第47話 閑話休題Ⅰ Ex.end1
「何が目的だ、ケイン」
俺たちは、ヴェルの家にお邪魔していた。机の周りに5人が座っている。
俺、ケイン、レイ、グレア、セイト。
「さっきから言ってるとおりだ。レクリエーションだよ」
「レイズが言ってるのは、前置きも無しに、急に開催した理由を聞きたいってことだと思うが」
そーだそーだ。レイの言うとおりだ。
「それに、スレイとギーチェを呼ばなかったのはわざとか? お前なら、二人のいる場所が分かるはずだろ」
「それが分からない、憶測だが、スレイの持つ魔石の力が集まっている空間には、俺の力が入る余地がないんだろう」
「ギーチェも同じ状況にいるってことを考えると、二人は一緒に行動しているという認識でいいんだな?」
「恐らく」
「きっと二人なら大丈夫だ、二人はあんなことでは挫けない、そんな精神を持っている!」
「そもそも、あの時にお前がもう少し早く来てたらなんとかなったんじゃないのかよ?」
「お前が内緒にするからだろ! シークレットなミッションやら任務やらって言ってて! 気づいたのは町の人達に聞いたときだ!」
「昔のことでそんな責任転嫁をしあっていたら、これからが大変だぞ、勇者」
「ああ、そのとおりだな……」
「なら、本題に戻ろう! 何故急にレクリエーションを始めることになったのか!」
「レイズとセイトなら知ってると思うが、魔王が動き出したとの話だ。これからは、俺たちが団結する必要がある、そのためにも、お互いが持つ能力を確認し、連携を取り合う必要があると思っただけだ」
「なっ! 今さらチームプレイで行こうってのかよ! 俺は最初っからそう言ってただろ!」
「いや、俺とのチームプレイじゃない、お前たち同士だ。そして、これから俺の駒として強くなってもらう。いや、今までもそうしてきた」
駒だと……!?
「俺はお前の駒なんかじゃねぇ! 俺は自分のやり方で、自分で強くなる!」
「ああ、好きにしてくれ。お前たちは俺に動かされていることに気づかないまま、ただのんびり生きていればいいんだ」
「その物言いは少し気になる。レイズの言う通り、俺たちは駒じゃない、やりたいようにやるだけだ」
「俺は……。情けない話だが、人の役に立てるってなら、ケインの操り人形だろうと構わないが……」
「お前の思惑に動くつもりはないが、俺は目の前の目標、問題にただ立ち向かうだけだ!」
「まあ、何を言おうと自由だ、さあ、このゲームを見守ろうじゃないか」
クソっ、言わせっぱなしは癪に障る!
「ケイン、お前はさっき、俺たちを気づかないうちに駒のように操り、自分の思惑通りにするってことを言ったよな」
「ああ言った」
「なら、このゲームの勝敗、どんな過程を辿るのか。そのすべてを操ってみせろよ。そうでなきゃ、お前の言ったことは口だけになるぜ」
「そうだな、いいだろう」
「ならこの勝負、イノセントガールズが勝てばお前の勝ちだ。そして、ムダナハナシが勝てば、俺たち四人の勝ち。こんなルールで問題ないな?」
「ご自由に」
「へへっ、なら、俺たちは何をしてるか決まってるよな? 見てるだけなんてつまらないもんな!」
「ロゼの手助けにいくか。せっかくの新技も見せる機会にもちょうどいい」
「俺は、スクレイザーで価値のありそうなものの探索だ!」
「俺は、ここで見守っている。ただの一般人だからな」
「そんなことを言えば、俺も、勇者でもなければ特殊な能力を持たない一般人なわけだが」
「さーて、この展開は予想出来てたか? ケインさんよぉ!?」
ケインは俺の言葉に気づかない様子だ。
どうせ無視を決め込んでいるんだろう。偉そうな事を散々言った挙げ句、自分で墓穴を掘ったわけだ。
「なんとか言えよ〜! 俺はお前の駒だぜ?」
すると、ケインが急に本を渡してきた。
「なんだよこれ」
「その本の第47話を見てみろ」
47話?
