道玄坂アウトロー『カクヨムWeb小説短編賞2022』参加作品(エンタメ総合 部門)

田渡 芳実 (たわたり よしみ)

第0話 プロローグ ギャング

  大勢の若者が肩で風を切って、歩いている。


  いや、歩いているというよりは、肩をいからせて行進していく。


  付近のサラリーマンや、販売員、公務員などは眼を丸くして見つめる。


  先頭のリーダーとおぼしき男は、頭一つ、いや一つ半は抜けて背が高い。


  金髪の長髪をなびかせながら、黒ずくめの上下のスーツに、純白のネクタイがえる。


  年齢は20代後半くらいか。


  最早,更生しないと一生、社会からの鼻つまみ者であろう。


 しかし、この連中はそんなことは、歯牙しがけず、享楽的きょうらくてきで「今だけ、金だけ、自分だけ」がモットーなのであろうから、救いようはない。


 向こうから、三人組の凄い体格の良い青年たちがやってきた。


 肩幅、胸板、大腿だいたい・・・筋肉が緊張していない、徒歩の状態なのに隆起りゅうきして、異常な程発達している。


花園はなぞののとき・・・」などと、しゃべっているので間違いなく、名門大学のラグビー部員であろう。


 黒ずくめのスーツのリーダーの男の肩が、三人組の若者の肩と接触した。


 反射的にラガーマンが「あ、すみません。」と謝った。


 それに対し、黒ずくめの男は、爬虫類はちゅうるいの様な眼差まなざしで、ラグビー青年の両眼を、無言でにらんだだけであった。


 隣の部員が「おい、こっちは謝ってんだ、そっちも謝ったらどうだ!?」

と強気で、食ってかかった。

更にとなりの友人が


「やめろ!!この人が誰だか知らねえのか!?」


と制止し、


「どうもご迷惑おかけしました。こいつは無知な奴で、本当に申し訳ありませんでした。」


 と深々と頭を下げながら、謝罪したら、黒ずくめの男は軽くうなずき、視線を前に戻し、また集団を引き連れて行った。


 しばらくして、食ってかかった若者が、隣の部員に、


「なんなんだよ、あいつら!?調子に乗りやがって!!」


「おい!!あの人はこの辺を取り仕切る、ストリートギャングのトップなんだよ!」


「え!!?マジかよ!?」


「ああ、事なきをえて、本当に良かったな。」


三人のラガーマンは運が良かっただけなのかもしれなかった。













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