第46話 閑話Ⅰ Ex.etc1
「ほな、始めよか!」
「あの……。なんでこんなゲームが始まったのか……誰かご存知ありませんこと?」
「うち、知らんで? あの耳がついた女の子が、こんなんやるから、ぜひ司会を務めてくれゆうとったんよ」
「理解に苦しむわね……」
「所謂、チームビルディングというものです。こうして、チームの団結力を深めるのです」
「シオン殿がこうおっしゃっておるのだ! さっさとしろー!」
「ちょっと待ってくださいよ! ここにいるメンバー。特にチームでもなんでもないじゃないですか!」
「えーっと……」
まずは整理しよう……。
えっと、まず、あの司会を務めるって言ってるのがそもそも誰なのかが分からない……。あともう一人知らない人がいる。
それと、あのお嬢様みたいな人、髪が凄くふんわりしてて柔らかそうな人が、多分エクレールさんかな? いつもカヌレちゃんが言ってた人。
で、分かってる中で今いるメンバーは、イノセントダークのケイン以外のメンバーと、ロゼちゃん。そしてカヌレちゃんとヴェルちゃん、推定エクレールさん。
要するに、女の子だけを集めたって感じだ。突然、ケインに一人で来るように言われたから身構えてたけど、大丈夫そうで良かった。レイズはレベル上げに専念してるらしい。
さて、司会の人にまずは話しかけてみようかな……。
「あの、あなたは……?」
「えと……。うちのこと? うちはルルル言うんやけど、呼びにくいやろ? ルルで呼んでくれると嬉しいんやけど……」
「なるほど、よろしくお願いします、ルルさん」
「よろしくな? せっかくやから、お友達になれたらええんやけど」
「そうですね、詳しくは知りませんが、一緒に頑張りましょう!」
「それって、友達になってくれるって意味でええん?」
「え……そ、そうですかね?」
「やんな〜。嬉しいわ〜!」
「ちょっと、説明不足よ、もう一度説明してもらえる?」
カヌレちゃんが聞き返す。
「せやから、ゆうたやろ? この森の中で、一番レアなものを拾って来た人が勝ちってルールなんやけど、分かる?」
「確かに……シンプル過ぎて、分からないかもしれないですけど。あまり深く考える必要はないと思います……はい」
「そうにゃ、そのゲーム内容もさっき適当に決めただけにゃ」
「こんなことでわざわざ私をこんな遠くまで呼んだんですの!?」
「というか……うちはこの人たちと全く面識ないんやけど……」
「私も! このお姉さんたち誰〜?」
「かなり大所帯ですけど、まとまりもないですね……めいびー」
「というか、みんなは誰に呼ばれてここまで来たの?」
ざわざわしてたから、少し声を張ってみんなに聞いた。
「私は、家の近くにみんなが集まって来てたから、ちょっと見に来ただけ」
そっか、確かにヴェルちゃんの家はここの近くにあるんだよね。
「もしかしたら、あの時のグルイルフを見つけられるかもしれないからね!」
「「「グルイルフ?」」」
「うん! 絶滅したはずの魔物だよ! 前に森で見たんだ!」
「へぇ、絶滅ですか……。見てみます?」
そう言うと、急に数字が浮かんで見えた。
「あ、一匹いるっぽいですね、この大陸にいるグルイルフの数の数字を表示してみたんですが」
「え!? お姉さんそんなこと分かるの!?」
「初めて見ましたけど……。噂に聞いてた通りの凄い力ですね……」
「メイミ殿、流石ですぞ!」
「えへへ〜、褒められると照れるなぁ……」
え、あれがあの子の能力なの? す……凄い……。スキル? それとも、ギーチェちゃんと同じ特殊な能力?
「あのね? さっきから本題がズレまくってるのよ。各自、誰に呼ばれたの? 私はケインってやつに呼ばれた。同じ人は挙手!」
すると、みんなが一斉に手を上げた。
「初めて聞いた名前でしたが、カヌレも来るって聞きましたので、遠路はるばる飛んできたんですのよ?」
「私は、ここから真反対のとこに住んでるんですけど、ケインさんが魔法陣を作ってくれて、一瞬で移動できました」
「ちょっと待ってください……。なんですの!? もしかして私だけですの!? 長い時間かけて来たのは!?」
「「うんうん」」
「ぷっ、いいザマね」
「ごめんにゃ〜ご主人様もお忙しいのにゃ。それに、まだ魔法陣を通して無かったって言ってたのにゃ」
「ま、仕方ないですわね。時間厳守でこんな遠くまで来れるのは私ぐらいですものね」
「前向きだね! 流石お嬢様って感じ!」
「可愛い子ですわね〜、後で高級なお菓子を差し上げますわ」
「やったー!」
そっか、みんなケインに呼ばれて……。
ケインの目的はなんなんだろう。多分、さっき行った通りみんなで仲を深めるためなんだろうけど。
「さっきから話がそれてばっかりやで? そろそろチーム分けせーへんとあかんのちゃう?」
「とりあえず、私達はチーム名イノセントがーるでエントリーするのニャ! 私達は、チームにゃいでの結束をさらに強くするのにゃ〜」
「でも、そしたらそっちは4人、私達は7人になっちゃうよ?」
「そうにゃんね〜、にゃら、メイミちゃんを貰うのにゃ!」
「え? 私ですか? よろしくお願いします!」
「またまたお会いしましたねメイミ殿〜。案外、再開というものはすぐに来るものでございましょ?」
「そうでございますね、一度繋がった縁というのはなかなか切れないものでございます。鎖の様に硬いものなのですよ」
「まさに腐れ縁ですな!」
「シオンさん……。カリンさん……」
「えーっと……? 私達は……」
「ちょいと蚊帳の外かもしれないにゃあね」
「もしかして、余るん、うち? いやや〜……。一人にせんといて〜……」
「大丈夫にゃよ、メイミにゃんはすごい能力を持ってるのにゃ? だから二人分なのニャ! そっちのチームがひとり多いくらいじゃ負けないのにゃ」
「その能力、かなり強そうだけど、能力を使うのを禁止ってのはだめなの?」
「同意です! 強すぎですよ〜!」
「お言葉ですが、あくまで個人個人の力を最大限に生かすことを目標とするゲームですので、なんでもアリというルールにしたいのでございます」
「言いましたわね? なら、わたくしの財力も最大限に使わせていただきますわ!」
「私もよ。ボルドー!」
「はい、お呼びでございますか?」
「ちょっと! どっから湧いて出たのニャその執事!」
「さきほどから、木になりきっておりましたな〜。私でなきゃ見逃しちゃうね……」
「これで8人になっちゃったね! これならグルイルフも見つけられるかも!」
結局人数差は大した問題じゃないってことかな?
