第36話 Nifty Idea A

ドシンッ……ドシンッ……。


あれが巨人か……。いざ見てみると、思ったより大きい。


勿論、グレアの言う通りのスケールで、俺たちの五倍ではある。しかし、やはり生で見ると……凄いな……。


俺たちは、グレアに連れられ、町からしばらく歩いた所にある草原に来ていた。


そこにはちゃんと巨人がいた。しかし、今は座り込んで空を見上げている。


巨人だって疲れるのだろうか。不思議と、身近な存在のように感じた。


「油断するなよ、こちらを見つければすぐに襲ってくるぞ……」


しかし、作戦は考えてある、近づく分には問題ないはずだ。更に、座り込んでいるのもかなりの好都合だ。


「よし! ギーチェ頼む!」


「おっけー! いくよぉ〜!」


次の瞬間、俺たちの姿が消える。


「おお! すげえ! まさか本当に姿を消すスキルを持ってたんだな! だが、少しゴワゴワする……」


そう、以前にギーチェが覚えた、透明な花を体に咲かせる技……。


「プランA、インビジブルフラワーズ!」


「リーダーにしては良いネーミングだ」


しかし、これの弱点はお互いの姿が見えないことだ。目の部分は開くようにしてもらってるので、目だけは浮かんで見えるのだが、流石に分からないか……。


そして、ルシアが俺たちに補助魔法をかける。色々と能力が上がった。


「おぉ、なんだかいつもより力が漲る……」


「私だってね、修行してんのよ! ギーチェちゃんに咲かせてもらった花に実をつける練習でね!」


なるほど、そんな修行方法が……。それでコツを掴んだわけか。


「よし、早速行くぞ!」


返事は無かった。既に俺たちは作戦に入っているのだ。


プランAは言うとすればスタートダッシュ。ひっそりと近づき、一気に畳み掛ける。


そして、巨人の元へたどり着いた。


見上げるてみると、かなり高い……。


高さというのは、距離で換算するとかなり痛い目にあうものだ。


簡単に言うと、50メートル走。50メートルを走ってかかる時間は大体7秒くらいだ。


しかし、高さ50メートルは建物の階層で言うと16階程度。そう聞くと、かなり高く感じるだろう。


また、これは水中においても同じで、横に泳ぐのと、縦に泳ぐのとでは全く違う。


なので、油断しないようにはしていたのだが、やはり予想以上の大きさだ。


そして、三人で巨人を囲み、配置に着くと、ギーチェからの合図で、同時に切りかかる。


…………。


……。


ギーチェが手を振りかざした。


よしッ! 今だ!


俺は左腰に剣を思いっきり刺した。


ウガァァアァッッ!!


よし、この後はッ!


俺の刺した剣は、愛剣レイズソードではなく、今朝町で買った新しい剣だ。


俺はその剣に跳び乗り、レイズソードを刺し、体を固定する。


巨人は当然痛みに驚いて暴れるだろう、すると普通は俺のいる場所を抑える、そうしたら俺が危ない。だからスレイとグレアには……。


「ヨイショッッ!」


まるで木こりのように、斧を足に何度も打ち付ける。俺の剣の痛みはスレイの攻撃に比べれば蚊のようなものだろう。


注射の時に太ももをつねったりするのと同じだ。頭では痛いところがどこなのか、混乱してしまう。


「オラァァ!!」


グレアも大剣を使い攻撃する。スレイと同じように、パワー重視の鍛え方をしているようだ。一撃一撃が重い。


グレアが攻撃しているのは左腕だ。しかし、勿論巨人もそれに気づき、暴れだす。


ウググァァァ!!


とても苦しんでいるように見える。よし、いい調子だ。


巨人は直ぐに敵を探す。しかし、敵は見つからない。この痛みがなんなのかも分からず、咆哮する。


オアアァァァ!!!


そしてスレイたちは直ぐに引く、巨人が何をしでかすか分からないからな。ここは一旦引いてもらう。


そして、巨人は俺たちの予想通り、足をさすり、俺を腰にくっつけたまま立ち上がる。


そして、巨人は再び町に向かって歩き出す。


歩きが安定したところで俺の出番だ。


レイズソードを引き抜き、今度は浅めに、斜めの向きで突き刺す。


ウッッ……


巨人が違和感を感じた、俺が潰されてもおかしくない。


そして、レイズソードに勢いよく跳び乗り、足を引き裂きながら降りる。


レイズソードが足の肉をえぐる。深く刺すとこのように上手いことはいかないが、程よい調整で確実にダメージを与える。


ウガッ……ウガァァ……!


確実に声が小さくなり、声を出す気力も無くなっていることが感じ取れる。


そして、俺は地面に降り、すぐさま巨人から離れる。


よし、これでかなりのダメージを与えられた。プランAは大成功だ。


すると巨人は流石に異変に気づいたらしく、足を止め、辺りを見渡す。


しかし、何も見当たらない。俺たちは勿論、ギーチェ達も身を隠している。


すると次の瞬間、地面を何度も叩き始めた。


揺れる……。揺れる……。立っているのがかなり難しくなり、手をつく。


しかし、既に俺たちは巨人から遠くにいる。とりあえず落ち着くまでは待機だ。


…………。


すると、巨人は立ち止まったままになる。恐らく、なんとなく俺たちという敵がいることを察したのだろう。


近づけば、すぐに暴れだし、俺たちは踏まれてしまうだろう。


よし! これも予定通り、プランBだ!

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