245 閑話 デニーホッパー村の教会バザー
「串焼き完売でーす」
「デビル焼き(たこ焼き)ももうすぐ売り切れまーす」
子どもたちの屋台は大盛況。
教会バザーでの屋台運営。
上級生になればなるほど手慣れたものだ。
とはいえ、やはり押すな押すなの人出は年に1、2度のこと。
楽しくて忙しい、怒涛の1日ではある。
「ねーちゃん、串焼き10本と冷えたエールも3本追加な!」
「はいよーっス」
「こっちもエール2本!」
「はいよーっス」
「この村のツクネは他所より旨いよな」
「ああ、デニーホッパー村がツクネ発祥の村らしいぞ」
「それでうめえのか」
「このキーサッキーも旨いよなぁ」
「メンチ?これもうめよな」
「ああヴィヨルドの海のやつだろ?すげえよな、海のもんがこんな村の中で食えるんだから」
大忙しなのは大人も同じ。
村に拠点を構えるサンデー商会デニーホッパー店のシルカもまた、その店頭販売から隣接する居酒屋、宿泊施設の管理、臨時出店する他商会の管理に折衝と目の回る忙しさだ。
デニーホッパー村教会バザーの1日は、領内から集まる多くの他商会にはたまらなく魅力のある日となっていた。
そしてその折衝から配置等は、シルカがいなければまわらない様となっていた。
かっては「虎の威を借る狐」宜しく、祖父ミカサの威を借る小娘のサンデーと獣人小娘がいる田舎のデニーホッパー村店と揶揄する商会もいたのは事実。
だが、大人気のアレク工房諸製品の販売を筆頭に、ミカサ商会とサンデー商会の隆盛は広く王国中に知れ渡るようになっていた。
それはミカサ商会長の堅実な商才を継承して余りある孫娘サンデーの類稀な商才とそれを忠実に体現するシルカがあってこそ成り立つものだった。
いつしか小娘に獣人娘と軽口を叩く他商会の者はいなくなった。
そして多くの商会主が羨ましがるのは、ミカサ商会とサンデー商会に働く者たちの結束力だった。
「温泉ってのも楽しみだな。王都のギルドでも評判だったぞ。気持ちいいって」
「ああ、楽しみだなあ」
――――――――――――――
「今年も大成功じゃったな」
「ええディル神父様。アレク君にも見せたかったですね」
「ほんにのぉ」
デニーホッパー村1年の最大行事、教会バザーも大盛況の内、無事に終わった。
年々盛況となる教会バザー。
領都サウザニアからはもちろん、噂では国内の各領からもデニーホッパー村を目標にやってくる者も多々いるという。
なるほどと思わせるほど多くの善男善女が集まった教会バザーだった。
花火大会同様、バザーには近隣のニールセン村とのんのん村から多くの有志が手伝いに来てくれた。
もちろん花火大会の折にアレクが発現した村の宿泊施設に泊まりがけで。
両村とデニーホッパー村の関係は非常に良好である。
そんな隣村の人々からも人気を集める施設。
もちろんデニーホッパー村民からも人気なのは村内に湧き出る温泉である。
村民のみならず誰もが楽しみにしている温泉。
特に大きくなっていく村の中で、コミュニティの交流の場としても温泉は欠くことのできない場所となっていた。
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「神父様、今年のバザーもようございましたな」
「ディル神父様、領都に住む従兄弟が我が村を羨ましがっておりましたぞ」
「神父様」
「ディル神父さま」
村民の身近な喜びや悩みに耳を傾ける日々。
ディル神父自身も、1日の終わりに浸かる温泉の愉しみは日々の活力源となっていた。
――――――――――――――
教会バザーが終わって数日。日常が戻った、そんな夜半の温泉帰り。
教会の前に佇む大柄な男の姿があった。
「ディル副長」
「ん?スミスか?」
「はい。ご無沙汰致しております」
「どうした?なんぞあったか?」
「はい、実は‥‥」
人目を伏せるように私服で現れたのはスミス・シュナウゼン。領都サウザニアの騎士団長であった。
その昔、ディル神父が王都騎士団の副団長だった当時、幾度も稽古をつけたのがスミス・シュナウゼンだった。
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