第3話

 ―――場面は少し進んでとある街中―――


 ここは101界にある、最新界の攻略拠点となっている街。


 この世界では25界ごとに次のエリアは休むための界になっている。

 そこではあらゆる設備が置かれた街や村や集落等が用意されていた。


 一般には休息界と呼ばれ、休息界ごとに特殊な特産品や機能等があるため、新たな休息界が解放されても前に解放された休息界は過疎化する事なく、あらゆる休息界は常に人で溢れている。


 そしてここ101界は、道にレンガが敷き詰められ、街には茶色の建物が建ち並び、まるでロンドンの街中を連想させるゴシックじみた風景が広がっていた。


 その街中を大木のボスを討伐したライト達が歩いていた。


「無事退治出来て良かったな!報酬も俺達の総取りだし、流石英雄パーティーって呼ばれて感謝されるし、気分は最高だな!!でもほんと。ここで終わりかと思ったー」


 貨幣でパンパンに膨れた袋を見つめながら一虎は大木との戦闘を思い出す。


「報酬は破格だったけど、それだけリスクが高かったって事だ。でも俺達だけでの界攻略はこれっきりにしよう。危険過ぎる」


「あ、ああ……わかってるよ。はは……」


 ライトは釘を指すように一虎をまっすぐ見ていうので、一虎は引き攣った笑みで申し訳なさそうに答える。


「ところで一虎。あの紫の指輪はどうしたんだ?」


「うん?ああ、あれか。捨てた」


「2000ゴルドで売れたのに捨てたのか?ポーチの中一杯だったのか?」


「一虎ですからね。後先考えず、装備を外すだけでいいのに即捨ててましたね。バカですよ。バ一虎ですよ」


「マーチちゃんにはあんま言って欲しくない。とりあえずお父さんとお母さんに謝ろうか?」


「ぐぬぬ……」


「お前……マーチをあんま苛めるなよ。お前のせいでもあるんだからな?まぁ、俺もあの台詞忘れないけど」


「清太さんまでぇ…………でも、まぁ無事クリア出来て良かったですね!今回は20日掛かってしまいましたが順調順調!このままゴールの1000界までゴーゴーです!ねっ!」


(((…あ…誤魔化した)))


 ライトと清太と一虎はそんなマーチの誤魔化しに対して深く追及せず、その後も他愛ない話をしながら街中を歩く。


 いろんな屋台や露店等が立ち並び、恐らく食事街と思われるところで、四人はある声が響くお店がある事に気が付く。




「じゃから!投げた方が早いじゃろうが!!そい!」シュッ!パリーン!ガシャーン!


「止めろバカ野郎!皿を投げるなって言ってるだろうが!!どこにウエイトレスが店内で皿を投げる店がある!?」


「ここじゃ」


「ぶっ飛ばすぞクソ猫野郎!!帰れえええええ!!」


「給料は?」


「出るわきゃねぇだろうがあああ!!」シュッ!パリーン


「いだあああ!?何するじゃあ!!」シュッ!パリーン!


「お使い終わりましたぁ店長……って!?ね、猫さん!?お使い行ってる間に何してるの!?」


「コノルちゃん!悪いけど君達二人はクビだ!早く疫病神のクソ猫を連れて帰ってくれ!」


「え!?え!?お給料は!?」


「悪いがバカ猫野郎の割った皿代で君のも出ないよ!!早く帰ってくれ!!」


「バカだのクソだの好き勝手言いよって!!コノルよ!こやつちょっと懲らしめ……いだああああ!?コノルまで何をするじゃ!?わたしゃ悪く――」


 ガン!!


「――ガフッ…………」バタン……


「すみません店長……ご迷惑をお掛けしました……失礼します」


 カランカラン……




 ライト達四人は一騒動あったであろう店から出てくる二人組を見る。


 そこには黒髪の少女、恐らく高校生あたりの年齢の子が、同い年位の狐色の猫耳と赤いマフラーの装飾装備を付けた気絶している金髪ロングの少女の襟首を片手で乱暴に掴んで引っ張っていた。


「あれって……噂の……」


「おっ!黒猫ちゃんとコノルちゃんじゃん!まーた黒猫ちゃんが暴れたか。懲りないねぇ」


「あれが例のギルドの……」


「………相変わらずのようだね」


 一虎を抜いた3人は、あの2人組にはあまり関わらないようにしようという雰囲気を出していた。


 何故なら彼らは悪い方に有名で、関わったら録な目に合わないと噂されているからだ。


 そんな2人組が道を曲がって見えなくなると、4人は近くにあった目的のお店に入って181界の祝勝会を行ったのであった。



 ―――



 そして場面は変わり、先程の黒猫とコノルと呼ばれる二人の女の子は店前に並べられてるオシャレなテラス席で休憩していた。


「うぅ……痛いのじゃぁ……」


「自業自得よ。何してるのよ猫さん。あれだけバカやらないでって言ったのに」ズズズ……


 自分で頭を何度も摩る黒猫を見ながら、コノルは不貞腐れつつ頼んだコーヒーを啜る。


「奴が悪いのじゃ」


「誰が悪いって?」


「店長じゃ」


「猫さんがお皿割ったんでしょ?」


「勝手に割れたのじゃ」


「反省のハの字も見られないわね。また殴られたいの?」


「わたしゃが悪いのじゃ」


「よろしい」


 そして二人は席から立ち上がりお会計を済ませにいく。


「1100ゴルドになります」


 女性の店員が空中にアナログ的なフォントで表示された会計の金額を片手で指し示しながら言う。


「あれ?高くない?頼んだの私のコーヒーだけなんだけど?」


「あちらを……」


 申し訳なさそうに店員が指を指す先には黒猫がいた。そして黒猫は食べ物が並べられてるトレーから勝手に食べ物をつまんで食べている。


 つまむたびに代金が加算されていく。


「旨いのじゃ」


「えーただ今1600ゴルドになりました」


「猫さああああん!?ストオオオプ!?」


 コノルは黒猫の奇行を急いで止めて店を出たのであった。





 一騒動からまた一騒動、色々あったが


 彼らの物語をここから語ろうか。




 黒猫とコノルの物語を。


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