「よし、これでゲームスタート出来るんちゃう?」
「お待ちください、あちら様にチーム名があるように、私達のチームにも何か名前をつけてはいかがでしょう」
「あんたは無駄な口を挟まないでいいのよ」
カヌレちゃんはそういうけど、私は凄くいいアイデアだと思った。
「確かに! それいいかもね!」
「でかしたわ、ボルドー」
えーっと、こういうのを手のひら返しって言うのかな?
「決めるったってどうするんですの? 私達にはこれといった共通点などございませんわよ?」
ん〜。何かいいアイデアないかなぁ。
「なら、ロゼと愉快な仲間たちに決定ですね」
「いやいや、そこはエクレールと愉快な仲間たちではございませんの?」
「あんたら、まともに考えなさいよ、一人が無駄に目立つ名前なんて無しだと思わないの?」
「どっちみち、リーダーを決める必要もあるかもだし、そういうのもありかも?」
「そうね、で? 誰と愉快な仲間たちにするの?」
やっぱり手のひら返しがすごいなぁ……。
「そもそも、わたくしはこんな名前にするつもりはさらさらございませんでしてよ。いわゆる"ノリ"に乗っただけでございますわ」
「起立遵守のお硬いアンタがジョークを言うとはね」
「エクレールさんなりに、私達と話を合わせてくれてるんじゃないかな?」
「あんたのジョーク面白いわ、何回でも言いなさい」
このくだり何回目だろう……。
「ねえー! 本気で決めようよー!」
「そやね……。でも、あんまいいのが思いつかへんなぁ」
「住んでる場所の共通点とかないかな? 私は南の方だけど」
「北西」
「南西」
「南東」
「南東だよ」
「定住はしていないので、特には」
「住む場所も違うかぁ」
「なら! 好きな食べ物のジャンルとか! 私は甘いお菓子!」
「洋菓子ですわ」
「するめ」
「お母さんのオムライス!」
「辛いスープ……。ですかね?」
「えーと、唐揚げやな」
「同じものが全くないっ!!」
「そうですわ! ここはいっそ、それぞれ違うことを表す名前にするのはいかがですの!?」
「というと……?」
「みんなちがーう」
「まんまじゃないのよ」
「なんみがちーう」
「逆から読んでみてくれへん?」
「うーちがみんな」
「うちがみんなって、なんやおもろいな!」
「そうだ! だったら! なにかに例えたら良いんじゃないかな! 例えば、虫とかも、よく見ると、一匹一匹見た目が違うでしょ?」
そうなの? 虫はあまり細かいところまで見ないなぁ
「だったら、ムシハナはどうです? 虫と花です!」
「ムシハナ。並べ替えて文字を増やして、みたらムダナハナシ……。」
「無駄な話?」
「なんだか、私達にぴったりな気がしますわね」
「さっきから無駄な話ばっかやもんね」
「チーム、ムダナハナシでいく?」
「いいんじゃないかな! なんかかわいい!」
「じゃ、私達のチーム名はこれから、ムダナハナシでございますわ!」
「イマイチそちらのセンスが分からないでござるの」
「それでは、ゲーム開始といきましょうか」
「それじゃ! 僕が司会を務めますね!」
…………。
「「「誰!?!?」」」
「僕ですか? 別になんでもいいじゃないですか。面白そうだから来ただけですよ」
「誰かこの子知ってる人いる!?」
ふるふる……。
誰も知らないみたい。
「完ッ全に部外者じゃないのよ!」
「まあまあ、それじゃ、行きますよ〜? よーーい!」
よく見ると、手には時計が握られている。
「まあいいんじゃありませんこと? 流れに身を流すのも、乙女たるもの、必要なスキルですわよ」
「そうだね……?」
「ドーンッ!!」
そして、すごくカオスなゲームが今ここに幕を開けた。
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