第15話 輿入れ(4)



(そっか……着いたらどうなるんだろう)


私の気持ちの中では今回の帰省は御池様への嫁入りのつもりのものだった。


一般的な結婚式とか入籍とかそういった常識的な嫁入りではないと思いつつも、どのように御池様に迎えられるのかを知る者は今は誰もいない。


「本当は一緒についていてあげたいんだけど」

「その気持ちだけで充分だよ、辰朗さん。きっと大丈夫だから」

「……」


全く不安がないといったら嘘になるけれど、それでも私は御池様と一緒にいられる悦びの方が勝っていた。



やがて車は元祖父の家──野宮の本家に着いた。


辰朗さんにお礼を言うと辰朗さんは車から降りること無く軽く挨拶をしてそのまま走り去って行った。


「……さてと」


真っ暗闇の中、ぼんやりと門灯が点いている処を抜け玄関に立ち、預かっていた鍵で家の中に入った。


電気を点けるとパッと明るくなった。


「わぁ」


目に飛び込んで来たのは以前来た時とは全く雰囲気の違った洒落た内装だった。


和式の畳敷きで何処からどう見ても和室だった部屋はフローリングになっていてソファが置かれていた。


それはそのまま自宅にいた時の延長線上のような設えで思わずホッとしてしまった。


「凄い……綺麗にしてくれたんだ」


それを見ただけで如何に野宮の人たちが私に対して心地よく此処で過ごして欲しいと思っているのかが窺えて少しだけ涙腺が緩んでしまった。


「……うん、大丈夫。私、やっていける」


何故か改めて身が引き締まる思いがして小さくガッツポーズを取ったりしたのだった。



美和さんが補充してくれていた食料で夕ご飯を作り食べた。そしてお風呂に入って身を清めた。


どのようにして待っていればいいのか分からなかったのでとりあえず家にいる時と同じような行動をして寝室のベッドに潜り込んだのは22時を少し過ぎた頃だった。


(このまま寝ちゃっていいのかな)


御池様は私が此処に来たことに気が付いているのかな──? なんて考えていると急に体の内側がドクンと熱くなった。


「っ!」


心臓がドクンドクンと脈打ち始め、何か見えない糸のようなものでぐいぐい引っ張られる気がした。


(もしかして御池様が呼んでいる?)


いつもより強烈に感じるその呼びかけに私はベッドから起き上がった。



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