第17話 輿入れ(6)



「いいぞ。ミズキは俺の妻に向いている」

「?」

「理屈で考えることをしない。ありのままを受け入れることの出来る女子おなごだ」

「……御池様」

「もうそろそろ止めろ」

「え」

「御池様と呼ぶのを。おまえはもう俺の名前を訊いているはずだ」

「……」

「俺の名前が分かるな? 先程から端々で言っておるぞ」

「……リュウ…ビ」

「……」

「リュウビ……様」

「そうだ。だが様は要らぬ」

「っ」

「俺とおまえは夫婦になる。夫に様をつけるのは好ましくない」

「あ…っ、リュ……リュウビ…っ」


御池様改めリュウビ様──リュウビの指が私の奥深くを弄る。


一面青い世界の中のぼんやりとした輪郭で寝台だと分かる上で私はリュウビによってその体を拓かさられる。


「ん……ミズキ、甘いぞ、おまえの体は」

「はぁん……あ、あっ」


全身くまなく舐められ、そのしなやかな指使いに悶える。


水の中だという感覚は全くない。でも時より体がフワフワとするのは水のせいなのか、それとも──。


「堪らないな……俺をこんなにも翻弄させて」

「んんっ…。あ、あっ……やぁ」


リュウビの指が私の中を激しく行き来する。その度に私の奥からはグチュグチュとはしたない音を立てる。


「はぁ……すまぬがもう我慢の限界だ」

「っ!」


リュウビは肌蹴ていた着物を全て剥いで私の前にその美しい肢体を晒した。


初めて目にした男性のそれがあまりにも驚く造形で思わず身をすくめた。



初めての世界



初めての名前



初めての行為



まさか僅かな時間でそれら全てを受け入れることになるとは思わなかった。



「あっ……んっ、んんっ」

「痛むか? ミズキ」

「はぁん……い、痛い……けど」


(止めて欲しくない!)


リュウビの太く尖ったモノがメリメリと私の中を突き進んで行く。


「ミズキ」

「あぁっ……あっ」


其処に何が挿入るなんて想像もしたことがなかった。


初めて目にしたモノを自分の体の中に入れる恐怖はあった。


だけど心の何処かでそれは待ち望んでいたことだったから──……



「ふっぅ……んっ」

「!」


リュウビがグッと腰を前に突き出した瞬間、私の中がそのモノの形に誂えたかの様に奥深くに填まった。


「はぁ……挿入ったぞ、全て」

「……ぁ」

「痛むか?」

「……す、少しだけ」

「そうか、無体なことをしたな」

「でも……」

「ん?」

「……幸せです」

「!」


私は潤んだ目をリュウビに合わせ、そして掌を高揚する頬に当てた。



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