第2話 出逢い(2)
怖々と振り向くと其処には白い着物を着た男の人が立っていた。
「其の池の水を呑んだのか」
「……」
「呑んだのかと訊いておる」
「あ……あの……ごめんなさい」
私は男の人の只ならぬ雰囲気に呑まれ一瞬にして体が硬直してしまっていた。
だけどなんとか声を振り絞り言葉を吐いた。
「呑んだのだな」
「……飲み……ました」
「……」
(どうしよう……飲んじゃいけない水だったのかな)
私は怒られると思い体をこれでもかというくらいに縮込ませた。
怖くてしばらく俯いていたけれど、何もいって来ないことを不思議に思い顔を上げるとすぐ目の前まで男の人が寄って来ていて屈んで向けられたその視線は私と同じ高さになっていた。
「!」
「おまえは何処の子だ」
「あ……の……」
「何やらよく知った匂いがするが」
男の人がクンクンと私の匂いを嗅いでいるような仕草に驚いた。それと同時にどうしてだか体の中がカァと熱くなって来た。
「おまえ……ひょっとして野宮の子どもか?」
「のみや?」
「あぁ。この森を抜け丘を下った処にある茅葺屋根の家だ」
「あっ、おじいちゃんの家」
「おじいちゃん? ──ということは……三朗の孫か」
「さぶろう……は、おじいちゃんの名前」
「……」
祖父の名前を訊いた瞬間、男の人は何か合点がいったような表情を浮かべ私から少し距離を取った。
「なるほどな、野宮の血筋か。ならば納得だ」
「?」
「何の因果か知らぬがこのタイミングでこのような機会を得ようとは」
「……」
(何、いってるんだろう)
男の人は呟くようにブツブツと訳の分からない言葉を吐き出していた。
私は早くこの場から逃げ出したい気持ちから少しずつ男の人から距離を取った。──だけど
「待て」
「!」
ジリジリと後退った私を男の人は目敏く捉えた。
「話はまだ終わっておらん」
「……」
この日私は夢を見ていたのだと思った。
だってこんなの普通にあることじゃないと思っていたから──。
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