027 スザンヌ

 新しい家族との生活は、すぐに慣れた。養父母は血の繋がらない俺を本当の息子として自然に受け入れてくれた。俺もまた自然に父さん、母さんと呼べた。


 開拓村の農家の1日はとにかく忙しい。

 俺は開墾地の石取りや雑草取り、わずかばかりの収穫の手伝い、木の実の採集から家の掃除までなんでも手伝った。少しでも家族の役に立っていることが嬉しかった。


 畠の開墾をしたあと、ヨゼフ父さんと裏の森で木の実を採った。

 どんぐりみたいな実などが拾えた。


 「ヨゼフ父さん、これは食べられるの?」

 「ああ、こいつはスバシイの実だ。炒って食ったらうまいぞ。帰ったら母さんにお願いしよう」

 「うん」


 俺は少しずつ、食べられる山野草や木の実などの名前や用途、薬草などを覚えていった。もちろんこの知識は、先々の俺の人生でかなり役立つものになった。




 ▼




 妹が産まれた。

 俺は一生懸命子守りもした。

 妹のスザンヌは、マリア母さんに似た明るい笑顔が特徴だ。将来美人となることが約束されているだろう。

 スザンヌは朝起きてから寝るまで一日中俺の側を離れたがらないお兄ちゃんっ子である。

 (ヨゼフ父さんが密かに涙しているのを俺は知っている)


 たまに妹のスザンヌをおぶって家の周りを散歩した。


 「スザンヌ〜よだれ垂らすなよ。肩がベタベタだよー」

 「あーい」


 キャッキャキャ‥


 「仲の良い兄妹ねー」


 隣の人が笑顔で言った。

 貧しくても不満は何もない。

 家族っていいな。

 この頃の俺は、家族に囲まれた毎日を幸せに暮らしていた。




 ▼




 「アレク、父さんたちは教会へ行ってくる。留守番を頼んだぞ。スザンヌが1人で外へ出て行くと危ないからな。よく見ててくれよ」

 「はーい」


 この日。

 俺にとって一大転機となる事件が起こった。

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