まてよ、もしかして、この本こそ前にケインが言っていた「国と蛙と王様と」ってやつじゃないのか?
しかし、表紙にも背表紙にもタイトルは書いていない。
とりあえず、ページをめくっていく。
ページをめくっていると当然、色んなページの言葉が目に入る。
ケイン、スレイ、ルシア、レイズ。
追放、能力、魔王退治、逆転劇、重力。
見慣れない言葉も当然あるが、それよりも聞き覚えのある言葉ばかりだ。
「なんだよこれ、お前の日記か?」
「……」
無視かよ……。とりあえず読み進めるか。
あった、第47話。
えーっと? 何が目的だ、ケイン?
……。俺たちはヴェルの家に……。
これってまさか……。
「おい! 俺の心の中含め、どこまで細かく書いてんだよ!」
「……」
「返事しろよ! おい!」
そう言いながら更に読み進めていく。
……。そう言いながら更に読み進めていく?
書いてある。
書いてあるという事も書いてある。
書いてあるという事も書いてあるという事も書いてある。
書いてあるという事も書いてあるという事も書いてあるという事も書いてある。
書いてあるという事も書いてあるという事も書いてあるという事も書いてあるという事も書いてある。
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書いてあるという事も書いてあるという事も書いてあるという事も書いてあるという事も書いてあるという事も書いてあるという事も書いてあるという事も書いてあるという事も書いてある。
「うわぁぁッッ!!」
俺はその本を投げ出した。
「ど、どうしたんだ勇者?」
「お、おい! なんなんだよこの本は一体!?!?」
「さあ、言うなれば一つの物語、題名のない、この世界での事象、だ」
「お前は、俺たちを……。いや、世界をこの通りに動かしてるって……言うのかよ……」
「想像にお任せする」
「本当は、この本がマジックアイテムなんだろ!?」
「いや、その本は本当にただの本だ。ただその文字は全て、ペンで執筆したものに過ぎない」
落ち着け、落ち着け。俺らしくない。
だが、俺らしいってなんだ。この気持ちも全て、あの本には書いてあるんだろうか。
俺の存在は、本当にケインの書く一つの物語に過ぎないのだろうか。
「……。やっぱり、さっきの賭けは無かったことにする、もうお前の力は理解した。ただのレクリエーションに首を突っ込むのは野暮だよな」
「一体レイズは何を見たんだ?」
レイが俺に尋ねる。
「言うなれば世界の深淵だ……」
「ただカッコつけてるだけじゃないか!」
「グラゼイナー? みたいな名前の化け物を召喚する勇者には言われたくはない」
グレア曰く、あのロボは化け物に見えるそうで。
「そんなことはどうでもいい!」
「同意だ」
「で、結局賭けは無かったことにするんだな!」
「そうするか、新技はもっとピンチの時に温存しておくべきだ」
さっきからレイの言う新技が気になってしょうがない。というか、新技があることを口にしてしまってはダメなんじゃないか?
「それが賢明だろう」
少し気に食わないが、ケインの言う通り、ただのレクリエーションというなら、なんら害はない。
「発火」
ケインは急に、発火スキルでさっきの本を燃やし始めた。
「おっ、おい! 急に何してんだ!」
「お前に見せるためだけに書いただけだからな、もう必要ない」
わざわざそんなことの為に? 無駄な労力をかけやがって……。
そうなると、もう少し先の事を見ておくべきだったか?
「ほら、始まったようだ。さて、どっちが勝つだろうな」
「賭けは関係ないが、必ず勝てよ! ルシア! お前ならやれる!」
「ロゼ、一人でもその力を見せてみろ」
「ファイトだ! どっちが勝ってもいいが、とにかくファイトだ!」
「町を救った勇者の力……。見せてくれ!」
こうしてレクリエーションは始まった。
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