第7話 恋乞う(5)



(私……神様の子を産む、の?)


嘘みたいな話だった。


そんな物語みたいなことがあるのかという不思議な気持ちになった。


「おまえ、名を何という」


頭に御池様の掌が当てられ優しく撫でられた。


「……瑞生」

「ミズキか。善い名だ。俺の名は    」

「え? 何?」

「聞こえぬか。そうか、それはそうだな。神の名はそれを心より愛し敬愛する者にしか聞こえぬ。何故なら神は真名まなを知られるとその者に縛られ逆らえなくなるゆえ

「? ……えっと」

「分からなくてよい。今はまだ──子どものおまえはまだ何も」

「!」


御池様の掌が頭から頬に移動して優しく撫でられた。


「いいか、ミズキ。成熟するまで精々人としての生を謳歌するといい。俺に囚われたらもう──おまえの全ては俺のものになるのだから」

「……」


御池様のその言葉は10歳の私にはチンプンカンプンだった。


だけど意味は分からなくても何故かひと言ひと言が鮮明に私の頭の中に刻み込まれていたのだった。




──時は戻り現在時間



「ミズキ、学校は愉しいか」

「ん……愉しいは愉しいけど……」

「けど、なんだ」


御池様の膝の上に乗せられた私は体を優しげに撫でるそのくすぐったさに悶えながらもこの一年の間にあった学校のことや家のことを話した。


「友だちがね……その……どんどん大人になって行って……」

「大人になって?」

「その……えぇっと……」


御池様に何といえばいいのか言葉に詰まる。


そんなモジモジした様子で勘付いたのか御池様はことも無げに「あぁ、セックスの話か」と言った。


「! な、なななっ」

「ん、違ったか? 今はそうはいわぬのか」

「や……ち、違ってはいない……けど、なんで御池様がそんな言葉知っているの?」

「俺だってそれくらいは知っておる。なにせ人間として生きていた時代があるのだからな。人の世界との繋がりがある故、その時代時代の情報ぐらい知っている」

「………は」


(今、なんて…?)


御池様の口から出た言葉にキョトンとした。



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