第27話 後悔
私、エリカ・ブラウンは後悔していた。
今までのボス戦があまりに順調で油断していた。
ナイナメス達を追いかけてラストダンジョンに来るべきでは無かった。
西岡なぞにはラスボスをくれてやってどこへでも行かせてしまえば良かったのだ。
目の前には下半身を失ったタケルの死体が横たわっている。
いつも囮を買って出る彼は最後まで勇敢だった。
彼に突き飛ばされて最初の一撃を躱した私達の元に怪物達が駆けつけてくれた。
シズカさんはカルカロドントサウルスに乗ってすぐに攻撃を仕掛けたが、旗色は良くない。
ラスボスの放つビームや小型のミサイルのような攻撃にカルは血みどろになっている。
私はビームの一撃を受けて左足を吹き飛ばされ今は闘技場のすみに寝転がっている。
眼の前には私の盾になったオサダゴワが体を半分に引きちぎられて事切れていた。
この世界に来た最初の頃にタームした愛着がある子だった。
ごめん。そしてありがとう。
私はタケルが怪物病対策に大量に作っていた回復薬をがぶ飲みしてそれで命を永らえている。
左足はこのゲームのような世界のお陰でシュウシュウと再生を始めているようだ。
しかし、しばらくは動けない。
シズカさんはこちらに攻撃が来ないように立ち回ってくれているようだ。
すみません。足を引っ張って。
私もここからラスボスにライフルで射撃を加えているけれど、どれだけ効果があるのだろうか。
ドウッ。
シズカさんのカルカロドントサウルスが倒れ伏した。
まだ、息は有るようだが、鞍に乗っていたシズカさんが投げ出される。
「なかなか手強かったですよ。ですが、あなた方に手間どる程度の性能ならもう少しチューニングが必要ですか。それとも元の世界に戻ればもっと強大なエネルギーがだせるのか・・・」
西岡がぶつぶつと独り言を言っている。思ったほどの性能ではないのかしら?
「まあ、いいでしょう。それではこれで終わりです」
ラスボスの第三の目が光る。
「クッ、またブラック・コアに殺されるのか」
「シズカさんっ!!」
第三の目からビームがシズカさんに向かって発射される。
ドシュウウウウウッ
しかしラスボスとシズカさんの中間で、別の方向から放射された青いビームが直撃する。
カッ!!
ビーム同士の干渉で辺りに虹色の光が散乱する。
「なんですか?これは?」
西岡が不思議そうに振り返る。
その視線の先に金属製の巨人がいた。
全高は一七メートルほどで全体的なシルエットは人型だが、脚部だけが鳥のように逆関節になっている。そのせいで人間とは異質なイメージを与えていた。
右手には巨大なライフルのようなものを持ち、左手には三連装のロケットランチャーのようなものをセットしていた。
関節部からは甲高い作動音が聞こえる。そう、巨人というよりもロボットといったほうがただしい。
頭部には3つのカメラレンズが並んでおり、その上から西洋鎧の兜にも見られる、とさかのような突起が伸びていた。
背中と、脚部の裏側にはなにかのブースターだろうか、いくつものスリットが並んでいる。
『シズカさんっ離れてください!!』
「タケルっ、タケルなのっ?」
私は近くで倒れている彼の半身を見た。じゃあ、ここにある死体はいったい・・・。
私は腕の力と残った右足でずりずりと体を引きずると、シズカさんの所へ移動した。
シズカさんは呆然とタケルの声のするロボットを見上げている。
「どういうことだ・・・私の記憶にあるブラック・コアはタケル殿の声がする方だぞ・・・」
「え?」
『DLCマップでのみ製作できるローダーと呼ばれる兵器です。これなら初期マップのラスボスとも単騎で戦える』
タケルが私達の声を聞いたのか、説明してくれた。
「ふん。あの娘がいらぬ横槍を入れたようでええええすね。幼なじみにいいところを見せたいがために裏切りましたか。おろかな。私と同じ穴の狢でしょうに」
ラスボスがまたビームを放つ。
それに対してローダーと言われた巨人も、頭部レンズからビームを発射して見事直撃させる。
カッ!!
またも辺りが虹色に輝く。
「ふん。高精度のオートエイムですか。やっかいでぇすね。こちらにもありますが精度が高くない」
ローダーは背部のスリットから巨大な噴射炎を発するとラスボスに突進した。
そのまま体当たりを掛けると闘技場の中に押し込んだ。
私達から遠ざけようとしてくれているの?
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