第17話 ルームメイト
一旦着替えのために帰る梅香を見送り、らいちと2人になった。
他にちょうど良い場所もないので、さっきの喫茶店に再び来店して、店員と苦笑いを交わす。程なく、らいちの前にお汁粉が運ばれてきた。さっきは抹茶しるこを食べていたような気がするが、これが既視感ってやつか。
「そういえば俺ん家、ちょっと遠いけど大丈夫?」
俺は今、県内だが地元よりは栄えた場所に学校があるため、その付近に住んでいた。
「…んーいいよ。どうせこれからネカフェとか探すつもりだったし。助かっちゃった」
「なにそれ。ワケアリすぎる」
彼女の顔は、これまで見たこともない、疲れた顔をしていて驚いた。
「ほんとはね、どこか行ったことが無いような遠いところに行こうと思っててね……その前に地元にさよならしにきたんだよね」
そのさよならを、わざわざ成人式の日にしにくるのは、寂しがりのらいちらしいなと思った。
「未練たらたらじゃん」
「そうだよ。でも、きょーちゃんがいると思わなかった。ありがと」
「ん? ええと、どういたしまして?」
「正直な話、メンタルがかなりやばかったから、見つけてくれて助かった……かも」
「そっか」
彼女にかける言葉が見つからなくて、沈黙する。それを破るように、らいちがふふっと笑った。
「でも、髭はちょっと慣れないかも」
「……剃るわ」
「や、いいの! 嫌いじゃないの! でも……慣れないなぁ」
そう言いながら、らいちはテーブル越しに俺の顎を摩る。ついでに頭も撫でられ、犬のような気分だ。
「そうだ、きょーちゃん一人暮らしでお布団とか大丈夫? まさか寝袋? 梅香も来るよ。あ、もしかして寝ないパターン? それもいいけど……ベッドに私と梅香で寝れるかな?」
最高じゃん。それで行こう。……じゃない、大事なことを忘れていた。
「俺、一人暮らしじゃないんだ。一応同居人に確認しないと」
「え? どんな人?」
「なんとも形容し難いけど……いい人だよ。ドラゴンさん」
「え? 人間?」
「人間」
聞かれていないから言ってなかったけど、俺は今ドラゴンさんとルームシェアしている。
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