024 真の転生
「ショーン様お目覚めですかな」
「モ、モンデール神父様‥‥」
深夜、目を覚ました俺にモンデール神父様がここまでの顛末を教えてくれた。
別れの祭壇には俺の身代わりとして、スラム街で亡くなった孤児を充てたこと。お詫びとしてその子の孤児仲間を教会で保護したことなどのあれこれを聞いた。
「あ、ありがとう‥ございました。モ、モンデール神父様やみ、みな、みなさんが‥助けてくれたこの生命。み、みなさんに報いるためにも‥俺はせ、精一杯い、生きていきます‥」
「はい。ショーン様のお覚悟はこの私モンデールがしかと聞きましたからな」
仮死から目覚め、動かない身体で俺はやっとこれだけを口にした。
「う、うう‥」
ひたすら、ただひたすらに涙が出る。転生前、俺は突然の難病に罹りやはり動かない身体だった。発症直後はまだ通院できたが、そこからはだんだんと悪化して車椅子生活になり、やがては病床から立ち上がることさえもできなくなった。
入院時代、痛さや悔しさ、将来への虚しさから出た涙は、なぜ俺だけが病いになるんだと世の中全てを恨む涙だった。
転生して。
自然と口から出るのは、ありがとうございますとの感謝の言葉とただただ流れ落ちる涙。
俺を害した者への怒りの気持ち、憎しみの気持ちはもちろんある。
父上を殺し、俺を殺した者へはいつか必ず復讐を果たすと誓う。
それでも今の溢れ出る涙は、怒り以上に俺を救ってくれた人たちへの感謝の気持ちの顕れだった。
俺は今日転生した。
今度こそ。
今度こそ精一杯生きようと思った。
―――――――――――――――
「ショーン様、しばし辛抱してくだされよ」
夜半、モンデール神父様に背負われて訪れた先は、教会の熱心な信者である農夫夫妻の家。
これから家族として過ごす家だ。
王国内ヴィンサンダー辺境伯家領土は、北の辺境と呼ばれる地。
そのさらなる辺境の地で。
農民の養い親夫婦や村の人の愛を注がれて俺は育つのだった。
第1部 転生編
第1章 辺境伯家の子編 完
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