184 2階層
地下2階層に入った。
先程の1階層と同じような草原だ。
でもよく見ればちょっぴり違う。植生からもう少し高地を登った感じかな。登るっていってもここ、地下階層なんだけどね。
なぜかなあ?
うん、理由を考えちゃダメだよね。
ここでもやはり石畳の通路から逸れないように進んで行く。
サクッ‥
サクッ‥
ギャギャ‥
左右の藪の中から微かに魔獣の声がする。おそらくゴブリンの一種、ゴブリンアーチャーだろう。
前方にも3、4体潜んでいそうだ。
「シルフィ?シンディ?」
「「ええアレク」」
2人とも頷く。
俺の索敵は合っているようだ。
俺は手を後方に開き、仲間に止まれとハンドサイン。
と同時に、おもむろに矢を番え、左右の藪の中を射る。
シュッ!
シュッ!
ギャーーーッ!
ギャーーーッ!
左右に潜んだ緑の藪と同系色に擬態をしたゴブリンが、ハッキリとした断末魔の叫び声を上げて倒れる。
手には簡素ながらも弓矢を携えているゴブリンアーチャーだ。
ガサガサッ
ギャギャギャギャーー!
ギャギャギャギャーー!
ギャギャギャギャーー!
同時に前方の藪からとびだしてきたゴブリン3体。
手には石の斧を携えている。
俺は弓矢の連射でこれを仕留める。
ヒュンッ! ギャッ!
ヒュンッ! ギャッ!
ヒュンッ! ギャッ!
聴くことに強く意識を保つようになったせいか、これまで以上に魔獣の位置や数も判ってきた気がする。なんとなくだけど気配も感じられるようになってきた。
よーし、このままもっとがんばるぞ!
「セーラ、障壁をもっと薄くコンパクトにできる?」
「はい?」
「そしたらさ、もっと楽に長く発現し続けるだろ?」
「やってみます」
「聖壁(ホーリーシールド)!」
セーラが両手を軽く上げて、障壁をコンパクトに加減しているみたいだ。
マリー先輩とシャンク先輩も笑顔でその様子を見ている。
マリー先輩にはゴブリンアーチャー如きの弓矢なんて当たらないだろうし、仮にシャンク先輩の肉厚な身体なら、ゴブリンの弓矢なんて当たっても大したことなさそうだ。
ここはやっぱりセーラの安全が何より担保されないとな。いずれは聖魔法でしか太刀打ちできなくなる魔獣との危険な闘いが訪れるだろうから。
限りある魔力の無駄遣いは避けなきゃいけない。
セーラの聖魔法の魔法障壁も、さらに薄くコンパクトに出来れば、魔力の節約に繋がる。強力な魔獣に遭うまでは障壁も節約モードにしてもらえるといいよな。
俺も矢尻用の鉄を多めに持ってきてるけど、うん、これからはもっと節約しよう。
射ったあとは矢を回収してこようかな。
植物魔法のクラフトも覚えたいんだよね。木の枝からそのまま弓矢ができたらさらに節約にもつながるし。誰か植物魔法使えないかな?
▼
ドッドッドッドッドッドッドッ‥
ワォーンワォーンワォーンワォーンワォーン・・・
「アレク、来るわ」
シルフィの索敵。
「判ったシルフィ」
「アレク後ろからも来るわ!」
シンディの索敵。
「判ったよ。シンディはマリー先輩について」
「判ったわ!」
「マリー先輩は後方正面からと、左からのブッシュウルフを。シャンク先輩はセーラを護ってください。セーラは姿勢を低く。前方及び右手は俺が闘ります」
「「「了解(です)!」」」
ドッドッドッドッ‥
ガウガウガウガウ‥
ドッドッドッドッ‥
ガウガウガウガウ‥
ブッシュウルフの襲来。今度は前後左右、全方位からの攻撃だ。
これもまた新パターン。
探索者を次の段階へ進化するよう促してるのかな。
総数30頭ほど。全方位から数の暴力。
数への対抗はやはり数だ。
俺1人で相手にするんじゃないよ。セーラを中央に守りつつ俺、マリー先輩、シャンク先輩の3人で全方向からの敵に対応だ。
矢を番えた俺は、右手の藪の中に潜んでいるゴブリンに向けて連射。
シュッ!
ギャッ!
シュッ!
ギャッ!
ゴブリンアーチャー2体を片付けて、憂いを排除。
ガウガウガウガウ‥
数を武器に、駆け寄ってくるブッシュウルフを迎え撃つ。
左と後ろはマリー先輩に任せたから、俺は前と右のみに集中すればいい。
それでも、今1度、意識を全方位に向ける。
聴力に集中。
うん、ゴブリンアーチャーなど潜んでいる魔獣はいないはずだ。
背の刀を抜き迎撃。
ガルルルッー!
ザンッ!
ギャンッ!
飛びかかってくるブッシュウルフを一刀両断に切り捨てる。
ガルルルッー!
ザンッ!
ギャンッ!
ガルルルッー!
ザンッ!
ギャンッ!
刀を振るう毎に倒れるブッシュウルフ。
目線はしっかり全体を視てるよ。
油断はしない。
ガァーッ!
セーラに向けて歯を剥いて飛びかかってくるブッシュウルフ。
「させないよ!」
ブンッ!
シャンク先輩、上からの爪一閃。
ギャンッ!
ブッシュウルフがぼろ雑巾のように切り捨てられた。
マリー先輩に迫るブッシュウルフ。
ガウガウガーッ!
ガウガウガーッ!
「エアカッター!」
ザクッ!ザクッ!ザクッ!
ギャッ‥ギャッ‥ギャッ‥
ギャッ‥ギャッ‥ギャッ‥
ギャッ‥ギャッ‥ギャッ‥
後方から駆け寄るブッシュウルフも、左から飛びかかるブッシュウルフも、その数10頭余りが。
マリー先輩を起点とする半円10mに近づくことなく、断末魔の叫びさえも許されず、カッターで切り離された紙のように裁断された。
「みんな大丈夫だよね?」
「ええ」
「うん」
「はい」
「行くよ」
タタタタタタターーッ
俺を先頭にみんなが小走りで先を急ぐ。
草原エリアの2階層が唐突に終わった。
またしても薄暗い回廊に突入だ。
でも、ちょっぴり安心だ。
回廊はある意味有利に闘える。
なぜって?
それは前からの魔獣にさえ気をつければいいから。もちろん後ろから来ないとは限らないけど、魔獣はほぼ前からのみだ。少なくとも回廊の壁を突き破る魔獣はいないはず。
回廊を経て。
3階層は山地に近かったよな。
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