただくどいようだが絶対に殺すなよ。舌を噛まれてもアレだからな。按配よく楽しめや。
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