第7話 課外授業(1)
入学式から二週間ほど経過した。
今まではオリエンテーションや授業の説明などでしっかりした授業は行われていなかったが今日からは魔法に関する授業が本格的に開始する。
今日の授業は魔法概論の授業らしい。主に魔法の属性や魔道具の説明やおさらいが行われるとクラスメイトから聞いた。
「やっと今日から本格的に授業が始まるね」
「そうね。今まではオリエンテーションで授業らしい授業はなかったものね」
「初の授業は魔法概論かー。私、そういう分野に興味あるから楽しみだな」
「昔からユナは魔法に関することが好きだものね。あなた、私の家に遊びに来てもほとんど書斎に閉じ籠ってばっかだったじゃないの」
「あ、あれはレネちゃんの家に貴重な文献がいっぱいあるからだよ! 私悪くない! そういうレネちゃんは何の授業が楽しみなの?」
名家にしかないような文献を見つければ誰だって見ちゃうだろうに。
「私は魔法戦闘術かしら。元々魔法と剣術を合わせた戦い方をしてみたかったし、どう戦えばいいか勉強したかったの」
「レネちゃんは剣術が凄いもんね……。私も剣術は学んでたけどレネちゃんは異次元すぎるよ」
「そう? 慣れればあなたもできるようになるわよ」
魔法使いは、魔法だけでなく時に剣術や武術を扱う場面がどうしても存在する。例えば、超至近距離では魔法を使うよりも杖剣の戦いになることが多い。
そのため、名家出身の魔法使いは剣術や武術に長けているものが多いらしい。
私も父がそのことを分かっていたので、魔法を学ぶ傍ら、剣術も少しだけだが教えてもらっていた。
剣術に関しては同年代の子よりも自信はあるが、それでもレネちゃんに比べたらまだまだだろう。というか、普通杖剣で魔法を斬る方がおかしいのだが……。
そんなことを話しているとチャイムが鳴り、同時に教室の前の方の扉が開き、美しい赤色が舞う。
「授業始めるぞー。席について準備しろー」
入ってきた先生を見てクラスのほぼ全員が啞然としている。なんせ、子供のような女性が入ってきたのだから。
「……って子供!?」
「はっはっは! 私を見るとみんなその反応になるんだよな~! 今年も変わらん反応ありがとな!!」
変わらん反応と言われても、流石にこんな子供のような先生なのは想像できないだろう。もっとこう、The・おじいちゃんみたいな先生が来ると思っていたのだから……。
「おいおいお前らー。私ごときに驚いてたらこれから先ずっとびっくりして過ごすことになるぞー? 魔法使いってのはどいつもこいつも、変わったやつばっかりだからなー。ま、私が言えたことでもないけどなー!」
自分で言ってしまうのか。
まあ魔法使いに変わり者が多いというのは本当なのだが……。お父さんとお母さんも結構変人だった記憶があるし。
「レネちゃん、私やっていける気がしないよ……」
「同感ね。私も思ったわ……」
未だ驚いているクラスを横目に、赤髪の先生は教科書を配りながら話し始める。
「教科書も配ったし早速授業! と行きたいところだけど、まずは自己紹介と授業の説明からしていくわー。私は、ナズキ・ロッシュ。ナズ先生と呼んでくれて構わないわ。専攻は見ての通り魔法概論。これからみんなに魔法概論についての授業をしていく予定。よろしくね~! 何か質問あったら答えるよ~」
一人の女子生徒が元気よく手を挙げる。
「はいはーい! 先生に質問です~!」
「お、そこのピンク髪の子。質問いいよ!」
「先生って、何歳なんですか~?」
その瞬間、さっきまで元気だった先生がいきなり固まった。
「……いきなりデリケートな質問をしてくるねぇ!? ま、まぁ君達の倍は歳をとってるとだけ……」
「えー!? 意外です! めっちゃ大人ですね!」
「はいはい、この話もう終わり!! 年齢に関しては話したくないんだ私は! 他に質問ないね!? もう授業入るよ! 教科書の10ページ開けー!!」
