第8話 黒岩

 その男の背丈は180センチ台の後半。漆黒しっこくのスーツの上下に、金色の長髪でローファーをいており、胸元の純白のネクタイが闇夜に、異常にえる

 

 この男には病的なまでの嗜虐しぎゃく趣味しゅみが有り、しかもおのれ怠惰たいだに過ごすという社会のクズであった。名を黒岩と言った。


 場所はこの物語の冒頭の、大和田が突如とつじょ現れた、キョウヘイがスプレーを噴射して、黒岩をリーダーとする不良グループのロゴを描いてた廃墟のホテルの外壁の、内側の庭だ。


「おい!!マツ!!例の物はもってきただろうな!!」


 キョウヘイの姿を見るなり、居丈高いたけだかに叫ように行って来る。


 黒岩の取り巻きは、左右に10名ずつ、合計20名と言ったところだ。


 ある者はタバコを吸いながらウンコ座りをし、またある者はキョウヘイをにらみつけてくる。さらにまたある者は、壁の落書きのデザインに難癖なんくせをつけて偉そうに講釈こうしゃくしている。


「…いや、無理です。俺にはすぐには5万って大金、持ってこれません!!」


 その場の者が一斉にドッと笑った。


「おいおい、マジかよ!!こいつ、フクロにされてーみてーだな!!?」


 黒岩の右側のボストン・レッドソックスのキャップを、目深まぶかにかぶった男が、煽ってきた。


「…はい。しかし、ウチはもともと片親でなんですよ!!だから、金策だって普通の人みたいに出来ない!!なのに!!」


ドスッ!!!


「ぐはぁ!!!」


 孤独な少年は前のめりに倒れた。まるで胃そのものが、口から飛び出す錯覚さっかくを覚える程の衝撃であった。


「…てめえの泣き言なんか、聞きたくねえんだよ!!クソが!!」


 彼の腹にりを入れたのは、当然、黒岩でそのあとの捨て台詞せりふも、その巨漢であった。


「使えねえ野郎は要らねえ!!みんな、やっちまいな!!」


 ガルフィの水色の上下のパーカーの男は、メリケンサックを取り出し、右拳にめ、朱色のスーツにオレンジ色のネクタイに、高級そうな腕時計の男は警棒けいぼうを取り出し、金髪でスカートをかなり上げ、カーディガンをマントの様に羽織はおってる女はスタンガンを取り出していた。


(やばい…。俺はここで殺されるのか?)


 不遇ふぐうな少年の命運めいうんはここで尽きるのか。

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