第2話 巨乳ツンデレエルフお嬢様は、魔球使い!

「このド変態さん! 消し炭になりなさいまし!」


 巨乳の少女が、手を胸の前でグンと広げる。

 ていうかこの少女、耳が長い。

 いわゆるエルフってやつか。


 妹がゲーマーだったので、オレにはそれなりに知識はある。



 エルフが、手から火の玉を展開した。ていうか服を着ろ!


「うわうわ誤解だ! 出るから……熱っ!」


 オレは退出しようとした。しかし、やたらドアが熱くて触れなくなり、開かない。エルフが放った熱で、ドアが変形してやがるのか。


「燃え尽きなさいませ!」


 アンダースローから、エルフが火の球を放った。


 どうすれば。ここが野球場なら……あったぞ。


 オレは、金属バットを掴んだ。


「この程度の速度なら!」


 バットを振って、ファイアーボールを打ち返す。


「なあ!?」


「やっべ!」


 ファイアーボールを打ち返して、一命をとりとめたまではよかった。しかし、更衣室の天井を突き破ってしまうとは。


 これは、ガチで殺されるか?


「ななな……」


 エルフがワナワナと、肩を震わせていた。


 しかし、熱が逃げてくれたおかげでドアを開けることができるように。


 こいつは、スタコラサッサと。


 ドアを開けると、ちっこい少女がオレの前にいた。


「今のファイアーボールは、お主かえ?」


「ああそうだ。オレは、大輪ダイリン 一郷イチゴー。この手紙を読んで、ここへきた」


 オレが手紙をロリに見せると、ロリが手紙をひったくる。


「ここはどこなんだ? なんで城なんてあるんだ?」


「アレは我が魔王城。その名を『魔王立 フランボワーズ女学園』という。我は魔王ラバナーヌ・モンタニエ・ドーバントン Ⅳ世」


 ラバナーヌと名乗るこのロリは、いわゆる魔王様だとか。とてもそんなふうに見えない。


「魔王様が、オレになんの用だ?」


「ラバでよい。で、あやつがペシュ・ロシェ・オグル。わが野球部のピッチャーなり」


 やはり、ここは野球部のグラウンドでいいようだ。


「魔王、さっきの爆発はなにかしら?」


 また背の低い少女が、グラウンドに現れた。ボブカットとメガネで、ややぽっちゃりめの体型である。


「おお、オランジェか。いいところに来た。彼こそ、我が召喚した監督候補の男じゃ」


 魔王ラバが、オレをボブの少女オランジェに紹介した。


「お前キャッチャーか?」


「わかるの?」


「ああ。下半身が強そうだ。肩も盛り上がっているし、相手の球を受け止める腰も兼ね備えている。走ることを想定していない肉付きだ」


 オレが解説をすると、オランジェは微笑む。


「へーえ。筋肉の付き具合だけで、ポジションがわかるとはね。となると、あなたがあたしたちの」


「監督になってくれって、スカウトされたもの……らしいな」


 といっても、いいのか? 魔王様を差し置いて、オレが監督って?


「あんたは魔王だろ? だったら、あんたが監督じゃないのか?」


「いや。我はマネージャーなり。みんなの汚れ物を洗うのが仕事だ。厳密には、みんなの洗い物の匂いをかぐのがだが」


 野球に詳しいのかと思ったら、ただの変態だった。


「申し遅れました。キャッチャーのオランジェ・ル・ゴフです。ドワーフで、二年生よ」


 オランジェから握手を求められたので、オレは応じる。ドワーフか。たしかに握力が強い。


「オレはいわゆる異世界人なんだが、いいのか? 信用しても」


「顔を見れば、あんたが実力者だってことくらいわかるわよ」


 このドワーフ少女は、野球には精通しているようだ。


「わ、わたくしは認めませんわよ!」


 エルフのペシェが、ピッチャー用のグローブをはめて怒鳴る。やっと服を着てくれたか。


「それが、お前らのユニフォームなんだな」


 彼女たちのユニフォームは、野球用と言っていいのかと思えるくらいフリフリだ。スカートは短く、女子たちは下にホットパンツ型の黒いショートスパッツを穿いている。


「しかし、監督がいなければ試合には出られんぞ。我はマネージャー故に監督の権限はない」


「……ならば、この方の野球が強いという証明をなさってくださいまし!」


「どうやって」


「投球勝負ですわ!」



 ペシェが、握っていたボールをオレに突き出す。


「わたくしの投球を打ち返すことができたら、素直に従いますわ! その代わり、負けたら出ていきなさいませ!」


 いいねえ! これは、ベタな展開になってきたな!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る