メイドの証言

執事が街に出かけたあと、彩音は自分でも邸内の状況を調査するべく、

自室にメイドを呼び出しました。


しばらくすると、軽いノックがしてたので

「どうぞ」とだけ答えるとドアからメイドが入ってきました。


「お嬢様、菫でございます。御用だと伺いまして参りました」


彼女の少しふっくらとした頬はうっすら桃色になっていて、まん丸の大きな黒い瞳は普段よりも大きく見開かれていて、急に呼び出されたことに緊張している様子だった。


「菫さん、先日の邸内でのティーポットの事件のことをあなたから聞きたくて来てもらったの。どんな状況だったのか詳しく教えてくれるかしら」


「はい、お嬢様。

あの事件があったのは一週間ほど前のことです。

夜に食器類を片付けているとティーポットの幾つかが無くなっていることに気が付きました。

そのうち一つはポットだけでなくシュガーポットやカップなどもが無くなっていました。バラと蝶々の柄のものです。


翌朝に皆で邸内を探してみましたところ、植木の間からそのシュガーポットやカップなどが見つかりました。ポットは見つかりませんでしたが・・・。

きっと犯人は慌てていて逃げるときに盗んだ物を落として行ったのではないかと皆で話していたんです」


「それは初耳だわ。植木に落としていったものがあったのね。

それから、その事件の前後で何か普段と変わったことはなかったかしら?」


「そうですね、どうでしょう・・・。

そういえばガス会社からの点検の知らせがあって、邸内の設備のチェックがありました。なんでも設備の点検が急に必要になったとかで、定期的なメンテナンスなどではなかったようです。

すぐに済みましたのでさほど気にもしておりませんでしたが、いつもと違う事といえば、それくらいかと思います」


「ガスの点検ね。担当者の名前は?書類などは残っているかしら?」


「会社の名前をは聞きましたが、担当者の氏名は伺っていません。

書類は何もなかったと思います」


「状況がよく分かったわ。あなたは物事をよく見ているから、やっぱり聞いてよかった。ありがとう。もう仕事に戻って構わないわ」


「お役に立てて何よりです。では失礼いたします」

彼女は柔らかくお辞儀をして部屋を出て行ったのでした。


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