第44話 行きましょう! Go!!

うーん……。


私達の新技。うまく行きませんね……。


「やっぱり、掛け声が必要だと思うんですよ。ダサくてもなんでも、息を合わせるためには絶対必要です!」


「で? どんなのが良い」


「私がなにか言って、次にレイがなんか言って、で最後に二人で一緒に言う感じのやつです」


「というと?」


「ロゼ! レイ! 超合体! で、超合体のところでハモる感じです」


「ハモるってなんだ?」


「二人で一緒に言うんですよぉ、さっき言ったじゃないですか!」


「そうだな」


歩きながらそんな話をしていると、急に目の前に同い年か、ちょっと下くらいの子が道に出てきた。


「あ、こんにちは〜、別になんも怪しいことしてないで〜。うちの名前はルルル言うんやけど、ルルって呼んでくれたら嬉しいなぁ……」


「別に自己紹介してなんて言ってませんけど」


「じゃあな」


変わった人だなぁ、と思いつつ、また歩き出したら、その人が急にレイの背中を掴んで離さない。


「いやや〜、うちを嫌いにならんといてぇ……」


と、引っ張られながらもずっと張り付いている。


「別に嫌いなんて言ってない。ただ、無関心なだけだ」


「いややぁ……。無関心は嫌いより酷いんやで? なあ、うちのこと好きになってぇなぁ……」


腕にすがりついて泣いている。


ちょっと、普通とは言えない人だな……。


「新手の詐欺か何かでしょうか?」


「違うんやって……。ちょっと口下手やけど、この気持ちは本物なんやぁ」


「なら、さっき草むらで何をしてたんだ? それくらい言ってくれよ」


「えーっと……」


「いえよ、なんとか」


「う、うぅ……」


「レイはすぐ圧力をかける〜。ちょっと気になるだけなんですよ?」


「誰か通るまで、待ち伏せしとったんや……」


「なぜ故?」


「うち、昔から友達とかおらへんから、とにかく声をかけまくっとんやけど、もっと嫌われてくんや〜。ついには、この辺には旅人以外は立ち入らないようになってもて……」


「そりゃそうだろ」


「一種の妖怪ですよ」


「う……うぅ……。酷い……」


「酷いのはお前だ」


「触れられますか? 地縛霊だったりしません?」


「化け物扱いはこりごりやぁ……」


「「化け物だもん」」


「デリカシーが無いなぁ……」


「はいはい、それじゃあ私達は友達ですよ。これで昇天出来ますか?」


「昇天言わんとって! というか……。本当に友達になってくれるん?」


「ああ、いいぞ。友達は多くて困ることなんてないからな」


「そうなん! えらい優しいんやねぇ! 嬉しいわぁ……。うちもこれで……」


「昇天出来ますか?」


「家に帰るんや!」


「それじゃ……。さよなら?」


「ほなまたな〜! ふんふーん!」


上機嫌でどっか行っちゃいましたね。


「なんだったんでしょう、あの人」


「変人だ」


「まあでも、悪い人じゃないですね」


「無害なだけだが。まあこんな世の中、無害なだけでもいいヤツに分類されるな」


「言い得て妙ですね」


「だろ?」


「まあ」


そんな話をしながら、最初の話の続きを。


「どうします? 掛け声。米食いてー! 肉食いてー! 腹いっぱい食いてー! とかはどうですか?」


「却下」


「変な話してたらお米食べたくなりました。どうしてくれるんですか!」


「そっちが勝手に言い始めただけだろ」


「くー! この大陸に米が無いのはなぜ!?」


「どんな味なんだろうな」


「知らないんですか? でもまあ大したことないですよ」


「どこで食べたんだよ」


「あれ? どこでしたっけ。ま、食べたってことは覚えてるんで、食べたことはあるんですよ」


「ふーん」


「ほら! また逸れた! どうするんですか! レイが意見を出さないのが悪いんですよ!」


「あー、それじゃ、行きましょう、やりましょうってのはどうだ」


「行きましょう、やりましょう。まあ確かにいいかもしれませんね? じゃ、試しにやってみますか」


「嫌だ、ダサい」


「レイが、言ったんじゃないですかぁ! もー!」


ぽかぽかぽか


「はぁ……」


「ため息つくなぁ!」


「そんなことより、次は何をしようとしてるんだ?」


「とにかく今は新技ですよ! これさえ上手くいけば、ギーチェさんどころか、魔王軍にも勝てますし!」


「そうかぁ?」


「じゃ、早速試しにやってみましょうよ!」


「あぁ。で、掛け声はさっきのでやるのか?」


「とりあえずは?」


「よしきた」


少しレイに寄る。


そして、力を込め、集中する。


「行きましょう!」


「やりましょう?」


そして、拳でグーを作ってレイに突きつける。


レイはそれに応えて、グーで返す。


すると、いつもの空間が展開される。


問題はここから。


「それじゃあ、スキルが使えるかやってみてください」


「あー、発火」


すると、地面に火がついた。


「ダメじゃないですか〜」


「そもそも、出来るものなのか? スキルの掛け合わせなんて」


「知らないですけど、きっと息を合わせれば出来ますよ、それに、出来たらカッコいいし」


「そんなものかぁ?」


「そんなものです」


それに、大事なのは出来ると思い込むことですし!


「それじゃもう一回! で、スキルを使う時は腕をガンッと合わせるのはどうですか?」


左腕を思いっきり振ってみせる。


「なるほど、じゃあ俺は右腕をそっち側に振ればいいわけか」


「で、それぞれのセリフのときに、腕を振り上げるとか!」


「ほうほう」


「それでそれで……」


新技の為の、振り付け指導はそれからも長いこと続いた。

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