これ以上心の傷を広げたくないのか、先生は強引に質問タイムを終了した。
言われた通りに教科書を開くと、そこには魔法の属性について詳しく書かれていた。ナズキ先生は最初の方に書かれていることを要約しながら黒板に書き始める。
「それじゃ、気を取り直して─。みんなも知っていると思うが、魔法とは精霊に力を借りる代わりに魔力を代償として支払って発動するものだ。この世界に人間が生まれた時から魔法が存在していたとされているが、詳しい年代までは不明とされている。七属性の精霊がいるとされ、その分だけ魔法の属性も存在している。そして、それらが基本属性と呼ばれているのはみんな知っての通りだ。……んーじゃあ、そこの長い銀髪の子。基本属性を全部答えてもらおうかな」
そう言って先生は、私の隣に座って板書をしていたレネちゃんを指さす。
「はい。……基本属性には七つあり、それぞれ火、水、風、光、闇、土、氷があります。その中でも火、水、風の三属性は使える者も多く、威力も高く扱いやすい属性と言われています」
「そうだねー。多くの魔法使いはこの三属性を主体として戦うと言われているよ。私もそうだけど。続きをお願いしてもいいかな?」
「はい。それに対して光、闇、土、氷の四属性は先ほど言った三属性に比べ使える者は少ないですが、治療や速度などの自身の強化にも使える光属性、五感を奪うなどの状態異常を相手にかけられる闇属性、有利な地形で戦える土属性、攻守ともに優れた氷属性……。扱えたら便利な四属性でもあります」
先生は付け加えながら黒板に要点をまとめていく。
「うんうん、完璧だ。座ってもらって構わないよ。後は基本属性に加え、『派生属性』という特殊な属性もあるよ。主に、二属性以上の魔力を使ったもののことを指すね。使うことは難しいが、その分だけ便利であり、可能性は無限大と言える」
派生属性は私もいくつか使えるものがある。学園迷宮に落ちた時に使った
「さて、これらの話を踏まえると君達の年頃の魔法使いはこんな悩みを持つはずだ─。『自分は何が得意で、どの属性を極めて戦えばいいのか』と。『炎帝』のように一属性を極めて戦うもよし、多属性を極めて戦うも良し。自分の好きな属性を使うといいだろう。だが、
相殺とは、対抗属性を当てて相手の魔法を消滅させる技術だ。魔法を消滅させる際に対抗属性を当てることで相手より少ない魔力で戦うことができる。魔力量と練度がものを言う魔法戦闘において、この技術は必要不可欠なものとなる。火は風に強く、水は火に強く、風は水に強いという三すくみ、光と闇は互いに強く、土と氷は弱点がないという感じの関係性になっている。
「じゃあ次は教科書11ページをひらい─って。もうこんな時間か」
時計を見ると、既に授業終了五分前を指していた。
授業時間はそこそこあったはずだが、中々熱中してしまっていたようだ。
「それじゃ、少し早いけど最初の授業だし早めに終わろうかな。来週は学園迷宮で魔石に関しての実習授業をするから学園迷宮二層に現地集合。道具や実習の内容は追々連絡するから、各自で準備しといてね~。それじゃ、おつかれさま!」
挨拶をすると、先生は嵐のように教室を去っていった。
「はー、もう授業終わっちゃった。あっという間だったね~」
「嵐のような先生でしたね……。悪い人ではなさそうですけど」
「そうだね~! それにしても、来週からもう実習が入るんだね」
「魔石を使った実習と言ってたし、魔物を討伐してその魔石を使った実験でもするのかしら?」
「うっへぇ~……。もう討伐系の実習が入るなんて……」
「まあまあ。まだそうと決まったわけじゃないし、連絡を待ちましょ?」
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