深淵の彼方から

兎月十彩

第1話 出逢い(1)



あの日あなたに出逢ったのが私の運命ならば私はその運命を抗う事なく受け入れる。



そういう運命なのだと──受け入れる事が出来る。




**********




昔々。それは私が10歳頃の話。


ある夏の日、田舎にひとり住む祖父が亡くなったということで私は両親に連れられ田舎の母の実家に帰省していた。


通夜や葬儀の準備で忙しくしていた両親に構ってもらえなかった私は田舎の風景に物珍しさを覚え、散策という名の遊びに夢中になった。


自然の少ない都会に住んでいた私にとって其処は冒険心をくすぐられるもので満ち溢れていた。


祖父の家からそう遠くない丘の上に鬱蒼と茂った森があって、その奥深くでキラキラ光るものを見つけた。


なんの躊躇いもなく光の元へ行くと其処には小さな池があった。


「キラキラしてる」


木々の間から差し込む陽差しを受けて池はキラキラと乱反射していた。


夏の暑さから喉が渇いていた私は池に近づき覗き込む。


澄んだ透明な水は鏡の様に覗き込む私を映し出していた。思わずゴクッと喉が鳴った。


そして誘われるまま池の水を掌ですくいゴクゴクと飲み干した。


「……美味しい!」


池の水はほんのりと甘くてとても美味しかった。思わず二度三度と汲み上げ飲み続けてしまった。


「──呑んだのか」

「!」


いきなり後ろから聞こえた声にビクッと体が跳ねた。


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