第48話 価値 Holiday Mood
「と、いうわけで司会は僕、フィーア=ミノンでお送りしま〜す!」
本当に誰なんだろ、あの子……。
「さて、こちらのチームはただいま、お嬢様同士での喧嘩の真っ最中でございまーす! 話を伺ってみましょう!」
「あら、喧嘩ではございませんわよ? ただ、リーダー決めをしているだけですの」
「そうよ、ただ、私のほうがリーダーに向いてるってだけ」
「いえいえ、人の上に立つという点においては、フォンダン家代表の私をおいて他にありませんわ」
「私だって、アンタ程の財力はないけど、無いからこその考えも頭脳もあるわ」
「というわけで、かなりバチバチのようです!」
「だったら、2つのチームに分かれて、二人がそれぞれのリーダーをすれば良いんじゃないですか?」
「なるほど、その手があったとはね」
「わたくしは、そこのお二人をスカウトいたしますわ!」
両手で同時に指をさす。
一人はヴェルちゃん、もう一人がロゼちゃん。
「なら、私はルシアと余りを貰うわ」
「なんでうちだけ余り呼ばわりなん!? うえーん……」
「え……えっと、せっかくの機会なんだし、みんなに顔と名前を覚えて貰えるように頑張ろう! ルルちゃん!」
「う、そうやね……。うち頑張るで……」
「わーい! お嬢様と一緒だー!」
「私だってお嬢様よ!」
「自称しちゃうんですね……。人選はイマイチ分かりませんが、精一杯の力はお貸ししますよ」
「と、いうわけでこっちはチーム内で分裂! これはまた面白くなってきたよ〜!」
「さっ! 行くわよルシア! それとおまけ!」
「やから! うちの扱いぃ〜!!!」
「わたくしたちの方はとりあえず作戦会議ですわね。ヴェルさんといいました? 例のモンスターについて……」
「モンスターじゃなくて、魔物!」
「そ、そうなんですの?」
ヴェルちゃんをスカウトしたのは例のグルイルフの話を聞くためかぁ。なるほど。
エクレールさん達はそのまま、さっきの場所に。私達は早速歩き出した。
カヌレちゃんが早足で歩いていく。
「なにか心当たりがあったり?」
「何もないわ。でも、とりあえず動かなきゃ、見つかるもんも見つからないでしょう?」
「せやな、うちもそう思うわ」
「そもそも、価値のあるものって何よ。お金に換算して考えればいいわけ?」
「例えば、そこのキノコを売ったらいくらくらいやろ」
「そんなキノコ、よくて1リンくらいよ」
「私はあんまり詳しくないけど、食用なら1リンくらいでも、毒キノコで、毒薬として使えるなら10リンくらいの価値はあるんじゃないかな?」
そう、結局物の価値って、代用が効くかっていうのもあるからね。食べるものならいくらでもあるけど、毒として使えるものは限られてくるし。
「すぐに毒薬って使用例が出てくるの、ちょっと気になるけど……。まあいいわ。その通りね、とにかく、レアなキノコなら、それなりの価値があるってわけだし……」
「うちキノコ詳しいで? あと虫も詳しいし、その他諸々〜」
「良いじゃない! なにか金になるものは!?」
言い方言い方。
「せやなぁ、キノコやったら珍味とされるクスタケとか、薬やったり一部のマニアが研究に使うトウチュウカソウとかが高く売れるんちゃうかな? どれもレアものやから、簡単には見つからん思うけど」
「見た目の特徴は?」
「クスタケは大きな木の周りに群生して生えるんと、トウチュウカソウやったら生き物の死体から生えるらしいけど、見た目についてはそこまで詳しないで」
「なるほどね、で、2つとも毒はないの?」
「せやな」
「ならとりあえず毒のないキノコを集めるわよ」
「でもどうやって? 私もキノコの知識なんて全くないよ?」
「ボルドー!」
「はい、お嬢様」
また木の陰から、すっと出てきた。
なんとなくいるんだろうとは思ってたけど、まさか本当にどこにいても付いてきてるとは……。
「それでは、私はキノコの鑑定をすればいいのですね?」
「そうよ、一齧りして、体が痺れたり、死ななければそれが怪しいわ」
「…………」
「あの、私は毒見役ということでしょうか?」
ボルドーさんの額に汗が光る。
「そう言ってるでしょ? 頼んだわよ」
「あの、お嬢様は解毒魔法など持ち合わせておりましたか?」
「ないわ」
ボルドーさんの穏やかな顔が少しずつ険しくなっていく。
「私は……。その2種の特徴は存じております。別に毒見をしなくても判別は可能でございます……」
「あら、そうなの、じゃあ頼んだわよ」
逆に、知らなかったらボルドーさんは使い切りのキノコ判別キットに……。
「ヤバいであのカヌレっていうコ……」
「ほら、身内だから冗談が言えるってだけでしょ……多分」
「せやな……。ほな、さっさと探してみよか」
「じゃあとりあえず、木の根元辺りを中心に歩きながら探していくわよ」
「「おーー!」」
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