第25話 湧起る(1)




あなたと私が育んで来た新たな生命いのちがあなたを救い、私を救う。



此処から新しい伝承が始まる。



今よりもっと遠い月日に繋がる絆が生まれ深まると共に──。




**********




「わぁ、また大きくなったね」

「そうかな」


リュウビの子を身籠っていると知ってから約九ヶ月後。私のお腹は見事に大きく膨らんでいた。


「もういつ生まれてもOKって感じね」

「うん……段々下に下がって来ているみたい」


臨月に入ってから滅多に外出することが少なくなり、買物とか身の回りの世話なんかは頻繁に家に来てくれる美和さんがこなしてくれていた。


「ぉーきぃぉーきぃ」

「ふふっ、大きいねぇ」


私の大きなお腹を小さな手で擦るのは辰朗さんと美和さんの娘で1歳を過ぎた千花ちはなちゃん。


「たまちゃ、まるちゃ」

「……え」


さわさわと私のお腹を何度も撫でる千花ちゃんはよく分からないことを口走る。


「たまちゃ、まるちゃ」

「たまちゃ? まるちゃ?」

「なぁに、千花。瑞生ちゃんのお腹が丸いから玉とか丸とか言っているの?」

「えっ、1歳の子ってそんなこと言うの? 凄いね」

「なんか千花ね、時々どうかしちゃったの? と思うような行動を取ることがあるの」

「……」

「辰朗さんは心配要らない、瑞生ちゃんも似たようなことしていたよって言うから気にしていないんだけれどね」

「……」


何となく私は思うことがあってジッと千花ちゃんを見つめた。


(そういえば千花ちゃんも野宮の血を引く娘ってことになるんだよね)


野宮家本家の辰朗さんの娘なのだから当然──


(まさか……まさか、ね)


一抹の不安が過ったけれどそんな不安は大きなお腹を庇うように動いていたら一瞬で消えて無くなってしまった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る