第54話 野宿にて(その6)
程なくして、クニオとコルビーも3人が埋められた場所に駆け付けた。
クニオは生活魔法の『暗がりを照らす魔法』で作り出した頼りない灯りで、上半身だけを地面から出して気を失っている三人をまじまじと眺める。
「一体何が目的ですかね?」そういうクニオにグレゴリーが説明する。
「どうもコル殿と拙僧が魔族だと勘違いしたようですな。いやコル殿はあながち間違ってはおりませんな。なかなかの感知能力だ。しかし拙僧はどう見ても魔族ではないでしょうに」この魔王のローブをまとった大男はいけしゃあしゃあと言いのけた。
「少し気が緩んで魔力が漏れ出ていたかもしれない。申し訳ない事をした」コルビーは他のメンバーに頭を下げた。
「襲ってきた理由はまぁ良いとして、Sクラス冒険者がこんなところで何をしているんだろう?」クニオが言った。
「服装からすると北の国の冒険者だな。こんな何もないところにわざわざ来るんだから、目的は私たちと同じアダマンタイトじゃないのか?」とコウは言った。
「ふむ、密命であれば意識が戻っても口は割らないでしょうな。北の国の人間は口が堅いですからな」グレゴリーは顎を右手でさすりながら言う。
「どうしようか?勘違いとはいえ、私たちを助けようとしてくれたのにちょっと申し訳ないよね?でもアダマンタイトを探しているなら色々と面倒くさいことになりそうだしな…コル君について説明するのもややこしそうだ…」コウが言う。
「コウが記憶消しちゃえばいいんじゃないの?」クニオはコウに向かって言った。
そう、コウは脳内の電気信号を操作することで、短期記憶を消したり偽の記憶を植えつけることもできる。
「うーん…過去にクエストを受けてたりしたら、そこは記憶から消せないんだよなー。とりあえず探し物は見つからなかったという印象を、記憶に刷りこむとするかな。アダマンタイトを探していたんならそれであきらめると思うけど…でも土で汚れた体や服はどうごまかそう」コウはそう言って、ちょっと考えてから続けた。
「あ、こういうのはどうだ?山で見つけた露天風呂に入っていたら、うつらうつら寝てしまったみたいな感じで…。一応助けようとしてくれたお礼の意味も込めてさ、よく考えたら私も風呂に入りたいしな」
「例のヤツですな」グレゴリーがニヤリと笑う。
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