花旦綺羅演戯 ~娘役者は後宮に舞う~

悠井すみれ

登場人物紹介(第一部段階)

 本編は次話から始まります。登場人物の把握に役立ててくださいますように。


《主人公》

燦珠さんじゅ

 国一番の花旦むすめやくを目指す少女。

 市井では女は舞台に立てないため、後宮にある「女だけの戯班げきだん」、秘華園ひかえんを目指す。

 明朗快活、溌溂とした非常に前向きな性格。歌う声も舞う姿も華やか。


よう霜烈そうれつ

 燦珠を見出した謎めいた宦官。

 尋常でない美貌と美声の主で、「そこにいるだけで辺りが明るくなる」「魂を天鵞絨ビロードで魂をくすぐるような声」などと称される。

 芝居好きでもあり、秘華園の在り方を憂えているらしい。




秘華園ひかえん戯子やくしゃたち》

※秘華園……後宮にある女性だけで構成された戯班げきだん。過去の皇帝の戯迷芝居オタクぶりを満足させるために創設された。


そう隼瓊しゅんけい

 秘華園の古参の男役役者。先帝や皇太后にも深く愛されていた。磨き上げられた玉を思わせる麗人。若い戯子やくしゃたちの教師役として秘華園を見守る。

 霜烈と関係があるらしい。


しん星晶せいしょう

 現在の秘華園でもっとも目立つ男役の少女。相手役の地位を狙う戯子やくしゃも多い。

 すらりとした長身に整った顔立ちで清冽な雰囲気を漂わせ、非常に見目良い少年にしか見えない。しゃ貴妃きひ華麟かりんに仕えている。


さい喜燕きえん

 戯子やくしゃ候補の少女。皇帝の寵愛を一身に集める香雪こうせつへの間諜スパイとなるべく、ちょう貴妃きひ瑛月えいげつによって秘華園に送り込まれる。

 ライバルとなる友人を陥れたことがあり、役者同士は敵同士だと思い込んでいるが、燦珠と出会って考えを変えていく。




《皇宮・後宮の住人たち》

翔雲しょううん

 今上帝。先帝の実子に存命の者がいなかったため、傍系の皇族から選ばれて帝位に就いた。

 優秀かつ謹厳実直で、秘華園を散財の象徴として嫌っている。秘華園を縮小・解体するつもりだったが──


しん香雪こうせつ

 後宮の妃嬪ひひんのひとり、位は昭儀しょうぎ。薫り高く清らかな菊花を思わせる佳人。

 控えめでいながら芯が強く教養高く、現在の後宮で唯一、皇帝である翔雲に寵愛される。後宮の妃嬪ひひんは抱えの戯子やくしゃが必要だという倣いを知らず、霜烈を通して燦珠を頼る。


しゃ華麟かりん

 貴妃きひのひとり。牡丹の花を思わせる華やかな美少女。

 重度の戯迷芝居オタクで、寵愛や権力争いには興味がない。好きな演目に倣った古風な衣装を常に纏っているため、傍目にはコスプレをしているように見える。

 星晶が大好きで、彼女の魅力を引き立てる最高の相手役およめさんとして燦珠に目をつける。


ちょう瑛月えいげつ

 貴妃きひのひとり。薔薇の花に似て、美しいが刺々しさも漂わせる。

 抱える戯子やくしゃに派手な演目を演じさせては皇太后霓蓉げいように取り入っている。謹厳実直な今上帝には気に入られるはずのない振る舞いの影には、何らかの企みがあるらしい。


霓蓉げいよう

 皇太后、先帝の皇后。先帝の寵愛は薄く、実子はいなかったものの、芝居好きとしては通じ合っていたと言われる。

 我が子同然に可愛がっていた陽春ようしゅん皇子の失踪以来、半ば正気を失っている。芝居好きで、華劇ファジュに関することについてだけは意識と記憶がはっきりする。




《故人》

文宗ぶんそう

 先帝。三十年に渡る治世のほとんどを、後宮に引き籠って華劇ファジュに耽溺して過ごし、国を傾けた。特に驪珠りじゅの死後、陽春ようしゅんの失踪後は万事に気力を失くし、後継者たちの争いも座視した。


きょう驪珠りじゅ

 秘華園の戯子やくしゃ。歌にも舞にも優れた伝説的な花旦むすめやくとして語り継がれている。文宗帝に格別に愛され、皇子も儲けるが病によって早逝する。隼瓊の相手役だった。


陽春ようしゅん

 文宗帝と驪珠の間に生まれた皇子。母に似た美貌と美声に利発さも備え、父帝にも、生さぬ仲の皇后(作中時間軸での皇太后)にも溺愛された。その存在を警戒されたか嫉妬されたか、十歳のころに突然後宮から姿を消す。




《後宮の外の人々》

詩牙しが

 燦珠の父。武花臉しょうぐんやくとして国一番の役者と謳われる美丈夫。

 娘の才は認めつつ、蔑まれることも多い役者の道を進むこと、後宮で陰謀に巻き込まれることを心配している。


青蘭せいらん

 花旦むすめやくの名手として名高い役者(男性)。燦珠にとっては師のひとりであり、親戚の小父さんのような関係。

 風邪を引いた時に無理に演じさせた客のせいで肺炎になったことがあり、喉に良い薬の研究が趣味。

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