第31話-1
わたくしは、ありがたい事にジェラールのご両親に受け入れられました。
今日、予定通りジェラール様はシモン様に会いに行きます。その時、わたくしと婚約を結ぶと説明するそうです。わたくしも付いて行く方が良いのではないかと言ったけど、時期尚早だからとジェラールとマックス、お姉様に止められました。
それどころか、マックスはわたくしを護衛すると言い出し、お姉様はジェラール様に付いておき危険があればすぐ連絡すると言い出しました。
「絶対にマックスから離れないで。この部屋は防護魔法がかかってるけど、転移可能だ。本当はもっと城の奥にエルザを隠しておきたいけど……」
「そんなとこ、俺が入れる訳ねぇだろうが。テレーズ様だって無理だ。俺が護衛すんのと、城の奥に隠すの、どっちが安全だよ」
「……マックスが護衛する方が安全だ……」
「あーもう、分かってんならさっさとあのバカ王子をなんとかして来いよ! でねぇと……」
マックスがジェラールに耳打ちをすると、ジェラールの顔色が変わりました。ジェラールがマックスに詰め寄っていますけど、マックスは軽くあしらっています。だけど、なぜか声は聞こえません。
マックスがニヤリと笑ってこちらを見ておりますから、多分防音の結界でしょう。
「ねぇ、エルザはこれで良いの? 貴女ならジェラール様と結ばれて王妃になる事は可能よ。けど、色々面倒なのは確かだわ。シモン様だけじゃなくて、陛下も黙ってないと思う」
「わたくしはもう、国を追い出された平民ですわ」
「お父様がエルザを勘当した事は王家に報告されてるし、承認もされてたのは確かよ。わたくしが縁を切って結婚を認められた時、家系図からエルザの名前は消されていた。なのに、昨日確認したらわたくしはきちんと消されてたけど、エルザの名前は消されてなかったの! きっと、エルザを連れ戻したい誰かが、勘当された記録を消したんだわ。このままじゃ、ジェラール様は我が国の貴族を攫ったと言われてしまう」
戯れあっていたジェラールとマックスが険しい顔をしてこちらの話を聞いています。
「エルザ、本当にジェラールが良いのか? 王妃様は、色々面倒だろ? 大変だぜ。反対意見だって出るだろうし、意地悪な貴族共から虐められるかもしれねぇ」
「シモン様の婚約者をしてた時も、そんなものだったわ。意地悪な人なんてどこにでも居る。負けないわ。それに、ジェラールならわたくしを守ってくれるわ」
「彼女なら、反対する者達を味方に付けられると信じてるよ。それでも駄目なら、僕が全身全霊をかけて守る」
マックスが優しく笑いました。いつものようにわたくしの頭を撫でようとして、そっと手を引っ込めると見た事のない本を取り出しました。
「覚悟が決まってんのなら良い。俺が全力で協力してやる。ジェラール、まだ時間あるよな。少し付き合え。エルザの特殊能力が効く条件、覚えてるか」
「エルザに好意を持っていて、エルザも相手に好意を持っている。だったわよね?」
「そうっす。さすがテレーズ様。あとは、魔力を上げて貰おうと考えちまうと、エルザの力は効きません」
「以前から疑問に思っていたんだが、心の内をどうやって判断するんだ?」
「心を読む魔法があるんだよ」
「なっ! そんな魔法、聞いた事ないぞ!」
「ねぇだろうな。世界にひとつしかなかった魔導書を、師匠が盗んじまったんだから。しかも、魔法を使う為に必要な魔力が膨大なんだよ。以前は魔力を節約する術式もあったみてぇなんだけど、今は多分失われてる。俺はずっと前から魔法は知ってたけど、魔力が足りなくて使えなかった。エルザに魔力を上げて貰って、1回だけ使ったけど魔力消費がエグかったからもう使えねぇ。けど、ジェラールなら大丈夫だ。俺がこの魔法を使ったのは、ジェラールと初めて会った日だ。だからすぐにジェラールを信じられたって訳」
「防音の結界以外にもそんな魔法を使っていたのか?!」
「おう。俺はジェラールみてぇな善人じゃねぇからな。エルザのとこにいきなり現れたジェラールを疑った。だから魔法を使ったんだ。結果は、ジェラールは単に良いヤツだったんだけどな。すっげぇ魔力吸われて、ヤバかった」
「あの時、険しい顔をしていたのは魔力消費が激しかったからか!」
「そゆこと。ジェラールが良いヤツなのは分かってるけど、エルザを守りたいなら今の百倍は疑い深くなれ。エルザの特殊能力は、レアだ。隠し通せれば良いけど、王妃になるならいずれバレちまう。だから、こっちから公表した方が良い。けどな、そうなりゃシモン様は黙ってないだろう。シモン様だけじゃねぇ、エルザを取り込もうとする奴も、攫おうとする奴も現れる。エルザを守るには、絶対にこの魔法が要る。あと1人しか覚えられねぇんだ。ジェラールが覚えろ。開いて魔力を通せば覚えられるから」
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