第1話 スプレー


  

(小さい時から絵を描くのが好きだった。チラシの裏、自由帳、ノート…。)


 雑踏、…有象無象うぞうむぞうの往来…。


色んな思念が渦巻き、欲望という排水溝に落とし込まれていく…。


 東京・渋谷しぶや道玄坂どうげんざかのとある路地裏。


 小難しい文字が縦横に走っている、閉鎖されて結構経ってると思われるホテル外壁にスプレーを噴霧ふんむする。


 色とりどりの瑪瑙めのうのような、万華鏡のような、不思議な世界観。


(俺もいつかルノアールみたいな絵が描きてえなあ…。)


 濃紺のウインドブレーカーの内ポケットの中のスマホが、着信の反応を示したので、気になった。


 ふと取り出し、画面を見る。


 【明後日までに10万用意してこい 黒岩】

  

  「チッ!!」


  流石に舌打ちする。


  「…ったく、又かよ!上の連中はいい気なもんだ!簡単に金、金言いやがって!!こうやって敵のグループの落書きをウチのシンボルマークでりつぶすのだって結構面倒なのに!!」


 と、悪態をついた少年の左斜め前方、から、突如稲妻の様な青白い光が現出した!!


ピカピカピカ…ズッドーーーーーーーーーンッ!!!!


「うお!!???なんだ!!???なんだ!!??なんかの事故か!!??」


 その少年は多いに慌てふためき動揺した。


 にわかかに突然一人の男、廃墟のホテルの玄関から走り出てきて、少年に激突しそうになった。


「危ねえ!!」


 と叫び、十代の若者は反射的に閉じてしまったが、


ダダンッ!!!


 と音がした。






 

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