第5話 恋乞う(3)
「はぁはぁはぁ…」
照りつける太陽の下を小走りに進んで来た。
やっと見慣れた池に辿り着くと直ぐ淵にある大きな岩に腰を下ろしている人が目に入った。
「おぉ、来たな」
「……御池様」
私は呟くようにその人の名前を呼ぶ。
四年前と姿形はそのままで、相変わらず艶めかしい顔をして私を見つめた。
「ミズキ、此方へ」
チョイチョイと手招きをされ私はおずおずと御池様の傍に寄って行った。
御池様の前まで行くと伸ばされた細く白い腕から続く掌に私は囚われ、そのまま御池様の体にすっぽりと収まった。
「ふふっ、久しいな」
「は、はい」
「ん……よしよし、ちゃんと大きくなっているな」
「!」
いきなり御池様の掌が私の胸を揉み解した。
「体つきも丸みを帯びて来たな」
「あ…っ、や、やぁ」
御池様に体中をやわやわと撫でられくすぐったいようなもどかしいような気持ちになった。
「嫌ではないだろう? これしきのことで」
「~~~」
確かに御池様のいう通り嫌ではなかった。これくらいのことはもう何度もされて来たから。
ただただ純粋に恥ずかしくていつもの私じゃなくなりそうで怖かったのだ。
ここで話は四年前に遡る──……
祖父が亡くなり、その葬儀のために母の実家である田舎に帰省した私は祖父の家近くにある森の中で綺麗な池を見つけ其処でこの
御池様は池の神様だった。
御池様のルーツは古く、ここら一帯の村で祭られていた雨を司る龍神様からの流れを汲んだものだという。
古来より祀られている龍神様と村人とを繋ぐ役目をしていたのが野宮という祀り事の一切を取りまとめる家の巫女だった。
龍神様を鎮めるために神聖な巫女が祈りを捧げることで野宮家は繁栄を極め、村も日照りや豪雨に悩まされることなく繁栄して行った。
そんな永きに渡る龍神様と代々の巫女たちの関係の中であるひとりの巫女が龍神様と恋仲になりその御子を孕み産み落とした。
龍神様と巫女との間に産まれた子は半分が神様だったけれど完全な神様ではないということで龍神様を祀る社近くの池の主となり其処を住処として暮らし始めた。
その池の神様の子孫が今私の目の前にいる御池様ということだった。
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