第21話 折込む(3)
『ヒメさま……ヒメさま』
「えっ」
その日もいつものようにリュウビの元へ通うために森の中を歩いていると急に頭の中に何かの声が響いた。
キョロキョロと周りを見渡しても誰もいない。
(気のせいだったかな?)と思い再び歩を進める。
『ヒメさまぁ~ココです~』
「!」
(やっぱり誰かいる!)
気のせいじゃないと思った私は注意深く辺りに視線を這わせた。──すると
『ア、目ガ合いました』
「?!」
何気なく見た足元に一匹の蛇がいることに気が付いた。
「きゃぁぁぁぁぁぁ──!」
思わず大きな声を上げてしまった。
『ヒャッ! オオきな声ヲ出さなイでェェェ~』
「へ、蛇、蛇ぃぃぃ!」
蛇が苦手な私は慌ててその場から逃げ出そうとした。しかしその瞬間、何か柔らかなものにぶつかった。
「っ!」
「なんだ、何事だ」
「あっ」
私は後ろに立っていたリュウビにぶつかりそのまま抱きしめられた。
「先ほどの悲鳴はミズキか? 何があった」
「あ……へ、蛇が」
「蛇?」
私の言葉を訊いてリュウビは怪訝そうな顔をした。そして私と少し距離を取っている蛇を見つけた。
『あわワワぁ~オイケ様オ赦しクダサイ~ヒメ様を驚かすツモリハなかったのです~』
「別に怒っておらぬ。ミズキに何か用か」
『ハイ~。コノ度ノお世継ぎサマご誕生ヲ喜ばしく思イヒトコトお祝イノ言葉ヲツタエたクテ~思い切ッてヒメ様ニお声ヲオカケシタンデス~』
「へ…? お、お世継ぎ?!」
蛇の言葉にドキッとした。
「阿呆、まだ誕生しておらぬ。これからだこれから」
『デスガデスガ待ちにマッタお世継ぎサマの孵化ヲ感じまして……うレシクテうレシクテ……思わずお声ヲ~』
(ふ……孵化?!)
蛇の言葉にまたまたドキッとした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます