第13話 輿入れ(2)



私はこの春高校を卒業した。


とても有意義な学校生活を送り、愉しい青春時代を送れたと思う。


ただ……恋愛に関することでいえば少し寂しい想い出しかないのかも知れないけれどでもやっぱり後悔なんてない。



長い休みの度に私は御池様の住まう蛟の杜へ行き親交を重ねて来た。


ただ話をして、優しく触れられ、やんわりと抱きしめられるだけで充分幸せだった。


だけど年齢を重ねる毎に私は自分の体の変化に気が付いて行った。


それは内から湧き出るように御池様を求める気持ち。


貪欲に御池様に愛されたいという身体的欲望に身を焦がすことが多くなった。


(欲しい……御池様の全てが……)


いやらしくも静かな欲望が私を少しだけ大人の女性にしたのかも知れないと思った。


そして自然と解った。


今が御池様の花嫁になる時なのだ、と。


その旨を両親に話すと反対されなかった。


両親もまた私と同様この日が来ることを覚悟し受け入れていたからなのかも知れない。


特に母は野宮の血筋の者。理屈で考えるよりも脈々と受け継がれて来た見えないいにしえの理を受け入れる方が心身共に楽だったのだろう。


若干の心配を覗かせながらも快く私を御池様の元に送り出してくれたのだった。





プルルルルル



『まもなく2番ホームに電車が参ります。白線の内側まで──』



この日私は初めてひとりで御池様の元へ向かう。


自宅からタクシーで駅まで来て目的の電車に乗って新幹線に乗り換えする。


ざっと8時間ほどの道のりだ。



(あぁ……早く逢いたい)


軽快に走り出した電車の窓から流れて行く景色を眺めながら、気持ちは既に御池様の元に飛んでいた私だった。




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